編集室より

絵本の絵は紙芝居の絵と異なり、文字が入る部分を考慮して絵を描かずにあえて余白を残すことがあります。例えば『だるまちゃんとてんぐちゃん』(1967年福井の館書店・上)や『からすのパンやさん』(1973年偕成社・下)がその例です。


もちろん全ての絵本がそうであるわけではなく、絵の上、あるいは絵の背景に文字を入れることもあります。『かわ』(1962年福音館書店)は川を中心にその流域の様子をページいっぱいに描きますので余白はありません。

そこで『絵巻仕立てひろがるえほん かわ』(2016年福音館書店)では、全場面を一枚の絵巻のようにつなげ両面に印刷してあります。表面には言葉を入れず絵のみ、7メートルに及ぶ文字のない画面は、まさに絵巻物のようです。

上の2枚の絵で、上側にあるのが『かわ』、下側が『絵巻仕立てひろがるえほん かわ』の同じ場面です。この裏面では、川だけを着色したモノクロ画面に文字を入れるというユニークな仕立てになっています。

『かわ』よりさらに小さなお子さん向けの『かわは ながれる かわははこぶ』(2005年農文教)も同様で、現在越前市絵本館のテーマ展示【水】(2021年11月23日まで)で飾っていますので、お近くにおでかけの際は是非ご覧下さい。

同じく展示中の『あわびとりのおさとちゃん』(2014年復刊ドットコム)にあるこの場面は、ご覧のように文字と絵を仕切っています。絵としても引き立ち、文字も読みやすい画面構成は緊張感があり日本画風の雲霧の雰囲気も感じられ、昔話にぴったり合っています。

かこは、絵本をつくるとき絵と文字が一緒にあって完成した形になるようにしている、と常々申しておりました。お手元にあるかこ作品をそんな視点でご覧いただくのも一興かもしれません。