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過ち繰り返さぬ 創作の源
〈私はちいさいときから、秋がだいすきでした。
ところが、そのすてきな秋を、
とてもきらいになったときがありました。
とてもいやな秋だったことがあります。〉
こんな引用からはじまる福井新聞文化欄【作家と戦争ふくい戦後80年下】ではこの作品で描かれた戦中、戦後にかこさとしが目にし、感じ、考えたことをかこさとし自身の言葉を紡いで伝えます。
「手のひらを返すように平和を語るようになった大人たちに絶望し」自らの判断を後悔、「子どもたちには自分の頭で考え、自分の力で判断して行動してほしい」との思いで創作を続けた、と紹介します。
戦争の話を作りたいと最後まで繰り返していたかこさとしが遺した『くらげのパポちゃん』(2025年講談社)にも触れ、秋の最後にある「戦争のない秋の美しさが続きました」という文章をうけ、この記事はつぎのように結んでいます。
「再び訪れた美しい秋が未来永劫続くよう、我々に強い覚悟を求めている。」
2025年8月20日福井新聞 作家と戦争
写真は藤沢市アートスペースで8月24日まで展示の『秋』原画。
「戦争って・・・どう伝える? 絵本で、司書おすすめの4冊
福井新聞、戦後80年のコーナーで、子どもたちにどうやって戦争の悲惨さや平和や命の尊さを伝えたら良いか、を考えるコーナーで、子どもの心理に詳しい識者のアドバイスなどと共に福井県立図書館の司書の方が薦める絵本が紹介されました。
その中で取り上げられたのが『秋』(2021年講談社 )。
この絵本は終戦の前年1944年の秋、美しい青空に起こった悲劇を描いています。18歳のかこさとしが目撃した実話です。
描写の中に流血やご遺体などはありませんが、小学生でしたらこの出来ごとが意味することを理解できることでしょう。
8月24日まで藤沢市アートスペース(最寄り駅は辻堂)で4枚の絵を展示しています。お近くの方はぜひご覧ください。
「無料で水遊び、暑さ忘れよう」
夏といえば子どもたちは水遊び。
安全で楽しめる場所を探すのは、なかなか難しいのですが、かこさとしのふるさと越前市の武生中央公園には夏になると大賑わいの場所があります。
いずれも福井新聞で紹介された、かこさとし監修、絵本の世界が反映された広々とした公園の中にあります。
1つは科学絵本『かわ』をもした、きれいな水が流れる人造の浅い川。笹舟をつくって遊べるようにササも植えてあります。(上)
もう1つは太陽系を表した平面噴水(下)、地球や火星の軌道を辿ってあそんでいると、噴水が細く高く吹き上がり、子どもたちの歓声が響きます。
山々を遠くに見ながら遊べる開放的な空間は、大人にとっても心休まります。なぜかゆったりとした時間が流れる越前市。一度ぜひお出かけになってはいかがでしょうか。
2025年8月1日 福井新聞 水遊び
戦後80年のこの夏、小学生にこそ読んでいただきたい『くらげのパポちゃん』(2025年講談社)が朝日小学生新聞に紹介されました。
「戦争にいかなければよかったのに⋯」この本を読んだ小学生がつぶやきました。
ところが戦争をしていたその頃の日本では、戦争にいかない自由はありませんでした。言われたようにしなければならない、それを強いられていた時代でした。
「くらげのパポちゃん」は、戦争にいって亡くなった人を見つけようと大海原をどこまでもどこまでも探しにいきます。
パポちゃんの旅は時にユーモラス、時にハラハラ、ドキドキする冒険のようで、たくさんの海の生き物に出会います。そしてついに⋯
小学生のみなさんの感想をぜひ聞かせていただきたいと思います。
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『くらげのパポちゃん』は現在、藤沢市アートスペースで開催中の「かこさとし作品展」で3枚の絵を初公開しています。入場無料、8月24日までです。
8月9日(土)には絵を描いた中島加名のトークイベントがあり、本物のミズクラゲや海の生き物が「おでかけえのすい」(テラスモール湘南)でご覧いただけます。
越前市出身 絵本作家かこさん、未来託す思い
複製原画、下絵でたどる
静かで涼やかな会場で絵に見入る方々の姿が印象的な藤沢市アートスペースでの「かこさとし作品展 〜これまでの100年、そして未来へ〜」について、福井新聞文化面で2025年7月30日に紹介されました。
紙面には、初公開『くらげのパポちゃん』の絵を見る来場者の方の写真も掲載され、本展示の構成やそこに込められた思いを説明、「かこが歩んできた100年を絵本で振り返り、未来について考える夏にしてほしい」というメッセージを結びに伝えていただきました。
2025年7月30日 福井新聞 かこさとし作品展
展示会に設けられている越前市情報コーナー
スタンプラリーも実施中。ゆったりした時間が流れる越前市を訪れてみませんか。
かこさとしが20代半ば川崎セツルメント(ボランティア)活動を始めた頃、毎週日曜日には南武線の鹿島田駅で降り、徒歩で古市場(ふるいちば)第2公園、通称三角ひろばに向かいました。
駅前の道は雨が降るとぬかるむ中、子どもたちが絵を描いたり、ガリ版刷りの新聞に使う藁半紙を駅前のお店で買い求めて、毎週日曜日、加古自身が借りていた小さな貸家に通いました。
そのお店が現在の鹿島田駅前にある「北野書店」さんです。店さきにはそんなゆかりを伝える看板もありますし、お店近くには三角ひろばの場所を示す区の案内プレートもあります。
今はすっかり綺麗に整備された駅前ですが、鹿島田駅から三角ひろば、そして多摩川の土手を目指してかこさとしゆかりの地域を巡ってみてはいかがでしょうか。
2025年7月27日東京新聞で「北野書店」さんのことが紹介されました。
2025年7月 東京新聞
セツルメント活動で子どもたちに見せていた紙芝居が元になってできた絵本、藤沢市アートスペースで展示中
セツルメント時代の記念碑的作品。8月6日から藤沢市ギャラリーで展示予定
子どもたちが101ちゃんと言い出し題名にまでなった作品。紙芝居のタイトルは「市べえ沼の大じけん」。8月6日から藤沢市民ギャラリーで展示
ぷかぷか漂うクラゲ
2025年7月12日の福井新聞で、越前市にある、かこさとしふるさと絵本館石石(らく)の展示について紹介されました。
この2月に出版された『くらげのパポちゃん』(講談社)は現在、藤沢市アートスペースにて初公開中ですが、パポちゃんはミズクラゲでこのミズクラゲをはじめその仲間や多くのクラゲやについての科学絵本『くらげのふしぎびっくりばなし』(2000年小峰書店)の初公開の絵などを、ふるさと絵本館では多数展示しています。(2025年9月1日まで)
他にもユーモラスなクラゲの絵がいろいろあって、小さいお子さんたちも喜ばれることでしょう。
この絵本館と藤沢市アートスペースの2展示をご覧いただくと『くらげのふしぎびっくりばなし』のほぼ全場面を見ていただけることになります。
また、福井新聞の記事にはこの2か所を巡るスタンプラリーのことが紹介されています。
7月15日現在、すでに2館を訪れてくださった方々がいます。越前市、藤沢市からの特別プレゼントも先着順で差し上げていますので是非この夏スタンプラリーにご参加ください!
上の絵は『くらげのふしぎびっくりばなし』の第1場面、ミズクラゲの仲間を紹介しています。
2016年選挙権は18歳以上になりました。
『わたしたちのまちです みんなのまちです』(1987年童心社/2017年復刊ドットコム)には、1925(大正14)に満25歳以上の男性全てに選挙権が認められ、1945(昭和20)年には男女平等の選挙権が満20歳以上になったことに触れています。
1925(大正14)年男性25歳以上の男性全てに選挙権
1945(昭和を)年満20歳以上の男女に選挙権
この本はかこさとし社会の本シリーズ12巻の最後の巻で、このシリーズには今回取り上げられた『こどものとうひょう おとなのせんきょ』も含まれていて、そのあとがきの最後には次のような言葉があります。
少数でもすぐれた考えや案を、狭い利害や自己中心になりやすい多数派が学び、反省する、最も大切な「民主主義の真髄」をとりもどしたいという願いで書いたものです。「民主主義のヌケガラ」と後世から笑われないために、私たち自身が反省したいとおもっています。 かこさとし(1983年旧版掲載文)
「書けなかった戦争」見つけた
戦後80年目の夏を前に、世界の平和を考えずにはいられない昨今です。
2025年5月23日朝日新聞朝刊(神奈川版)に鈴木万里のインタビュー記事が5枚の写真とともに大きく掲載されました。
「未来への伝言 戦後80年」コーナーの上記の見出しで、かこさとしが切に願っていた平和を守るため、写真の3作品の背景、出版の経緯や込められたメッセージなどをお話ししています。
青葉若葉が茂るこの季節、ふと思い出すのはスズランの花。北の大地では今頃咲いているのではないでしょうか。
そしてスズランが登場するかこ作品を読み返すのもこの季節です。
ひとつは『しらかばスズランおんがくかい』(1986年偕成社)。
絵本の裏表紙にはハリネズミがスズランを手にしています。あとがきには、ご覧のような絵(下)とともに「シラカバの林にスズランの花が咲いている風景というと⋯」という出だしで、実は「地味のやせた、寒冷の厳しい所」で、「一見美しいが、その実、とても厳しい」場所にすむ動物がこの絵本にはたくさん登場します。
束の間の夏、「おとをだすおもちゃ」のまわりでくりひろられる動物たちが詩情ゆたかに描かれるこの絵本は2025年5月28日の福井新聞1面のコラム「越山若水」でも取り上げられてました。
このお話の元になったのが、新聞に掲載した「おおきなおおきな おとしもの」という1963年作の小さなお話で、『かこさとし童話集②」に掲載されています。短い文章ですが2ページにわたる挿絵(下)があり、絵を見ながら自分で続きのお話作りを楽しんでいただきたいという加古の願いが込められているようです。
もう一作ご紹介したいのがウポポイが開館した記念に復刊していただいた『青いヌプキナの沼』(1980年/2020年復刊ドットコム)です。
ヌプキナとはアイヌの言葉でスズランのこと。スズランが咲く青い沼の地でアイヌの人々に起きた悲惨な出来事は、決して歴史の闇に葬り去ってはならないという強い気持ちが込められている作品です。
スズランに託したかこさとしの思い、願いが皆様に届くことを願ってやみません。
『青いヌプキナの沼』のあとがきは以下でどうぞ。
青いヌプキナの沼 あとがき