凧、蛸、たこ
加古は幼少期、現在の福井県越前市武生(たけふ)の地で身近な小さな自然の中、思う存分遊んだそうです。小川での小魚すくいや虫捕り。中でもトンボに魅せられ、やがて空を飛ぶものに興味をもつようになりました。凧あげは紙飛行機と並び小学校にあがってからもとことん追求した遊びです。
科学絵本「たこ」(1975年福音館)は「かがくのとも70号」として1月に発刊され、その後単行本としても出版されていました。この本は、凧の原理を風に舞う木の葉を例に説明し、凧を作るにはハガキ、画用紙、段ボールなどでも良く、ポリ袋を使っての作り方・揚げ方のコツを伝授しています。しかも型紙には蛸の絵まで描いて(下の写真)、かこ流の遊び心とともに画面のだるまちゃんだこ、かみなりちゃんだこ、うさぎちゃんだこは空高くまであがって行きます。
「さわやかな たのしいあそび」(1971年童心社、2013年復刊ドットコム) には、「たこ」というのは関東地方の呼び方で、関西では「いか」と呼ぶとあり、〈でんぽう〉や〈ひらき〉〈ちょうしっぽ〉などの仕掛けについても解説しています。冬の遊びと凧揚げは切っても切れないもので、この本の表紙にも、「子どもの行事 しぜんと生活 12がつのまき」(小峰書店)の表紙にも描かれていますし、「あそびずかん ふゆのまき」 (2014年小峰書店)では、小さいお子さんでも作れてとてもよくあがる、いろがみだこの作りかたを分かり易く図解しています。
下は、「かこさとしあそびずかん ふゆのまき」(2014年小峰書店)の表紙と前見開きです。
海にすむ生き物のタコも絵本には描かれています。「海」(1969年福音館)にはもちろんのこと、「ほねは おれますくだけます」(1977年童心社)では軟体動物の例として大きく描かれています。下の写真をご覧ください。
一方、「かいぞくがぼがぼまる」(復刊ドットコム)の前扉のユーモラスなタコ(下の写真)は、これから海上で始まる壮絶な展開とは対照的な、海中の静けさ、のどかな雰囲気をなんとも上手く醸し出しています。
「ことばのべんきょう②くまちゃんのいちねん」(1971年福音館)では、海の場面に登場するだけでなく表紙のくまちゃんが持っているのがタコです。(上の写真)
発売されたばかりの「だるまちゃんすごろく」(2016年福音館)の表紙でも、下の写真にあるように、だるまちゃんはタコを手にしていますし、青で縁取られている〈おくにめぐりすごろく〉の25みえ(三重県)には、いせのねりものとしておがくずを固めてつくる郷土玩具のタコが描いてあります。このおもちゃは数十年前にはよくあったそうで、「ことばのべんきょう」(1971年福音館)のおもちゃやさんの店先にもタコちゃんがいます。
絵描きあそびでもタコを描いていく多くのバリエーションがあったようです。「伝承あそび考1」(2008年小峰書店)第5章では、日本普遍生物〈タコ〉の調査、と題し全国の子どもたちが生み出し、伝承伝搬してきたものが記載されています。これらは1950年から1980年までに加古が収集した31673の資料を215種類に分類・考察した記録で20ページ余りにわたります。下は182〜183ページの一部です。
新刊「だるまちゃんと楽しむ 日本の子どものあそび読本」(2016年福音館書店)にも〈たこたこならび〉という、ゆげ絵遊びが紹介されています。
タコは多幸という当て字もあります。加古作品にでてくる〈たこ〉を見つけてにっこりしていただけたら嬉しく思います。どうぞ良い新年をお迎えください。