編集室より

「あいうえお」を覚えた時の記憶はありますか。筆者はあいうえおが一文字ずつ書いてある積み木で遊んでいたことを覚えています。正確に言えばこれは「あいうえおのひらがなを覚えている頃の記憶で、「あいうえお」はまず耳で自然に覚えてしまったのでしょう。これと似た話を聞きました。『ありちゃんあいうえお 』(2013年講談社)をお母さんが声を出して読んでいたら自然に小さなお子さんがあいうえおを言えるようになったというのです。

この本の副題は「かこさとしの71音」で、かこの手書き文字(下)にある濁音や半濁音を合わせた71音が出てくるリズムあることばが集められています。「かこさとし」というペンネーム「かこ」については、あいうえお順と関係があるのです。本名はナ行であいうえおでは少し間があるので、か行の最初と最後の文字の組み合わせだと語っていました。

『ありちゃんあいうえお』では、か、こは次のような言葉で紹介しています。
「からすちゃん かえる」
「こおろぎくん こまる」

主語は動物や昆虫、述語は動詞だけでなく形容詞、形容動詞などです。これが濁音になると
「がまちゃん がんばる」
「ごりらくん ごねる」となります。

かこは常日頃、言葉集めに余念がなく、おもしろい言葉や言い回しを拾い集めるようにノートに記録していました。そうして集めた中から様々な、言ってみれば「あいうえお作品」が生まれました。出版されたものの中からご紹介しましょう。

『こどものカレンダー1月のまき』(1975年 偕成社)には、1月ということで、いろはがるたが本全体にわたって紹介されていて、「い」はこうです。

一を聞いて十を知る(尾張)
一寸さきやみの夜(上方)
犬も歩けば棒にあたる(江戸)

という具合に地域による違いもわかるようになっています。
いろはがるたは、本文の説明にあるように「むかしの人が こどもたちに いろんな ことを しってほしいと おもい」作ったわけです。以下は1月25日のページ、かこ作の「あいうえおうた」です。

あいうえおうた

(引用はじめ)
あいうえおはよう おかあさん
かきくけこどもも おてつだい
さしすせそらには おてんとさん
たちつてともだち なかよしと
なにぬねのはらで あそびましょう

はひふへほんも よみましょう
まみむめももたろ きんたろう
やいゆえよるの おはなしは
らりるれろばたで たのしんで
わいうえおやすみ おとうさん
んと よいゆめ みてねましょ
(引用おわり)

[おうちのかたへ]として、かこのメッセージがそえられています。
(引用はじめ)
北原白秋の「五十音」にならって、ことば遊びのを歌をつくってみました。いろいろ考えたり楽しんだりしていただければと思っています。
(引用おわり)

あいうえお元気で かきくけコロナに負けず さしすせその2に続きます たちつてとっても面白い おいうえお物語り またこんど!