編集室より

漢字の本?

投稿日時 2023/03/26

石偏や金偏の漢字が並んだこの場面、いったいこれは漢字の本なのでしょうか。

『なかよし いじわる 元素の学校』(1982年偕成社)の前見開きで、見えにくいのですが左上に中国の周期表とあり元素記号が一緒に表記されています。日本化学会監修の科学絵本です。

これはいかがでしょうか?

ページの上に全部ひらがなで次のようにあります。
(引用はじめ)
むかしの ちゅうごくには てや ゆびを つかう じが、こんなに たくさん ありました。
ですから、てや ゆびは、とても よく うごいて いろんな ことを たくさん できる ことが わかります。
(引用おわり)

実は、小さいお子さん向けの科学絵本『てとてとゆびと』(1977年童心社)の一場面です。

指や手の40以上の動作を絵で表し、さらに小さい子ども向けだからと言って躊躇せず、このように100の漢字を並べることによって、人間が獲得した手の動きの多さを伝えています。大人が見ても知らないものがあり興味が湧きます。

下は現在私たちが使っている漢字が中心で、遊びの本『どじょっこ ふなっこのあそび』(農文協)のページです。

貝については「かたちや いろが きれいで めずらしい かいは むかしから おかねの かわりに つかわれたり、たからものとして だいじに されてきました。」とあります。

(引用つづき)
「それで、「貝」という じが ついた 「字」は おかねや たからに かんけいした ことを あらわしています。おうちの ひとと いっしょに みてください。
(引用おわり)

とあり、リュウグウオキナエビス貝なども描かれています。

この本には魚偏の魚の名前も並びます。本文にもあるように、これは「かん字と言っても、国字と いって 日本で つくられた 字が とても たくさんです。」(漢字にはふりがながあります)

海に囲まれ、タンパク質を魚から摂取していた日本だからこそ生まれた和製漢字ですね。全てを魚偏で書くのではなく絵で表しているところ、英語名の例までつけ加えているところが、かこさとしらしい点です。

科学絵本や遊びの本でも、文章が全部ひらがなで書かれていても、このように漢字や英語を紹介しているのは、お子さんたちがいずれ学ぶことになるので、楽しみながら興味を持ってほしいと願ってのことだったのでしょう。