『かこさとしの食べごと 大発見8 きれい果物 あまから菓子』(1994年 農文協)
夏休みのおやつ作りのヒントになりそうな本です。暑くて外出するのが億劫なときこそ、お家でレストランやカフェの気分はいかがでしょうか。前見返しには布ナプキンの素敵なたたみ方、前扉には「紙ナプキンのかざりおり」がいろいろと紹介されています。そのページにある著者の言葉は以下です。
デザートですか? おやつですか?
(引用はじめ)
この本はおもにくだものやお菓子について書いてあります。あなたは、食事がすんだあとのデザートとして食べるのが好きですか?それとも食事と食事の間のおやつにめしあがりますか?どちらにしてもすばらしいことですね。
わたしの年がわかって癪ですが、わたしのちいさいころ、ビスケットやリンゴなどは、りっぱな食料で、それで何食も何日もすごすなど、めずらしいことではありませんでした。いまでも世界のどこかで、うすいおかゆや山野のくだもので飢えをしのいでいるというニュースに、胸が痛みますが、デザートやおやつをとるというのはそれだけ食料が豊かで、経済的にめぐまれているだけではなく、主食とちがった味を楽しむこころのゆとりがあるということです。
ぜひ、その広い豊かな心のゆとりを、よりよきものへ、より高いものへむけて、もとめ、すすんでくださるよう、くだものやお菓子にかわってお願いします。
(引用おわり)
本文では全ての漢字にひらがながふってあります。
このシリーズには、今までもご紹介したように前書きやあとがきに当たる言葉以外にも〈この本のねらい〉や大人に向けての著者のメッセージがきわめて多く掲載されています。
次にあるのは、通常のあとがきに当たる部分です。
色やかおりも、だから目も鼻も
(引用はじめ)
いまでは、あまりみられませんが、すこし前までくだもの屋さんの店先で、しょっちゅうりんごやネーブルをピカピカ、ツヤツヤ布でふいてならべていました。
また、お菓子屋さんのショーウィンドの前で、子どもといっっしょにしゃがみこんで、「あれがほしい」「これが食べたい」と長いこと鼻をつけていたことがあります。
いまでもくだもの屋さんの店先やお菓子屋さんの飾り窓は、ほかのお店先には悪いほど、とてもきれいで、鮮やかな彩りに満ちあふれています。色ばかりではなく、ふつうの食べものより、ずっとずっとすてきなにおいや、かおりがただよってきます。
お菓子は、つくる人が色やかおりも考えてつくったものですし、くだものも動物や鳥が、好んで食べ、種子を広めてくれる作用が、進化の過程で目立つ色やにおいのよいものを残し、人がさらに改良栽培した結果でしょう。
したがって、ただお腹がふくれ、栄養があればよいというのではなく、くだものやお菓子では、色つやの美しさやまろやかさやつりあいのとれた深みなどが大切なこととなります。どうぞこの本で、見出された新発見をふくめ、たっぷりゆっくり目も鼻も舌も、お楽しみください。
(引用おわり)
そして最後には大人にむけた以下のようなメッセージがあります。
健康と生活をじぶんで律する力
(引用はじめ)
甘いケーキは虫歯になる、くだものも糖分があるから肥満のもとという人がいます。活発な成長期の子供には、お菓子やくだものは第4の食事の役を果たしますが、ただむやみに飽食過食したのでは、必ずどこかに問題が起こります。食前食後の処理や始末はもちろんあそびやスポーツ、家事手伝い、そして労働など正しい生命の燃焼である身体各部の運動活動がなければ、健康を損なうこととなります。
嗜好品と呼ばれるように、食べるかどうかは本人の選択なのですから、自らのからだや生活を自ら律し改良する力をもつきっかけとなるよう、ぜひお菓子やくだものを利用し、指導されるよう期待いたします。
(引用おわリ)