『そろって鍋もの にっこり煮もの -かこさとしの 食べごと大発見 3-』(1994年農文協)
すっかり秋らしくなり『そろって鍋もの にっこり煮もの』が嬉しい季節になりました。
食いしん坊の誰かさんは、夜寝付けない時に、羊の数を数えるのではなく、おでんを食べるとしたら何からどんな順番で食べようかなあと想像するそうです。そんな事をしたら尚更目が覚めてしまいそうですが、この本の1ページは、おでん鍋を囲む笑顔の一家の会話(下の写真)から始まります。まずは前見返しにある〈この本のねらい〉をご紹介します。
〈この本のねらい〉
ゆっくり煮こんでほしい
(引用はじめ)
食べものを煮たりたいたりという事を物理化学的に味気なくいえば、食品を水とともに加熱する工程となるでしょう。しかし、その水の量や加熱処理の時間、温度によって「煮こんだり」「煮つめたり」「煮っころがしたり」といういろいろな料理となり、それにふさわしい大きさや深さや形や材質の加熱容器がさまざまな鍋となって登場します。
それでは、一体どんな煮たきの操作によってどんな料理に変わるのか?どんな処理を行うために、どんな鍋が用いられのかーーーどうぞこの巻でゆっくり煮こみ、とっくり煮つめてみてください。
(引用おわり)
さらに著者の言葉が続きます。
煮たきもののかくし味発見!
(引用はじめ)
煮たきすることは熱を加え食品をやわらかくするだけでなく、「ふるさと」とか「おふくろ」といった味がわきでる不思議な様子を4~5、6~7ページにのせてあります。
煮るものといえば、あなたの一番好きな、おでんのたねはなんでしょうか?20〜21ページの絵(下の写真・一部)の中にあれば幸いです。
こうした日本の煮込みものは、シチュー(10〜11ページ)とか、ポトフやボルシチ(12~13ページ)とかと、どうちがうのか、ぜひおたしかめください。
そして全国のなべものめぐり(24~31ページ)や見返しの煮もの、汁ものの日本地図によって、忘れていたなつかしい味を思い出していただきましょう。
このように、この煮もの、たきものの巻は各所にちりばめた、いろいろなかくし味をお楽しみいただく発見の絵本です。
(引用おわり)
尚、漢字には全てふりがながあります。
最後のページには、次のようにあります。
寒い季節の暖炉の魅力
(引用はじめ)
日本でも外国でも寒い地方では、冬一日中暖炉を燃やし続けます。その熱源を生活している人々は見逃しません。湯をわかし、薪や衣服を乾かし、なべをかけます。こうして暖炉を必要とする生活は、暖炉を使っての料理や、それを囲んで集う家族や隣人との接触親和の場をつくります。したがって暖炉という熱源は、単に料理づくりに役立つだつだでなく16〜17ページ(下の写真・一部)にご紹介したように、まわりをかこむ人々を結びつけ、心をあたため、会話や笑いをはずませていくという事です。この不思議な魅力、すばらしい威力を北国の冬の暖炉ばかりでなく、いろいろな煮もの、たきもの、なべものが秘めている様子をお知らせしたのが、この巻です。北国の冬生まれ一人として、この本をお読みいただいた事を感謝し、南国生まれ方にも、この食べごとを見つけられるよう祈ります。
(引用おわり)
さらに、後ろ見返しには著者から読者の皆さんへの言葉があります。
台所の代表は何か?
(引用はじめ)
簡単に台所を、絵であらわすにはどうしたらいいでしょうか?魚や野菜をかいても店屋さんと間違えますし、ガスレンジや冷蔵庫は、よほど上手でないと手提金庫が物入れになってしまいます。という訳で、一番早くてやさしいのは「なべやフライパンのある部屋」というあらわし方だと言うことになりました。やはりなべやフライパン(これも浅い片手鍋の1種です)は、台所を代表する道具であることがわかります。
この台所の代表は、その役目である煮たきのための、食品と水を収めておく容器としての機能と、熱を加え、伝える、種々の材質の壁を持っています。さらにフタのあるなし、持ち運びのための柄や取手、通気穴や中底のあるものなど、多くのなべが工夫され使われている様子を、どうぞあらためて見てください。
(引用おわり)
鍋ものだけあって著者の熱い思いが伝わってきます。それにしても、おでん好きの様子、さては、、、?!