宝尽くし
松竹梅や鶴亀、鯛などとともにに福だるまの連想につながるだるまちゃんは、縁起がいいとおっしゃってくださる方があります。年始にあたり繁栄や富貴など先人たちの願いがこめられた「宝尽くし」という吉祥文様と関係するものを加古作品の中で探して見ましょう。
お宝といえば、それを狙うのはどろぼうというわけで「どろぼうがっこう」(1973年偕成社)の裏表紙(上の写真)の左下に宝と記された壺(金嚢きんのうでしょうか)、そして表紙には宝鍵(ほうやく)があります。(下の写真、ひろげた手の右下)。字が示すように 大切なものをしまっておく倉庫の鍵で「鍵のてに曲がって」という表現に使われる鍵はこの鍵のことです。
どろぼうだったら、倉庫の中が気になるところです。顔の左上にあるのは、飾りのように見えますが、鍵穴隠しです。
だいこくちゃんの打出の小槌はご存知の通りですが、昔人たちが現代の私たちの生活を見たら打出の小槌で次々に欲しいものが目に前に現れるように思うかもしれません。手をかざせば水が出たり、そばに行けば灯りがついたり、画面に触れたら世界中のニュースが瞬時にわかったり。
下の写真は「だるまちゃんとだいこくちゃん」(1991年福音館書店) です。
逆に現在の私たちには理解しにくいお宝もあります。もうほとんど使うことがなくなってしまった隠れ蓑(みの)と隠れ笠(かさ)。身を守る、あるいは正体を隠す意味で大切なものとされたようです。
蓑笠を日常生活に使わなくなってしまい、若木の葉の形が蓑に似ている樹木のカクレミノなどは名前の由来がピンとこないかもしれません。
写真をご覧ください。若い頃は下にあるように葉が三つに分かれて蓑のようにみえます。
ミノムシ(蓑虫)といえば、木枯らし吹く木立にぶら下がり、まさに冬の図ですが、秋の季語だそうです。最近はすっかり見かけなくなってしまいました。みなさんのお住まいの所ではいかがでしょうか。下は、「かこさとし あそびずかん ふゆのまき」(2014年 小峰書店)の前扉の部分です。
筆者は小さい頃、毛糸や色紙を細かくして箱の中にいれ、蓑からだしたミノムシをその中にいれておくと毛糸や色紙の蓑をまとったカラフルなミノムシになるのを楽しみました。今では絶滅危惧種に上げられている種類もあるそうです。先人たちの意図とは全く異なりますが、生物多様性という視点から見ると隠れ蓑ならぬミノムシも大切な存在だと気づかされます。
(下の写真、ロウバイの幹にミノムシがついています)