編集室より

原爆を投下された広島、長崎、空襲を受けた日本各地、激戦地沖縄、多くの出征兵士が亡くなった海外の地のさまざまなことを一冊の本で知ることは難しいかもしれませんが、一冊から始めてみる、そのきっかけになればと思い加古作品からご紹介します。

平和を考える一冊

『秋』(2021年講談社)
かこさとしが高校2年生、勤労動員の工場で腹痛を起こし入院していた時に目撃した戦争の悲劇は敗戦の前年の秋のことでした。東京の空で攻撃を受けた日本の飛行士は落下傘で脱出したもののそれが開かず帰らぬ人となりました。病院でお世話になった医師や世話をしてくれた方も戦争に巻き込まれその生涯を閉じました。そんな苦しい秋が早く終わり平和な秋のお訪れを願う気持ちが絵からも切々と伝わってきます。

『わたしたちのまちです みんなのまちです』(1987年/2017年復刊ドットコム)
太古の昔から現在までの日本を通して見る絵本。全貌を見渡すことで気づきがあったり、さらに詳しいことを知るきっかけになっていくかもしれません。歴史を学ぶ前のお子さんたちにぜひご覧いただきたい絵本です。

戦争を知る一場面

一冊の本を読むのが難しいようでしたら、一場面はいかがでしょうか。

『こどもの行事しぜんと生活8月のまき』(2012年小峰書店)ではご覧のような絵で8月6日、9日の原爆忌を伝えています。

『いまはむかしれきしのあそび』(1993年農文協)は、初めて火を使った人の紹介から始まり、四大文明、十字軍の戦、無敵艦隊の戦い、フランス革命、南北戦争などを取り上げ、「せんそうがなんどもおこった」というみだでしで以下のような表があります。

「これだけの ひとと ものと おかねが よいことに つかわれたら よかったのに」著者のこの言葉が心にささります。

『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)は加古が小学校卒業にあたり学校で書いた作文と絵を合わせた画文集です。小学校に入学する前に満州事変勃発、小学1年生のときに日本が国際連盟脱退、5年生の時に226事件、6年生の7月に日中戦争開始、11月に南京占領。

この画文集には南京占領に沸き、旗行列をした様子が描かれていますが、こうして大学1年の夏まで、戦争が続くことになったのでした。小学生の加古が描いたこの1枚の絵、現在のお子さんたちが当時の社会を知るきっかけになれば幸いです。