忍者
忍者は日本のみならず海外でも人気ですが、忍者を主人公にした絵本といえば、『ぬればやまのちいさなにんじゃ』(1978年/2014年復刊ドットコム)です。昭和時代に黒い表紙のかこさとし・むかしばなし5冊シリーズの第4巻として出版されたものが復刊され現在に至っています。
ぬれば色というのは、カラスの羽のような黒のことで、題名から察せられるように主人公「あきち」は実はカラスなのです。父、母、妹の仇をうつために「たかのすやま」のてんぐに弟子入りし厳しく苦しい修行に励み、ついには大鬼に立ち向かうのが下の場面です。
鬼と闘う場面はおどろおどろしく、あとがきには次のようにあります。
(引用はじめ)
人であり生きているからには、やさしさと同様,時には強さやたくましさた厳しさが求められることがあり、そのため、黒いこのシリーズに忍者が登場したわけです。
(引用おわり)
童話集第5巻には忍者がテーマの2作品が収められています。そのひとつ「伊賀の黒丸のこと」は次のように始まります。
「伊賀、甲賀は忍者の里である。その伊賀のなかでも黒丸は、なかなかの忍者だった。」
しかし、その「なかなかの黒丸」も他の忍者との静かで熾烈な闘いを通し「忍者世界のきびしさを知っていったのである。」と結ばれています。先のあとがきの言葉がこのお話にも当てはまるようです。
もう一つのお話は「三人のさささ忍者」。父親から勧められてそれぞれ異なる忍術を習得した三兄弟が大活躍するお話で、その後この三人は滋賀、甲賀、伊賀の忍者の「師となって後進を育てたということである」とあります。
ちょと意外なところにも忍者が描かれています。
下の絵は科学絵本『おおきいちょうちん ちいさいちょうちん』(1976年福音館書店)の前扉です。この絵本は副題にあるように、ゆかいな「反対」ことばをユーモラスな絵で知ることができる大変ユニークな絵本で初版から50年近く経た現在でも大人気です。
この絵には御用提灯を持つ人を画面左上から鋭い目つきで見る小さい忍者はがいます。ここだけに登場する不思議な存在です。
かこさとし小学校卒業のときの絵日記『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)には,福井から東京に転校したばかりの二年生の時、二十人ほどの級友にいじめられ、けんかに勝つ方法をあれこれ考え試していたことが書かれ、次のように続きます。
(引用はじめ)
それからよく研究した。一つの術を考えた。
これは忍術をもちいた。(中略)先ず灰を用いた。これはごくこまかいのをとった。
(引用おわり)
この後に灰の作り方や作戦が続き、「二年生の時は、いじめられるのとけんかで終わった。学校の方はあんまり出来なかった。」とあります。
小学生時代のこんな経験を経た加古が作った忍者のお話をどうぞお読みください。