編集室より

2017

次々に登場するこまった状況の動物たちが、自分の出来ることを他のためにしてあげることによって、皆がこまった状況を乗り越えることができるというお話。困難を解決するにはどうしたら良いかを小さいお子さんにもわかるように温かな雰囲気の絵で描いています。

1986年偕成社より刊行された同名の絵本を再編集の上、新たなあとがきを加え復刊したものです。
1986年の発行時のあとがきをご紹介します。

(引用はじめ)
子どもに接する大人の態度で大事なのは、「明るく、はっきり、ゆったり」といういことです。毎日の生活や長い人生は、決して良い時ばかり続くとはかぎりません。こまった問題やむずかしいイザコザにぶつかります。そんな時、身近な信頼しているおとなが、どんな様子であるかが、子どもにとって大きな影響を与えます。
問題を、子どもからかくしておきながら「暗く、不可解で、せっかち」な態度を示すほど、子どもを悲しませ、悩ませるものはありません。
「明るく、はっきり、ゆったり」立ち向かう大人の姿から子どもは生きる力をひとつひとつ学びとってゆくように、このお話のこぐまたちから困難をのりこえる力を読みとってほしいと思います。
(引用おわり)

上の写真は後扉で、このページには2017年版に際しての著者の言葉が加えられています。お読み下さい。

新版について

(引用はじめ)
この絵本を最初に出して頂いたのは、30年前の昭和時代の末で、社会は一応平穏を謳っていましたが、日本海中部地震/つくば科学万博/グリコ事件/日航ジャンボ機墜落など、様々な問題が発生していました。私は三つの大学の講義と、その間全国各地の講演でとびまわっていて、接する学生や教師、家庭の人々がいまひとつ意欲や覇気の乏しいのが気になっていました。せめて子ども達に持っている力や才智に応じた共生助け合いの心と、未来に生きる情熱を持ってもらいたいと念じて 作ったのがこの作品です。その私の願いが今も変わらないのが、少しさみしい気がしている所です。愛読を感謝します。
かこさとし
(引用おわり)

以下から白泉社MOEの絵本ニュースをご覧下さい。

http://www.moe-web.jp/character/kako.html

かこさとし食べごと大発見の第2巻「ちり麺ラーメン そばうどん」(1994年農文協)をご紹介します。
第1巻「ご飯みそ汁 どんぶりめし」をご案内した際にも述べましたが、このシリーズは前見返しに〈この本のねらい〉と前書きに相当する著者のことば、前扉には逸話の紹介があり、本文に続く最後のページにはあとがきにあたる文、さらに後扉には〈作者からのお願い〉と著者の創作の意図がふんだん語られています。

それは、著者が食べごとという独自の視点からこのシリーズを構成しているからにほかなりません。
カバーにある著者のことばを記します。

心とからだ に役立つ うんまい、おいしい絵本

(引用はじめ)
総合的な人間発見食べごと絵本 ー かこさとし
食事のとき、私たちはたべものとだけ向き合うわけではありません食器や調味料、ナプキン、それに花瓶も食卓に並びます。買い物の失敗談や一日のできごとが、食膳の会話や談笑となります。「いただきます」の言葉から食後の片付けまで、食事とはその人の全生活と関係し、季節社会に呼応しています。この本は、そうした統合的で創造的な「食べごと」の再発見をめざして編集されました。読者がそれぞれ「食べごと」を見直す契機となれば幸いです。
(引用おわり)

この本が書かれたのは、20年以上前ですが、この20年の間に著者がめざしていた「食べごと」どころか満足に食事ができない子どもたちがいるという現実。その解決のための子ども食堂が、空腹だけではなく子どもたちの心も満たしているならば「食べごと」の悲しい実例なのかもしれません。

扉には次のように書かれています。

人生あるいは人世は、めん類

(引用はじめ)
江戸時代の謎に、そば、うどんの如く生くるに、細く長きに如かざるもの何ぞ。というものがあります。堅からず軟弱でなく真っ直ぐであるが、しなやかに曲がり、当たりよく飲み込み、よく生涯をすごすのが、人間の知恵だというので、答えは人生ということになります。しかし、同じ音読の人世すなわち実社会や渡る世間もなんどもこねたり、叩きつけられたあげく、のばしたり、切られたり、熱い煮え湯くぐらせられるものだとの教訓とも考えられます。
それでは、めんが人生であるのか、それとも人世がめんであるのか、その実際をみてみることにしましょう。
(引用おわり)

前書きにあたる上記の文は大人に向けてのメッセージですが、本文はいたって明るく楽しく、皿田家の面々が美味しそうな麺をすすりながら、材料となる小麦粉、そば粉、米粉の違いやつけ汁かけ汁、薬味、中華麺、パスタと「からすのそばやさん」顔負けの多種類の麺が描かれ、見ていると食べたくなることうけあいの本です。

表紙に登場する皿田家メンバーのフィギュアは紙粘土製でかこさとしの手つくりです。冒頭の写真では、はっさくじいさんとふきばあちゃん、小さななめこちゃんがいます。
最後にー作者からのお願いーをご紹介します。

めん類の体験と見学 ー作者からのお願いー

(引用はじめ)
変態といってもエッチなことではありません。卵/幼虫/蛹/成虫と昆虫が体つきを変えるのを変態といいますが、粒/粉/塊/麺と変貌する様子は、魔法の連続です。しかも、その間におこる混合/捏和/粘動/煮沸などの極めて高度の物理化学的操作と変化を、わくわく自分で確かめ、試してみることができるのです。
そして、その結果は、無粋な偏差値やグラフで示されるのではなく、よかったかどうかは、食べてみれば、内臓から全身によってはっきりわかります。この変身発見の機会を、家庭や園や学校でぜひ作っていただくご配慮を、お願いするところです。
(引用おわり)

大奮闘のせいごパパが、ちりめんラーメン作りに挑戦。出来上がったラーメンに大満足のようじくんの笑顔は本でご覧下さい。

かこさとしの90年を集約した本書は、初公開のものを含め豊富な写真で作品とその創作にこめたねらいや願い、背景を深く探り時系列で浮き彫りにします。加古作品に流れる人生観、哲学がわかり易く紹介されているのが魅力です。

野村萬斎氏との対談や古くからの友人、作家・加賀乙彦氏や美術史家・辻惟雄氏によるエッセイに加え知人や家族による文章は、かこさとしの知られざる一端を垣間見ることができるでしょう。

写真入り略年譜、完全最新版著作リストは資料としても貴重で、絵本館情報も掲載され、まさに完全保存版というべき1冊です。

ねこ

投稿日時 2017/02/25

上の写真は、「だいこんだんめん れんこんざんねん」(1984年福音館書店)の後扉です。

大根やレンコンなど身近なものの断面図からこうして最後には地球まで見せてしまう科学絵本ですが、たくさんいるのは猫の親子。どうしてここで猫が登場するかというと、お子さんにとっては難しい断面という見方の大切さを伝える楽しくわかりやすい一例として本文中にでてくる出来事に関係しているのです。

同じく福音館発行の「かがくのとも でんとうがつくまで」(1970年)では表紙に犬、裏表紙に黒猫がいます。(下の写真)

かこさとしの動物好きは読者の皆さんがお見通しですが、絵本に登場する猫をもっと探してみましょう。

デビュー作「ダムのおじさんたち」(1959年福音館書店)にいます。おじさんたちが飯場で昼休みのひと時を過ごす場面に白い可愛い仔猫。この一匹がいることでおじさんたちが休憩時間にねこをかわいがる様子が目に浮かんできます。科学絵本でありながら、このような場面に一匹のねこを描くことでさらに人間味が感じられ物語性の厚みが増すように思います。

「あそびずかん」(2015年小峰書店)でも黒猫が子どもたちのあそびの場面に一緒にいます。写真は「あそびずかん はるのまき」の表紙(一部)です。

家族が登場して絵本が展開する場合、家族の一員として名前のある猫が出てきます。「こどもの行事しぜんと生活」(2012年小峰書店)では家族全員が節句や季節などに関係ある名前で、2月生まれのねこはアル。(下の写真・4月のまき)2月22日はねこの日だそうですが、加古は中国語の数字の2の発音からこう名付けたようです。アルも黒くて赤いリボンで、元気いっぱいです。

「かぜのひのおはなし」(1998年小峰書店)で子供達と仲良しなのはトラ猫(下の写真)です。

この猫とそっくりなのが当サイト[作品によせて]で第1巻「ご飯 みそ汁 どんぶりめし」をご紹介した「かこさとしの食べごと大発見」10冊シリーズに登場する皿田家のねこで、その名はラムです。

上の写真は、「かこさとし 食べごと大発見4 うれしいフライ 天ぷら天下」で活躍するラムねこ。この「食べごと発見」シリーズの表紙は、食べ物と絵本に登場する皿田家のひとびとがミニフィギュアで写っているのですが、このフィギュアは紙粘土を着色したかこさとしによる制作です。ラムねこちゃん(下の写真)は高さ5センチほどの小さなものです。

まだまだたくさんのページに登場するねこ探し、一度にたくさん見つけたい方に耳よりな情報を一つ。動物が465匹描かれているとあとがきにある「わっしょい わっしょい ぶんぶんぶん」(1973年 偕成社)をお忘れなく。

かこさとしの生まれ故郷・福井県越前市で生育されている天然記念物コウノトリをモチーフに豊かな環境を守り、コウノトリとともに暮らす子どもたちや人々を情緒豊かに温かな視線で描くフィクション。舞台となった地域にとどまらず人間と生き物の共生、地球規模での環境について考える入り口となります。
見返しには、日本・世界でのコウノトリについても書かれています。
あとがきをご紹介します。

あとがき

(引用はじめ)
コウノトリは、白と黒のつばさをひろげ、赤く長いあしをそろえて飛ぶすがたがとてもきれいです。水辺の魚や虫、カエルなどをえさにする、人なつこい大型の鳥です。それで日本でも海外でも、幸せや赤ちゃんを連れてくる鳥として、親しまれてきました。

しかし、自然がうしなわれ、えさが少なくなったため、住むのにてきさないところが増えて、世界中のでコウノトリの数が少なくなりました。コウノトリが住めるようなよい場所にしようと兵庫県豊岡市、福井県越前市の白山・坂口地区などでは、熱心な努力がおこなわれています。

この絵本は、コウノトリが飛んできて住みたくなるようなところは、人間の生活にもよい自然と環境なので、そうしたよい状況を守り、地球の生物がともに楽しく平和にくらせるようにとのねがいをこめて、つくりました。

もし読者のみなさんに時間がありましたら上記の地区の方々努力されているようすをみていただきたいと思います。
(引用おわり)
尚、全ての漢字にはふりがながありますが、ここでは省いています。

2017年2月14日より開催している「かこさとし展」に行ってきました。
4階の静かな空間に「出発進行! 里山トロッコ列車」(2016年偕成社)の全原画と絵本用ではなく小湊鉄道広告用に描かれたデイーゼル機関車の絵や、おなじみ「だるまちゃんとてんぐちゃん」「宇宙」「かわ」(福音館書店)「からすのパンやさん」(偕成社)の複製原画が並びます。

かこさとしのインタビューや小湊鉄道の映像も見ることができます。

だるまちゃんやてんぐちゃん、絵本に登場するうちわ(越前和紙)の他に、かこさとしが使っていた筆記用具、「出発進行!里山トロッコ列車」5ページに描かれているタブレットや硬券切符、かこさとし特集MOE3月号なども陳列しています。
2017年3月20日まで。休廊は月曜日で詳しくは本サイトお知らせ・展示会情報をご覧下さい。

かこさとしあそびの本シリーズ5冊のご紹介も本作「しらない ふしぎな あそび」(2013年復刊ドットコム)で最後です。
2000年前からあるギリシャの石けりからはじまり、この本には、ペルーのじんとり、世界中にある竹うまやけんだまあそびなど、しらないあそびやふしぎな錯覚あそびなどが満載です。何百年も前にインドで考えられたというあそびやヒンズーのすごろくは、きっと大人でも見たこと、聞いたことがないことでしょう。

前扉(下の写真)には次のように書かれています。
(引用はじめ)
がいこくには めずらしい しらないあそびがたくさんあります。にっぽんにも ふるくからつたわる ふしぎなあそびがいろいろあります。 これはそうした せかいとにっぽんをつなぐ、あそびの本です。
(引用おわり)

あとがき

あとがきを記します。
(引用はじめ)
この遊びの本も、ようやく最終巻を見ていただけるようになりました。おさめられたあそびの数は、数え魔の下の娘の計算によると、第1巻 89 第2巻99 第3巻102 第4巻127となっていますので、この最終巻156を加えると総計573種ということになります。今まで子どもの遊戯やあそびをまとめた本は、けっして少ないわけではありませんでした。しかし私はこの5冊の本で
1)主人公である子どもの心と考え
2)まわりをとりかこむ条件やふいんき
3)健康で進歩的で発展的な内容
を、特に大事な軸としました。私の知っている限り、上の3つの点を全部配慮してある本は見当たらなかったように考えたからです。

子どもたちは遊ぶことが大すきですが、けっしてあそんでだけいるものではありません。しかも、正常であればあるほど、あそびは子どもたちの生活と色濃く結びついています。

ですからまったく子どもたちの生活の他の部分をぬきにしたり、無視して、あそびだけをきり離して論じたり、解説する「静的」な取り扱い方をわたしはしませんでした。よくお正月などに放送されるわらべうたや手まりうたが、声はきれいだが、ちっとも面白くないーーーすっかり生き生きした子どもらしさが消えさってしまっているーーーのをおそれたためであります。

したがって、このほんの内容をできるだけ生きた形でつかまえ「動的」に応用しながら、家庭や校庭でいかしていただきたいというのがわたしの願いです。

さいごまでよんでいただいた皆様と、わたしのこの5冊をまとめるのに、生きた資料をわたしに教え、考え、はげましてくれた全国の子どもたちにつきぬお礼をおくらせていただきます。では、お元気で さようなら。
(引用おわり)

あそびの大惑星10冊シリーズは以前に第1巻をご紹介をした時に、なぞなぞから始まる本とお伝えしました。9冊め「あそびの大惑星 9そろった わになったのあそび」(1992年農文協)冒頭には、こんななぞなぞがあります。
(引用はじめ)
〈なぞなぞ もんだい だい1ごう〉
ごにん そろって どうくつ たんけん
いりくち はいるとすぐにばらばら
ゆきどまり あなに もぐってしまうもの な~んだ?
(引用おわり)

ヒントを特別に。上の表紙写真の中にこたえがあります。

この本の副題は[遊びの冒険司令塔]で〈そろった ならんだ きしゃぽっぽ〉遊びから始まり、輪になっての遊びやイタズラのいろいろ。そして冒険といえばといえば〈ぼうけんきち〉(下の写真)。

なかなか難しい〈なかまちがい・まぎれこみ〉や〈じゅんじょちがい・ばしょちがい〉に〈ゆきのけんきゅう〉〈こおりのついきゅう〉と大人も知らない雪や氷の呼名が多数並び最後には〈ちきゅうのもんだい かんきょうのなぞついせき〉といった地球とそのまわりの宇宙の環境問題にも目を向けます。(下は本の最終場面の一部)

ところで、冒頭のなぞなぞの答えは、手ぶくろです。
あとがきをご紹介します。

大きな満足と自信の機会

(引用はじめ)
輪を作ったり、並んだりして遊ぶのは、少なくとも2人以上の仲間が必要です。仲間がふえると楽しさも大きくなるものですが、さりとて統率された「集団あそび」で外見はよくても、各人好みやムキフムキが活かされない時が多いものです。しかし例えば地域の伝承行事やクラスの自治文化祭など、異なった個性と相違点が、真の協力と団結のくさびとなり、混成集合の成果を自分で体得し、「ヤッタ」という満足と自信は、すばらしいみのりをひとりひとりに与えてくれるものです、是非そんな機会の活用を!
(引用おわり)

2012年に小峰書店より刊行された「こどもの行事 しぜんと生活」は各月ごとの12巻のシリーズです。

2月の巻には、節分、豆まき、針供養、初午、バレンタインなどや、ツバキ、ウメの花、天神さまなどについて楽しくわかりやすく書かれています。

なかでも〈うるう年、うるうのひ〉〈2月がみじかいのはなぜ? 一週間が七日のわけ〉という項目では、徹底的にその理由を解説していますので、お子さんに説明する大人にも大変助けになります。
あとがきをご紹介します。

2月のあとがき

新旧の暦と天体のうごき

(引用はじめ)
カレンダーや学校の行事など、みな太陽暦(新暦)なのに、各地の行事の中には、旧暦やひと月遅れでおこなわれているものがあります。すべて新暦にすればいいのにという意見もあります。

むかしの人たちは、月の満ち欠けを用いて昼と夜の時間や四季の変化をたくみにはかり、まちがいのないように工夫をして、農耕や生活を実行していました。

この旧暦と新暦の関係と違いを知ることは、太陽・地球・月のうごきを正しく知る機会となります。昔の暦などと思わずに、宇宙と人間の生活をかんがえるきっかけにしましょう。
(引用おわり)

尚、本文は縦書きで漢字のすべてにふりがながあります。

かこさとしおはなしのほんは、加古がセツルメント活動でこども会を指導していた時に生まれた紙芝居をもとにしています。そのシリーズの一作目、「あおいめ くろいめ ちゃいろのめ」(1972年 偕成社)をご紹介します。

あとがき かこさとし

(引用はじめ)
半分はおせじでしょうが、この作品をみた友人が「フランスかどこかのほん訳ものかと思った」といってくれたことがありました。しかし、この作品の誕生は、ちょっと変っているのです。
いまから11年まえ、そのころはわたくしも若く、指導していた川崎の子ども会も活気にあふれていました。その子ども会の、あそんだり、お話をしたり、子ども新聞をつくったりする課目のひとつに、絵の指導がありました。

労働者の家の子らしく、あくまでたくましくてガサツな子や、どこでどうまちがって教えられたのか、決して紫をつかわない子や、絵をえがかずにわたしの背中によじのぼってくる子どもたちをあいてに、ある日の課目に「円形の色紙(いろがみ)」を取り上げたのです。わたしのねらいはつぎの三つでした。

(1) 子どもたちの手さきを、かれらの思いどおりに、自由に器用に動かせられるよう、色紙を大小の円形にハサミできること。
(2) そのきった円形を顔にしたり、目にしたりして、その配置や変化で、表情や感じがかわることを、子どもたちに体得させること。
(3) 子どもたちが、それぞれにつくった別々の顔や表情をひとつにまとめ、筋と起伏を与えることで、共通の作品を通して、おなじ喜びとなかま意識を満喫させること。

このまとめの筋につくったのが、この作品の原型で、子どもたちは自分が切ってはったいびつな目がでてくる顔に、おおいに笑ってくれたものです。したがって友人には悪いけれど 、これはしゃれたフランスの絵本なんかではなく、何をかくそう日本の労働者の街の片隅の子ども会で美術指導副産物として生まれたのが真相なのです。そのつもりで見ていただければ幸いです。
(引用おわり)

なお、本文は縦書きで漢字には全てふりがながふってあります。また、(3)の文中、なかま、という言葉には脇点(傍点)がふってあります。下は、裏表紙から。

この本にはこんな逸話があります。
10数年ほど前、アメリカから一通のファンレターが届きました。英語で書かれていて幼稚園に通う年頃の女の子からで、お父さんはアメリカ人、お母さんは日本人でかこの絵本を読んでもらい、いつか、日本語でかこ先生にお手紙をかけるようになりたいとありました。そこで、加古はたどたどしい英語の返事とともにこの「あおいめくろいめちゃいろのめ」の絵本を送りました。

そして昨年、漢字交じりの美しい文字、綺麗な日本語でその女の子から手紙が届き、大学を卒業をしたとありました。卒業式のガウンをまとった写真の彼女はちゃいろのめ、お父さんは碧眼、お母さんは黒い目でした。十数年前に加古から届いた絵本の登場人物と自分の家族構成がそっくりで、折に触れてこの本と自分の家族を重ね合わせて頑張ってきたそうです。その端正な文字と文面に感嘆、見事に日本語を習得した彼女の努力に感動し、今度は日本語で返事を書きこの本の続編「あおいめのメリーちゃん おかいもの」(2014年 偕成社)をプレゼントしたのでした。