編集室より

2022

秋の訪れ、ヒガンバナ

投稿日時 2022/09/13

虫の音、空の高さ、日暮れのはやさ・・さまざまに秋の訪れを感じますが、突然のように現れ咲くヒガンバナはまさに暑さが終わり、秋の訪れを知らせているようです。

緑の色に黄色が混じるような田の畦道を彩る鮮やかな赤い色の帯にはいつも目を奪われます。

『こどもの行事 しぜんと生活 9月のまき』(2012年小峰書店)の前扉にはヒガンバナを手にするトウジくんがいます。

『あそびずかん あきのまき』(2014年小峰書店)の表紙にも。

そして色々な遊びが紹介されています。

『地球』(1975年福音館書店)にも紅葉の山々を背に里にはヒガンバナが見えます。

『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)の「9月 化学花ごよみ・味めぐり」のコーナーでは、ヒガンバナの地下茎に有毒なリコリンがあると記されています。

この毒性がヒガンバナの秘密の1つで、たくさんの秘密が解き明かされ、びっくりするような苦しみの歴史も紹介されるのが 『ヒガンバナのひみつ』(1999年小峰書店)です。かわいらしい絵が次の秘密へといざなう、大人が読んでもためになる内容です。

ヒガンバナにはたくさんの呼称があり、地域によってさまざまで、この本の前見返しには320、後の見返しには288の名前が日本地図に書き込まれていて、その数の多さに驚かされます。かつての人々の生活の中で、ヒガンバナが身近で大きな意味を持っていた証拠なのかもしれません。

本書は2022年9月22日大分合同新聞の一面「東西南北」で、また9月23日kodomoe web「今日の絵本だより」で紹介されました。kodomoe の記事は以下でどうぞ。

Kodomoe 『ヒガンバナのひみつ』

かことの共著もあり、光触媒の発見で知られる科学者・藤嶋昭氏による『かこさとし科学絵本の世界』(2022年学研)の表紙の中央にあるのが『宇宙』(1978年福音館書店)。

ノミのジャンプから宇宙の果てまでの30場面は「知識や科学のすばらしさを、できるだけやさしく伝えたいと」(『宇宙』あとがきより)著した絵本です。

この『宇宙』は、「発達支援 プリプリ パレット 10・11月号」〈教えて!みんなのお気に入り絵本コーナー〉でも紹介されています。「絵本は発達に課題がある子も自分のペースで楽しめるもので、子どもの好きなことや得意なことに注目し、とっておきの絵本を見つけてください」とあります。

2022年9月18日福井新聞朝刊〈絵本でわかるSDGs〉コラム欄では「かこ博士、紙の実験」という見出しで『よわいかみ つよいかみ』(1980年童心社)を図書館支援活動の経験とともに紹介。SDGsの持続可能な開発目標を説明しやすいとしています。

『よわいかみ つよいかたち』は前述『かこさとし科学絵本の世界』でも取り上げ、初めて体験する「科学実験」として解説しています。

読書の秋、文学はもちろん科学絵本も是非どうぞ。

加古里子(かこさとし)

投稿日時 2022/09/17

かこさとしは中学生の頃からすでに俳句や短歌をつくっていたようです。『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社)のコラム「15歳の短歌」では秋の景色を見事に詠んだ歌を掲載しています。

伝記『かこさとし 遊びと絵本で子どもの未来を』(2021年あかね書房)の著者でもある鈴木愛一郎による解説には「15歳の少年の季節感と文学的センスに驚かされると同時に、長らく未発表であったが昨年出版された『秋』(2021年講談社)という作品に描かれた題材が登場する点にも注目したい。」とあります。

高校の時に俳人の中村草田男先生に国語を教わったこともあり、本名の哲(さとし)から里子という俳号を自分で作り、これがのちのペンネームになりました。

手書きで、自ら美しく綴じた詩歌集や「眼鏡男の句」と書かれた古いノートが残されています。

ところで、この度開設した公式Twitter、皆様のおメガネにかなうよう発信して参りますのでお楽しみください。

ワクワク経験 世代を超えて

2022年8月13日の本欄でもメディア情報(動画)としてお伝えした越前市武生中央公園のリニューアルについての記事です。
8月から徐々にリニューアルされたものが供用されていて、今月25日には新たな設備もお披露目の予定です。
以下でお読みください。

福井 武生中央公園リニューアル

かこは、20代半ばからおよそ20年間川崎でセツルメント活動をいうボランティア活動をして子どもたちと毎日曜日を過ごしました。その折、川崎セツルメントのシンボルマークを作ったったのですが、それは黄緑色の地に白い1つの星で、「自ら輝く星になれ」の意味を込めていました。自ら輝く星、恒星について書いているのが『よあけ ゆうやけ にじやオーロラ』(2005年農文協)のあとがきです。

あとがき

(引用はじめ)
地球上のすべての生物は、太陽の光や熱などのめぐみをうけて生きていますが、この太陽のように自分でひかりかがやいている天体を恒星をよんでいます。上の図に示した北斗七星など、夜空の星もほとんど恒星で、太陽もその1つです。

幸いにも地球の近くに太陽があるので、その熱が伝わってきますが、とおくにある北斗七星からは熱が伝わってこないので「つめたく光っている」などど言われます。どうぞ太陽のさまざまなようすを知ることから、夜空にたくさん恒星があること、そして宇宙という大自然の美しさを、伝えていただきたいと思っています。
(引用おわり)
なお、本文の漢字には全てふりがながあります。

「秋は夕暮れ。」夕焼けの美しさを味わって、是非本書もお楽しみください

台風シーズンです。渦巻く風とは、台風や竜巻のことで、どうしてそのようなものになるのかをわかりやすく図を駆使して伝えます。

あとがきをご紹介しましょう。

あとがき

(引用はじめ)
空気は、地球上の大部分の生きものにとってとても大切なものなのに、無色透明で、形も重さも感じられないので、その存在を気にせずくらしています。その姿のない空気を気づかせてくれるのは、風の動きです。

かぜによって空気というものの存在を知り、その空気の大事なこと、植物が長い年月かけてようやくこの空気をためてきたことなど、地球や自然をよく知り、その空気を汚したりせぬよう、大切に守るよう願って、この巻を作りました。
(引用おわり)
漢字には全てふりがながあります。

植物によって地球にもたらされた空気です。森林火災や乱開発、異常気象による砂漠化など心配なニュースが後を絶ちません。もし植物がなくなってしまったら。。。?

本書が年齢に応じて、こういったことを考えるきっかけになることを著者は願っていたに違いありません。

尚、2022年9月に新装版が出版されます。

ニュースによると2022年6月29日の午前8時は1.59ミリ秒はやくやってきたそうです。それは人類が1960年代に原子時計で地球の自転速度を測定し始めて以来、もっとも短い1日だったことを意味するとのこと。

地球の自転、公転、銀河、宇宙のことを小さなお子さんにもわかるように、やさしく、全てひらがなで説明している科学絵本のあとがきをご紹介します。

あとがき

(引用はじめ)
朝、太陽が東から出て、夕方西に沈む。星は東から西へと夜空を回る。地球から見るとこうした様子から、大昔の人たちは、宇宙の姿を思い、地球のまわりを、天にある星が回っていると考えました。「天動説」はその当時のすすんだ考え方でした。

しかし、その後科学が発達し、動いているのは地球であることがわかってきた今でも、小学生の4割が「天動説」と思っているとのことです。

自分の立場だけでなく、他の場から自分の姿を見つめることは「自立」のために、とても大切なことで、大人の方はご自身はもちろん、ぜひ小さい読者にも、このことを教え、導いていただきたく、この巻をつくりました。
(引用おわり)
漢字には全てひらがながふってあります。


ただいま渋谷Bunkamuraで公開中の生命図譜作成の意図に通じる思いがこのあとがきからも伝わってきます。人間という生き物を地球そして宇宙というスケールで見ることの大切さを、空を見上げて、あるいはこの本をよみながら思っていただけたらと思います。

尚、本書は9月28日に農文協より新装版が刊行される予定です。

2017年に武生中央公園にできた「だるまちゃん広場」「コウノトリ広場」「パピプペポー広場」は今では年間110万人以上の利用者がある福井県で最も人気のある公園となっていますが、このほど「コウノトリ広場」の一部がリニューアルされ、上の2冊にちなんだ魅力的な遊具として登場しました。

百聞は一見にしかず、以下のニュース動画をご覧ください。

コウノトリ広場 NHKニュース

2022年8月13日刊県民福井でも報じられました。

日刊 県民福井

西瓜・すいか・スイカ!

投稿日時 2022/08/17

夏の果物といえば西瓜。

筆者が子どもの頃は塩をかけて食べていました。水果と書くと思い込んでいたのもその頃です。そんな光景を思い出させるのが『こどもの行事 しぜんと生活 8月のまき』(2012年小峰書店)の裏表紙です。

渋谷Bunkamuraでの展示会で展示中です。よーく見るとスイカの種が小皿の上にあります。簾に吊りシノブ、風鈴にぶたの蚊やりと昭和のような光景です。スイカの鮮やかな色を是非会場の原画でご覧ください。

スイカが登場する作品はいくつもありますが、『からすのやおやさん』(2013年偕成社)でも売られています。野菜だけでなく果物も扱うようになってと、商売の仕組みや工夫がわかる絵本です。

この絵に続く場面では、売れ行きをよくしようとリンゴさんが名案を思いつきます。その場面の原画も Bunkamuraで展示しています。

農文教の「食べごと大発見本」シリーズの第8巻『きれい果物 あまから菓子』(上)でもツヤツヤ光る大きなスイカが並んでいます。さらにそれを上回るほど大きく描かれているのがこの場面。

『あめ ゆき あられ くものいろいろ』(2012年農文教)という科学絵本で、なぜ気象の話にスイカが登場するのかというと、本文には次のようにあります。

(引用はじめ)
くもの なかの ちいさな みずの つぶを 「すいかの たね」のおおきさに すると、
おちてくる あめの ひとつぶは「すいか」ほどの おおきさに なる。
(引用おわり)
雨粒がスイカの大きさだとすると、水蒸気はスイカの種ほどの大きさという比較。なるほどこれなら、小さいお子さんでもどれだけ水蒸気が小さいのかが想像できるでしょう。身近なものを使って説明する、かこらしい例です。

そしてスイカを話題にした算数の問題もあります!

『かこさとし あそびの大惑星7ももくりチョコレートのあそび』(1991年農文協)からの出題で、2桁の掛け算問題です。

(I引用はじめ)
おおきな すいか 3つを それぞれ はんぶんに きって、その はんぶんを 6つずつに きりました。 その きった すいかを こどもたちが ひとり ふたつずつ たべることばできました。
たげた すいかから、ひとりぶん 12この たねが できました。 さて ぜんぶで すいかの たねは
なんこ でてきたでしょうか? ゆっくり すいかを たべながら けいさいんをして ください。
(引用おわり)

【答え】
すいかは、3x2x6=36きれ、それを2切れずつ食べたのでこどもは18人
すいかの種は、12x18=216個

夏休み真っ只中。いつもとは違う遊びをしたいですね。
そんな時のヒントになる本といえば、お子さん向けの『あそびずかん なつのまき』(2014年小峰書店)が紹介されました。
以下でどうぞ。

あそびずかんなつのまき

この本のあとがきをご紹介します。

あとがき

夏は子どもにとって、窮屈な衣服から解放され、自由に行動できるときです。ちょうじかんの直射日光に注意しながら、全身の遊びができるよう配慮していただくとすばらしいせいちょうの季節となるでしょう。

また、海山や郷里などへの旅行の折、いつもの遊び仲間ではない、年齢や言葉や風習の違う出会いがあるかもしれません。こうした種々な交流や経験は、未来に生きる子どものすばらしい糧となります。そうした機会のため、夏の遊びをおおいに活用されるようおすすめいたします。

(本文の漢字には全てかながふってあります。)

コロナ禍で遠くまで出かけるのが難しいのですが、いつもの公園で、おうちキャンプで、新しい遊びに挑戦するのはいかがでしょうか。

この本の中に入って空想虫取りとか、空想バードウオッチングなんていうのは?絵描きじゃんけんも面白いですよ。存分にお楽しみください。