こぼれ話

2023/05/27

百人一首の日

5月27日は百人一首の日だそうです。
わたしたちになじみのある小倉百人一首が藤原定家よって完成されたのが、1235年のこの日だそうですから、今から一千年近く前のことになります。

筆者は中学校の冬休みの宿題で百首を覚え、年明けの学年かるた大会にそなえました。小学生の頃に家でぼうずめくりなどして遊んでいましたので、馴染みがあり家族を巻き込んで、上の句を言ってもらい、あとに下の句を続けたりして暗唱していました。

かこが高校一年生の時の国語の先生が俳人の中村草田男氏で「源氏物語」をならったそうです。草田男先生が 女房ことばなどを口にされ、楽しかったと後年大変懐かしそうに話しておりました。

『かこさとしあそびの大星雲8 いまはむかし れきしのあそびー東西の偉人、古今の事件ー』(1993年農文協)には、「平安のすぐれたおんなのひとたち」と題し、紫式部、清少納言、和泉式部、藤原道綱母など六人の女性が古今和歌集をつくった紀貫之とともに紹介され、代表的な和歌もかかれています。

和泉式部の娘、小式部内侍(こしきぶのないし)の「〽︎おおえやま いくのの みちの とおければ まだ ふみもみず あまの はしだて」のうたが口に出していると調子が良く好きだったことを思いだします。

紫式部は国司の仕事でやってきた父と共に、かこの生まれ故郷、現在の福井県越前市で一年ほど暮らしたことがあったそうです。「〽︎ めぐりあいて みしや それともわかぬまに くもがくれにし よわのつきかな」

千年も前の人々の心持ちが今に伝わる百人一首です。

かこさとし、と現在では多くの著作にひらがなで表記されていますが、デビュー当時は、漢字で加古里子と記していました。

この里子という漢字はもともとは高校時代、国語を俳人の中村草田男先生に教えていただいたこともあり俳句を作る際に、虚子や秋桜子にならって哲(さとし)という本名を三斗子と書いていたのを二文字にしたのが始まりです。

実は加古は漢詩の時の名前など、他にもいくつかの名前を使い分けていました。それはさておき、この漢字表記は「さとこ」とも読めるので、会社に勤務しながら著述活動をしていることは、隠していたわけではありませんし、女性に間違われることを意図したわけでもありませんでしたが、何かと便利だったと後年笑って語っておりました。

絵本を読んでくださる小さなお子さんたちにも読めるようにとのことで、漢字ではなくひらがな表記で本にも印刷するようになりました。当サイトの最初のスライドにあるようなサインで、高速でできるのでサイン会で大勢の皆様のリクエストにおこたえできたようです。

下の写真は出来上がったばかりの『しろいやさしいぞうのはなし』(2016年復刊ドットコム)にサインを入れているところです。

本サイトのスライド画像は『それゆけ がんばれ われらの楽団』(1995年 全国心身障害児福祉財団)からです。このジャンボ絵本は一般販売を目的としたものではなく、福祉施設への寄贈用として1995年に作成されました。

楽器を持つこどもたちに次々と動物が加わり、時空を超えて楽団が演奏を続けます。大きな絵本型の紙による芝居という形式で、CDによるセリフ、音楽もあり大変盛り上がる作品です。絵のみですが、色合いの変化、登場人物が増えてゆく過程、壮大な結末をお楽しみください。

藤沢市本庁舎1階のホールに、かこの絵を季節ごとに掛け替えご覧いただけるようになっています。

来年は卯年ということで、現在は『だるまちゃんとうさぎちゃん』の表紙、裏表紙の絵です。本の絵より大きく描かれた原画サイズのままです。

お近くにお越しの際は是非ご覧ください。

武生中央公園の「だるまちゃん広場」のトランポリンや「からすの風車塔」(下)はいつでも賑わっていますが、雨や雪の時には使えません。

冬にはしぐれることが多い土地柄なので2019年武生駅前の商業施設の3階に「てんぐちゃん広場」が設置されました。天候を気にせず遊べるので特に小さいお子さんや見守る方に優しく、季節や時間帯を問わず利用されています。

入り口には、『たっくん ひろちゃんのちょうちょうとっきゅう』(小峰書店)に出てくる列車が置いてあります。このコーナーには絵本もあり、ゆっくり読んでいる大人の姿も見かけられます。

広い壁面を利用してボルダリング。左から右に行くほど難易度が高くなります。

一番左は加古が幼い時に遊んだ村国山、その後ろに日野山が描かれ、だるまちゃんたちが歩くこの絵は「未来への行進」と名づけられています。文春文庫『だるまちゃんの思い出し遊びの四季カッコの表紙でご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

ヨーロッパのアルプス、ヒマラヤの山脈は『せかいあちこち ちきゅうたんけん』(2005年農文協)からです。

同本の絵とともに、世界の時刻を知ることができる場所もあります。

通路を挟んで2つのエリアがあり、どちらも靴を脱いで遊びますが、こちらの「どんどこどんのおへや」は身体を使って遊ぶゾーンで自分がこまになって遊ぶすごろくもあります。

通路の反対側にある「101ちゃんのおへや」は加古の絵本の世界のイメージでおままごとをしたり、手先を使う遊びができるように整えられています。

手洗いも設置、その正面には『あめ ゆき あられ くものいろいろ』(2022年農文教協)から、水のことについてのパネルがあって、お子さんに説明するのに役立ちそうです。

越前市に行かれたら、ご利用、見学されてはいかがでしょうか。

てんぐちゃん広場の最新情報は以下でご覧ください。

てんぐちゃん広場

昨夜の月食、しばしの天体ショーは幻想的でした。この写真はかこの書斎前で撮影しました。

科学絵本でご紹介する月ではなく、思わずにっこりしてしまう月が描かれているのが、2022年12月号コドモエで紹介された『うさぎのパンやさんのいちにち』です。 

この物語はパンやさんを舞台に朝早くから夜遅くまで、パンの製造・販売とその準備や後片付けなどの様子が手にとるようにわかり、小さなお子さんが流通について知るきっかけにもなります。

その上、かわいいうさぎさんたちが大勢登場、世界各地のパンが驚くほどたくさん並び、見ているだけで嬉しくなって口元がゆるみます。

忙しい一日を終えたパンやさん、外には月が出ています。
よーく見るとお餅つきではなく、パンを持っています。

お店の外の夜空には、これまた愉快な美味しそうな星がまたたいているのでした。

年々、クリスマスケーキやおせち料理の予約時期が早くなるような気がします。
急かされるような気持ちと年に一度の嬉しい季節を想像する楽しみが入り混じります。

2023年は卯年ということで『だるまちゃんとうさぎちゃん』(1972年福音館書店)が大活躍しそうな予感。

一昨年の発売から大好評の卓上カレンダーには『だるまちゃんとうさぎちゃん』のかわいい絵、そして裏面には、『かこさとし あそびずかん』(全4巻・小峰書店)から楽しい遊びの紹介もあります。

郵便局の年賀状にも登場しています。以下でどうぞ。

郵便局 年賀状

年賀状

『からすのパンやさん』一家ファミリーカレンダーももちろんあります!

毎日5つの欄があってご家族5人分の予定が書き込めるようになっています。ペットの予定も入れたり、お一人で5つの欄を時間帯ごとに区切って使われたり、あるいはお仕事、趣味など項目別に使われたりとスペースを活かした使い方ができ、毎年好評です。

『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社)などでご紹介している、かことミロのビーナス像の写真。当時かこは高校生で、このミロのビーナス像は現在でも成蹊学園史料館にあるそうです。

成蹊学園サステナビリティ教育研究センター・リレーコラム(第37回)で「加古里子さんとミロのビーナス」と題して、そのビーナス像とかこについて詳しく紹介されました。

上の写真の左側緑色のものは大学生の時、かこがミロのビーナスを版画にして刷ったもので、群馬県立館林美術館で開催中の「かこさとしの世界」展で展示しています。また、『すばらしい彫刻』(1989年偕成社・下)の制作のための下絵・資料も同展示会でご覧いただけます。

リレーコラムは以下でどうぞ。

かこさとしとミロのビーナス

2022/10/03

虫干し・曝書

空気が乾いてきて爽やかなこの季節、こんな晴天は虫干しにピッタリです。

写真をよーくご覧いただくとトンボが電線に止まっていて、まさに虫干し!?

虫干しとは本来、着物や本などをカビやムシから守るために空気に曝すこと。図書館などでは殺菌消毒の装置がありますが、高温多湿の日本では昔から風通しの良い日陰で昼間の時間に行います。

曝書(ばくしょ)は夏の季語だそうですが、暑くもなく寒くもない今頃は本だけでなく人間も気持ちの良い空気の中で過ごしたいと思います。

さて、写真の赤トンボはわずかしか写っていませんが、実はたくさんが群れ飛んでいて『とんぼのうんどうかい』さながらの様子に、平和な秋をしみじみ感じるひとときでした。

この3冊に共通するのはいずれも世界遺産に登録されているものをテーマにしている点です。ピラミッドは1979年、万里の長城は1987年、奈良の大仏は1998年に世界文化遺産に認定されましたが、かこは世界遺産だからという理由だけで取り上げたのではありません。

地球誕生から始まる『万里の長城』(2011年福音館書店)には壮大な人間の歴史が写しだされていますし、20代の頃から興味を持ち人形劇の脚本を書いたピラミッドについては歴史のみならず建設の技法にも触れ日本科学読物賞を受賞しました。

特に『ならの大仏さま』(1985年福音館・後に復刊ドットコム)は世界遺産認定のずっと以前から研究しその建立にまつわる人間模様、土木技術とそれに携わった人々の苦心にも言及。歴史、科学のみならず心や宗教ということをも含む総合的な視点からの科学絵本です。化学者としての塗金についての解説は土木学会誌に発表したほどの専門的な検証によるものです。

『太陽と光しょくばいものがたり』(2010年偕成社・下)の共著者でもあり光触媒の発見者である藤嶋昭先生による、この3冊とかことの思い出が「学士会会報」No956(最新号)随想「加古里子先生の世界遺産の本に感動して」として掲載されています。