昭和時代、暑中お見舞の図柄によく登場したのは、朝顔、うちわ、風鈴、そして金魚と、目にも涼やかなものばかりでした。
金魚といえば、お祭りの金魚すくいで持ち帰ったり、それこそ金魚売りがきていた地域もあったことでしょう。
かこ作品で金魚をめぐる面白い絵が『おおきいちょうちん ちいさいちょうちん』(1976年福音館書店)にあります。この本は反対言葉の意味を絵で見てわかるように構成されています。
例えば、上は「なか・そと」。「ふえる・へる」では、小さな子がストローで花瓶の水をのむ「へる」に対して「ふえる」は下の絵です。金魚がユーモアを添えています。
クイズあそびもあります。
『かこさとし あそびの本1 かわいいみんなのあそび』(2013年復刊ドットコム)にある【さかなはなんびき】は、魚といっても金魚のようです。この本はもともとは1970年に刊行されたものですが、金魚鉢というと真ん中にあるこの形を思いおこします。
『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)の8月にも下のような絵がそえられています。
お子さん向けの科学絵本『すって はいて よいくうき』(1977年童心社)の表紙にも立派な金魚がいます。
本文で、金魚も水にとけた空気を取り入れようとして、口をパクパクするのだと説明があります。
昭和50年にかかれた『こどものカレンダー8月のまき』(1975年偕成社)には金魚すくいに、金魚の4コマ漫画4連作、折り紙で金魚のつくり方(下)が紹介されています。
「いろいろな かおや うろこのきんぎょを」自分で描きいれつるして「モビールにするととても涼しく、きれいです」と【おうちのかたへ】アドバイスしています。
下は同じく『こどものカレンダー』の絵ですが、金魚すくいの様子は『とこちゃんはどこ』(1970年福音館書店)の秋の「おみやさんのおまつり」の場面にもあります。
かこにとって絵かき遊びの「金魚」との出会いは衝撃的だったようです。
『絵本への道』(1999年福音館書店)では以下のような図とともに子どもたちが描くキンギョの多様性を紹介しています。
『伝承遊び考』4巻の第1巻『絵かき遊び考』(2006年小峰書店)第1章で「ことのはじまり」として語っているのがこの「キンギョのとりこ」になった顛末です。
セツルメント活動をしていた、川崎の子どもが口ずさみながら線や図形を描いてキンギョの絵が出来上がる一連の絵かき遊び。それには対句をなした言葉、韻をふみユーモアがあふれていることに、かこは喜び感嘆し「奥知れぬ遊びの世界を彷徨させる端緒となった。」と書いています。
残念ながら1970年頃から急にこの「キンギョ」の絵かき遊びは収集できない状況、つまり、子どもたちに描かれなくなったのでした。今残っている絵かき遊びは、てるてる坊主にもかかれる「へのへのもへじ」くらいでしょうか。
『かこさとし あそびずかん なつのまき』(2014年小峰書店)にも「きんぎょちゃん」としてこのえかきあそびをのせています。
たかがキンギョ、されどキンギョ。筆者はかこが迷調子で歌いながらこのキンギョをテレビや講演で紹介していたの思い出しますが、皆さんはキンギョの絵かき遊びをされた記憶がおありですか。
最後にクイズです。金魚や鯉を飼う池が描かれているこの絵はどの本にあるでしょうか。