2021

もちろん「うどん」という植物はありませんので「うどん」の花はないわけですが、うどんは何から作られているのかに興味を持っていただこうというのが、この題名が意図するところです。この本は文のみかこで、前がきにあたる[この本のねらい]には次のようにあります。

(引用はじめ)
「めん類」を描いたこの巻は、食物シリーズの中でも異色の1冊でしょう。
幼い子供は、発達の度合いに応じた合理性と系統性を求めます。草は草色、土は土色と知ると、なぜ水は水色ではなく無色か知りたがります。そばはそばの花からみのると知ると、うどんはうどんの花からできると類推します。こうした疑問や合理性を大事にしながら、おいしさへの関心と正しい知恵がぐんぐん麺類のように伸びて欲しいと作られたのが、この絵本です。
(引用おわり)
それでは、あとがきのご紹介です。これは小さな読者も読めるように全てひらがなで分かち書きとなっています。

あとがき

(引用はじめ)
「めんるい」だけを かいた こどもの ほんは この えほんが はじめてでしょう。
なぜ かいたの?ときかれれば こどもたちが だいすきだからです。 
どうして すきなの?といえば つるつる たべやすいからです。
どうしておいしいの?とたずねられれば おねだりして こんばんの しょくじを「めんるい」に してもらって たべて みれば わかることでしょう。
どうか ためして みてくださいね。
(引用おわり)

そんな訳でうどんが食べたくなったけれど、レシピに困ったら、麺類なんでもおまかせの『からすのそばやさん』(2014年偕成社・上下)にご相談ください。色々ありますよ。ゆうやけうどん、まよなかうどん、みけねこうどん、わんわんうどん、ごちそううどん・・・寒い時には暖かいものが嬉しいですね。

2021/01/07

オーロラ

オーロラという言葉が神秘的に感じられるのは、その光と色が幻想的な上に、宇宙で起きる現象だからでしょうか。 

日本の空では、北海道の一部を除いてなかなか見られませんが、本の中で眺めてみましょう。

宇宙のことですから『宇宙』(1978年福音館書店)で確認すると、30ページ(上)、地球の極の上空にオーロラが描かれています。その原因については38ページに次のように説明されています。
(引用はじめ)
ときどき たいように ばくはつや じきのみだれが おこると バースト とよぶ つよい でんぱや たくさんの りゅうしが あたりに とびちります。そのみだれや りゅうしが ちきゅうに そそぐとき じきあらしとなって つうしんの じゃまをしたり うつくしいオーロラの もとにになったりします。
(引用おわり)

題名にズバリ、オーロラとある『よあけ ゆうやけ にじやオーロラ』(2005年農文協)では、太陽の光と熱に関して、太陽や月のかさ、陽炎や逃げ水、蜃気楼、そして後ろ見返しではブロッケンの輪、反射虹についてもふれています。

そして、さらに太陽の出す電気を帯びた粒による不思議な現象としてオーロラを「たいようかぜと くうきが けいこうランプのように きれいな ひかりを つくったもの」と、紹介しています。

オーロラを背景に物語のクライマックスがおとずれるのは、『サン・サン・サンタ ひみつきち』(2019年白泉社)です。クリスマスのお話でしょ?と思われるかもしれませんが、お話の前半は、クリスマスのために長い時間をかけて氷の下で進む、秘密の作業が次第に明らかになって、きっと目が釘付けになります。そしてオーロラの出現とともに隠れていたものの姿が次々あらわれます。

科学絵本であれ、ファンタジーであれ、オーロラは私たちの心をひきつけることに変わりありません。

2021/01/01

丑、牛、うし

明けましておめでとうございます。
年頭恒例の干支探し、丑年にちなんで牛を見つけましょう。
なんといってもまず第一にあげられるのは『だるまちゃんとてんじんちゃん』(2006年福音館書店)の黒い牛です。上は表紙です。てんじんちゃんは、学問の神様、菅原道真公のことで受験生の合格祈願を込めてこの絵からはじめます。

藤沢市役所1階ホールに新年仕事始めの日から展示するのもこの一枚です。お近くの方は是非ご覧ください。

菅原道真公は845年、丑年の生まれ、亡くなった時に公を運んだ牛が動かなくなってしまったこともあり、爾来、牛は天神様のお使いと信じられているようです。

絵本では「てんじんちゃん」のお手伝いで「だるまちゃん」も牛の世話をしています。

紙芝居に『かわいいモウちゃん』という作品があり、まさしく牛が保育園に通うというかわいいお話です。
牧場に牛がいる絵は『地球』(1975年福音館書店)にもあります。

『あそびの大事典 大宇宙編』(2015年農文協)〈パート3 しかくまぶたちゃんのあそび〉は、〔遊びのどうぶつ大行進〕とあるように、色々な種類の動物による楽しい遊びの紹介があり、{うしさんのあそび}は、「もーいいかい」「もーいいよー」のかくれんぼです。絵の中に隠れている牛の数は何匹でしょうか。

おうし座にはアルデバランという星があり「冬の六角形」の一つであると『子どもの行事しぜんと生活12がつのまき』(2012年小峰書店)や『ふゆのほし』(1985年偕成社)に紹介されています。

七夕祭りの彦星、牽牛の絵が『かこさとし お話こんにちは7月の巻』(1979年偕成社・下)にあります。

牛の文字がつく名前で思いうかぶのが「牛若丸」。『かにちゃんオーエス かめちゃん オーエス』(2007年全国心身障害児福祉財団)というジャンボ絵本では牛若丸が弁慶と現れて、綱引きで力を貸します。

難しい名前ですが僧侶の鞭牛(べんぎゅう)は江戸時代、南部藩大飢饉を目の当たりにし、食料を運搬するには道が必要と自らツルハシをふるって工事にあたりました。『土木の歴史絵本第1巻 くらしをまもり工事を行ったお坊さんたち』(2004年瑞雲舎)でご紹介しています。現在盛岡市民文化ホールで開催中の全国巡回展「かこさとしの世界展」(2021年1月31日まで開催)の会場で原画を展示しています。

郷土玩具の中にも牛がかたどられたものがあるようですが、お正月にお家で楽しみたい『だるまちゃん すごろく』(2016年福音館書店)には、茨城の「わらうし」と福島の「あかべこ」が登場しています。

2021年の干支さがしはすごろくの場面で上がりです。
本年が皆様にとって佳き一年となりますようご祈年申し上げます。