メディア情報

(1988年童心社) 文かこさとし /絵やべみつのり

一見したところ、木や石、鉄に見えるものがプラスチック製品、ということがよくあります。物の材質を見極めるにはどんな方法があるのか、確かめてみるという科学的な内容のこの絵本は1969年に出版され、現在は新版がでていて2021年4月18日中日新聞で紹介されました。

なんだか ぼくには わかったぞ

この本のあとがきをどうぞ。

あとがき

(引用はじめ)
この本にかいてあることは、材料として、木や石や鉄などがあるというものではありません。
くまちゃんが、木でできていることを、本に書いてあるより先にあてさせることが目的でもありません。
まして水にうくのが何で、沈むのが何、次に燃えるのが何でーーということを暗記させることでもありません。
もっと単純で、もっとおく底の、もっと基本的なものーー科学としての考え方、科学としての態度、科学のすじみちを大事にしたいと念じます。
この本では、物質をしるため、その性質を一つ一つ分け、検討し、それらをまとめるという帰納法の推論と総合判断がとられています。
科学の研究が進み、専門が分化していく現在、こまやかな知識の断片ではなく、ばらばらのこまやかな要素を、広い目で見つめながら集積して、対象の全体像や物事の実体に迫ろうとする態度や考え方がますます大切になっています。
この本もそうした「かがくのほん」でありたいと思ってつくりました。
かこ・さとし
(引用おわり)

2021年2月26日〜4月11日福井県ふるさと文学館 加古里子特集展 宇宙とどうぐ

ナビや通信など人工衛星のお世話になっていることを忘れるほど現在では当たり前のことですが、世界初の人工衛星打ち上げは1957年、日本の国産衛星の成功は1970年でした。
半世紀を経た現在、宇宙にある衛星の数は8000以上とも言われ、各国が競って打ち上げをしていた頃を知っている筆者にとっては、その数の多さとその半数以上が機能を停止している宇宙ゴミの状態ということに驚かざるをえません。

最近は宇宙ゴミにならないよう、燃え尽きる木製の衛星打ち上げも計画されているとか。そしてこの3月には福井県が日本初の県民衛星を打ち上げます。それに因んだ展示「福井県民衛星打ち上げ記念 加古里子特集展 宇宙と道具」が福井県ふるさと文学館で始まりました。

その模様がNHK福井で放映されました。以下でどうぞ。

人工衛星

衛星といっても地球を周回するものから、探索のため他の星に向かうものなど様々ですが、かこ作品ではどんな本に登場するのか見てみましょう。

『できるまで とどくまで 通信衛星』(1979年みずうみ書房・上)よると 初期の衛星の寿命は2年もなく、アポロ11号の月面着陸を中継したインテレサット3号の寿命は5年間でした。この本の最後には次のように書かれています。
(引用はじめ)
これからも、通信衛星は世界をむすぶ”塔のないアンテナ”として、宇宙に浮かぶ電波の中継基地として、ますます活躍することでしょう。
(引用おわり)

この時代は、各家庭ではテレビのアンテナを屋根の上に立てて電波を受信していました。そして現在は通信衛星や気象衛星にとどまらず、軍事衛星や科学衛星も地球の周りを回っています。

球形である地球の裏側の人や物が落ちてしまわない理由は引力があるからで、その引力のおかげで地球の近くであれば宇宙でも地球の周りを回って落ちることがないのです。ユーモラスな絵(上)とともに説明しているのは『あさよる、「なつふゆ ちきゅうはまわる』(2005年農文協)です。

『遊びの大星雲 1ひみつのなぞときあそび』(1992年農文協・上)〈じんこうえいせいのひみつ〉には、
「どんな おもい ものでも 1びょうで7、8キロ すすむ はやさで なげだすといつまでも ちきゅうの まわりを まわりつづけます。(くうきや ほかの ほしの えいきょうが ないようにしないといけません。)」
とあります。

さらに詳しい説明があるのは『宇宙』(1978年福音館書店・下)のこの場面。左上に小さく見えるのは宇宙船回収グライダー(アメリカ・1964年)で、左下方が世界最初の人工衛星スプートニク1号です。

人工衛星が地球を回る速度をさらにあげると、「じゅうりょくの ひっぱるちからを ふりきって、ちきゅうを はなれ、もっととおくへ とんで」ゆき、他の星の周りをまわって観測することができるようになります。『宇宙』の話はまだまだ続きますが、人工衛星の追跡はこの辺でおわりといたします。
肉眼でも見ることができる人工衛星。宇宙からこの地球を見下ろしたらどんなことを感じるのでしょうか。

*福井県民衛星は2021年3月22日に無事打ち上げ成功したそうです。

かこさとしがなくなる直前まで手がけたのは『みずとはなんじゃ?』(2018年小峰書店)でしたが、絵を完成させることはできず、かこの下絵を元に鈴木まもるさんに絵を描いていただきました。

文・絵ともに、かこが手がけた最晩年の本が、この『コウノトリのコウちゃん』(2017年小峰書店)です。生まれ故郷の福井県越前市で取り組んでいた、コウノトリを呼び戻す活動を支援するため、執筆の数年前に実際の場所を訪れ遠くからではありましたがコウノトリを見、担当の方から直接説明もしていただきました。

この本が完成した時点ではまだ繁殖がうまくいきませんでしたが、その後、まるでこの本の内容と同じようにヒナが生まれ元気に巣立ちました。この本から名前をつけられたコウノトリもいます。

読み聞かせをYouTubeでお楽しみいただけます。以下でどうぞ。

コウノトリのコウちゃん

朗読者さんへのインタビューは以下で。この最後には、絵本の舞台となった越前市のコウノトリの動画とかこさとしのインタビューへのリンクもあります。

インタビュー

盛岡市民文化ホールでの『かこさとしの世界展』は、おかげ様で好評のうちに終了となりましたが、公式図録『かこさとしの世界』(2019年平凡社)は全国の書店、ネットでも購入できます。

その全167ページには、出版された本の紹介のほかにデビュー前の絵画作品や貴重な写真、本の下絵、資料など紙上初公開のものも含め盛り沢山です。読み物としても面白いと書評が以下に掲載されています。

かこさとしの世界

2021年1月8日中日新聞(北陸)「かが人私文庫」で『とこちゃんはどこ』紹介

この図録でもご紹介している『とこちゃんはどこ』(1970年福音館書店)の書評が掲載されました。大勢の中からとこちゃんを探し出す楽しみ、絵本で是非どうぞ。

かこのデビュー作は『だむのおじさんたち』(1959年福音館書店・上)です。当時、日本は電力不足で佐久間ダムの建設が進められている最中でした。取材に行くことはできず何回も記録映画を見て、建設の様子を探ったとかこは語っていました。それから約30年経ったある日、読者からのお手紙でインドネシアで大きなダム建設が始まっていることを知りました。

『絵本への道』(1999年福音館書店)によると
(引用はじめ)
『だむのおじさんたち』のテーマは、建設と生活、科学技術と自然とを、対立するものでなく、渾然として調和させて描くことでした。昭和30年代はそれがまだ可能の時代だったのだけれど、その後の社会情勢は矛盾と問題を生み出すようになり、今の日本では限界となりました『ダムを作ったお父さんたち』の出版に際しては、向こうの人々のダムに対する対処の雰囲気を確かめたかったのです。
(引用おわり)
そこで、現地に赴き、当時のインドネシアは30年前の日本同様であることがわかり、執筆に取り掛かりました。

この現地取材でお世話になった方々が、かこの訃報に接し、福井県越前市のふるさと絵本館を訪ねてくださり、その思い出を色々と語ってくださったそうです。そういったことが2020年9月26日、日刊福井新聞に連載されている「絵本のまほう かこさんから子供たちへ⑥科学絵本の凄さ」で谷出千代子絵本館館長により紹介されました。

前扉のカバーには次のような説明があります。
(引用はじめ)
この本の舞台となったチラタ水力発電所は、1983年12月に着工され、約5年後の1988年9月に完成しました。貯水量約22億立方メートル(22億トン)、十和田湖より20%も大きい、64キロメートルの湖が出現する巨大なダムです。最盛時には、5000人もの人々が働いた、現在のピラミッド建設とも言える、スケールの大きな工事です。技術的にも、世界じゅうの関係者から注目されました。

総予算6億ドル、世界銀行の融資による国際的なプロジェクトで、日本からは約300人の技術者が参加しました。この本は、ダムと、発電所となる巨大な地下空洞を担当した大成建設の多大な協力を得て作成されました。
(引用おわり)


それでは、あとがきをお読みください。

あとがき

(引用はじめ)
この絵本は、インドネシア・チラタに建設された、水力発電用のダムとトンネルのようすを描いたものです。

わたしはかつて1959年、当時の日本のダム建設をテーマにした絵本を作ったことがあります。その本は残念ながら、経済・社会の変化により絶版となりましたが、アメリカのTVA(テネシー川流域開発公社)などに見るように、国の発展や地域の復興上、水力による発電は人類の基幹技術・基本事業として、今後も消えることがないというのが筆者の考えでした。そのような場と機会を求めていたところ、読者の方から、地球規模の大きな計画が、国際協力と言う新しい理想的な姿で実施されているのを教えていただき、勇躍したわたしに、関係部所の誠実で温かい理解と、取材のためのあらゆる便宜が与えられ、30年ぶりに取り組んだと言うわけです。

ようやくまとめることができた今、それらの方がたと、現地で奮闘された各国の人々に、この絵本を捧げたいと思います。それらの人の労働の大きさ、協力の美しさ、信頼の尊さを子どもたちに伝えたいと願います。
(引用おわり)
漢字にはすべてふりがながあります。

このダム竣工30周年の2018年7月、建設に当たった日本の方々が現地を訪れたそうです。この時、かこはすでに他界していましたが、イドネシアの電力を支えるこのダムの現在を知ったら、どんなにか喜んだことでしょう。

ラジオ深夜便 人生のみちしるべ “生きる力”は子どもたちから かこさとし

2016年5月11日に放送された「ラジオ深夜便」のインタビュー2回分が、放送ライブラリーで公開されました。横浜新情報センター8階視聴ホールで無料で聴くことができます。詳しくは以下でどうぞ。

放送ライブラリー

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第7(最終)回は、『こどもの行事しぜんと生活』(2011年小峰書店)について。

かこが『日本伝承の遊び読本』(1962年福音館書店)を書いたのはまだサラリーマンであった頃です。セツルメント活動で川崎の子どもたちと接し、子どもたちがあそんでいる石蹴りや絵かき遊びの多様性、柔軟性、創造性に目を見張り子どもたちが持っているすばらしい力に気づきました

各地で遊びを収集、29万点の資料を系統別に分類、そこには科学者としての視点と絵かき遊びの言葉の素晴らしさに感嘆する文学の心がありました。

『こどもの行事しぜんと生活』12巻では、月ごとに全国そして各地に伝わる行事にこめられた、先人たちのこどもの健やかな成長や生活の安心を願う祈りと知恵をわかりやすくひもといています。このような時代だからこそ、もう一度長い間伝えられてきた思いを探り、未来へ向けて考えるヒントにしたいものです。

展示会では、『伝承遊び考』4巻(小峰書店)の膨大な資料の一部、『こどもの行事しぜんと生活』12巻の表紙を全てご覧ただけます。お楽しみください。

みんなこどもから教わった

『人間』至上主義排し歴史追求

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第6回目は、『人間』(1995年 福音館書店)について。

『かわ』(1962年)『海』(1969年)『地球』(1975年)『宇宙』(1978年)に続く科学絵本シリーズの総合ともいうべき本作品の制作にはおよそ17年の歳月がかりました。生き物としての人間、社会や歴史、文化の面を「科学という知の力」を借り、「人間至上主義を排し」て描いたと、あとがきにあります。

下の絵は最後から2番めの場面「死の恐れと悲しみをこえて」。
人間が遭遇するであろう身体的苦しみ、症状や病名、そして命が尽きると起こる症状にまで言及しています。

この場面上部には、生命誕生以来およそ40億年ずっと私たちにひきつがれている「生命の設計書」が描きかれています。そして最後の場面には「150億年の宇宙、46億年の地球の歴史を秘めている人間」と「母なる地球の海水をたたえている人体」がいて、記事でも引用されている次のような言葉で終わります。
(引用はじめ)
このように、その細胞や脳や体や心に、宇宙・世界・地球の、歴史と現在と未来とをやどしているのが人間です。
その人間のひとりがあなたです。
そのすばらしい人間が、君なのです。
(引用おわり)

『人間』のあとがき全文は当サイトの【編集室より】の「あとがきから」(2020年3月)にあります。

愛媛県歴史文化博物館の展示では、この絵の他にも『人間』の複製画をご覧いただけます。

以下で『人間』などを展示している会場の様子をご覧ください。

「かこさとし絵本展」は子どもたちへのメッセージ

みんなこどもから教わった

数奇な運命 歴史も表現

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第5回目は『ならの大仏さま』(1985年福音館書店/2006年復刊ドットコム)についてです。

かこは、東大寺の大仏について日本では小学校でも中学校でも習うけれど、本質的なことが伝わっていないと嘆くように申しておりました。コロナ禍で注目を集めた大仏建立前の状況、聖武天皇(下)の願い、そして1000年以上にわたり現在にいたるまで、戦乱や災害にまきこまれながらも存在していることを様々な角度から歴史を追って科学的に伝える77ページの科学絵本です。

お寺に残る古い資料などもみせていただき、化学者として自ら塗金の方法や必要な金(きん)の量を計算をするなど執筆までに5年を費やしたと、あとがきにあります。

展示会場で絵をご覧いただくと感動される方が多いのも、この本の特長です。機会がありましたら是非お出かけください。

(『ならの大仏さま』のあとがきは当サイト「あとがきから」コーナー2019年5月に3回に分けて掲載しています。)

みんなこどもから教わった

『どろぼうがっこう』 歌舞伎調 笑いとスリル

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第4回目は、『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)について。

前扉(上)から、すでに定式幕に大入袋、幕引きの黒子は頰被りと芝居の雰囲気、ユーモアたっぷりなこの本は、男性ファンが多く「子どもと一緒に楽しみました」というお父様からのファンレターに、かこは大変喜んでいました。

かこが学生時代に体験した、子どもたちが劇を見て笑いで反応する場面、夢中で遊ぶ姿、「プチ悪」から善悪を見抜いていく感性、そういったことをキーワードに解説が展開されます。

ところで、このお話には続編があるのです。「どろぼうがっこう」の生徒たちがクマサカ先生とどうやって全員脱獄(?!)し、大運動会を開催できたのか、是非、絵本でお楽しみください。