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夏休み真っ只中。いつもとは違う遊びをしたいですね。
そんな時のヒントになる本といえば、お子さん向けの『あそびずかん なつのまき』(2014年小峰書店)が紹介されました。
以下でどうぞ。

あそびずかんなつのまき

この本のあとがきをご紹介します。

あとがき

夏は子どもにとって、窮屈な衣服から解放され、自由に行動できるときです。ちょうじかんの直射日光に注意しながら、全身の遊びができるよう配慮していただくとすばらしいせいちょうの季節となるでしょう。

また、海山や郷里などへの旅行の折、いつもの遊び仲間ではない、年齢や言葉や風習の違う出会いがあるかもしれません。こうした種々な交流や経験は、未来に生きる子どものすばらしい糧となります。そうした機会のため、夏の遊びをおおいに活用されるようおすすめいたします。

(本文の漢字には全てかながふってあります。)

コロナ禍で遠くまで出かけるのが難しいのですが、いつもの公園で、おうちキャンプで、新しい遊びに挑戦するのはいかがでしょうか。

この本の中に入って空想虫取りとか、空想バードウオッチングなんていうのは?絵描きじゃんけんも面白いですよ。存分にお楽しみください。

この4冊、かこさとしファンならお馴染みのものですが、Bunkamuraで開催中のかこさとし展にちなみ、おすすめの本として紹介されています。夏休みの読書のヒントになるかもしれません。以下でどうぞ。


『地球』(福音館書店)は 2022年8月7日讀賣新聞「本よみうり堂」でも「平常心を取り戻す」本として紹介されました。大人にもこどもにも、おすすめの本です。

この絵本の絵は、現在開催中のBunkamura「かこさとし展」のみならず、岡山県立美術館「かこさとしの世界」展でも絵や下絵をご覧いただけます。

おすすめの絵本

好奇心くすぐるおすすめ科学絵本として『だんめんず』(1973年福音館書店)を紹介。

本作は1973年に出版され、来年で刊行50年を迎えるロングセラーです。
ふだん目にすることができない郵便ポストやエスカレーターの断面図もあり、断面図によって内部がわかる面白さを絵本を通して知ることができます。

現在Bunkamuraで開催中の「かこさとし展子どもたちに伝えたかったこと」で複製原画を展示しています。会場には他にも断面図を使いながらダムや地球の内部を伝える絵などがありますのでお楽しみください。

好奇心くすぐる絵本

子どもの理科離れの原因は大人の理科離れでは、というかこと福岡伸一氏の対談を掲載している『ちっちゃな科学』(中央ラクレ)を2022年7月30日読売新聞朝刊「編集手帳」で紹介。

夏休みの今、大人も子どもも身近にあるものを好奇心を持って見つめ、考える時間が大切のようです。

2022年9月号の雑誌「プレシャス」ArtコーナーでBunkamuraの展示会を以下の『地下鉄のできるまで』の以下の場面の写真とともに紹介。細い線で描き込まれた原画を是非会場でご覧ください。

夏休み、いつもよりのんびり過ごせて夜空を見上げることができたらいいですね。
そんな時間はない、という方も是非『なつのほし』(1985年偕成社)をどうぞ。

2022年7月31日、NHKラジオ「絵本の時間」で取り上げられれました。放送は以下でお聴きください。

2022年7月31日 絵本の時間 なつのほし

その中で紹介された浴衣姿のかこさとしらしき人が夜空を見上げる場面の原画は、ただいま開催中のBunkamura「かこさとし展」でご覧いただけます。

2022/03/24

うさぎの絵本

うさぎの絵本と言われたら思い出すのはどれでしょうか。

「ピーターラビット」は、その本が出版され今年で120年という記念の年だそうで、展覧会や特集雑誌が企画されています。そんな一冊「時空旅人」には「知っておきたい絵本作家」として、かこも紹介していただいています。

ピーターラビットの作者ベアトリクス・ポターが愛したイギリスの湖水地方は風光明媚で丘陵には、その住まいが今でも残っています。夏のその景色は緑が目に染みるように美しかったことを懐かしく思い出しますが、『だるまちゃんとうさぎちゃん』(1977年福音館書店)は白銀の小山が背景で、かこが幼い頃暮らした福井県越前市の風景が重なります。

かこによるうさぎ絵本に『うさぎのパンやさんのいちにち』(2021年復刊ドットコム)があります。かわいいうさぎたちが驚くほどたくさんの種類のパンを作る工程は、社会見学に行ったように本格的で世の中の仕組みもわかるおすすめの絵本です。

うさぎはキリスト教の国々ではイースターに欠かせないものですが、今年のイースター(4月17日)は、果たしてお祝いをできるような状況になるのでしょうか。ベアトリクス・ポターの子供時代は伝染病や産業革命による自然破壊が起きた時代で、現在の私達と似たような思いをしていたからこそ、美しい自然を背景にした物語が紡ぎ出されたことを思うと、120年の年月が長いのか短いのかがわからなくなってきます。まさに時空を超えてつながる世界を体験できるのが絵本でもあるのです。

上は『こどもの行事しぜんと生活4がつのまき』(2012年小峰書店)より

一年に一度雪が降るか降らないかの地域でも、冬はやはり雪のイメージが思い浮かびます。

藤沢市本庁舎に季節ごとに掛け替えているかこ作品、2021年12月からは『ゆきのひのおはなし』(1997年小峰書店)の2枚を展示しています。お近くに行かれましたらご覧ください。

なお、この絵本については以下でおすすめの雪の絵本として紹介されています。

雪の絵本

かこさとしが自然に関してどんな思いを抱いていたかは、2021年秋冬号の雑誌「花椿」の特集:Living on This Beautiful Planet 「透明な力を糧に」で林綾野さんが引用しているように、かこの著書『私の子ども文化論』(1981年あすなろ書房)でふれている宮沢賢治の「狼森と笊森、盗森」の自然観に重なります。

賢治のこの作品について、かこは「人間が、その自然の構成の一員として、その制約と相互依存の状況下にあることをえがいたこの先覚者の含蓄を味わって」とし、(中略)次のように述べて「子どもたちの遊びと自然保護」と題する節を結んでいます。

(引用はじめ)
子どもたちは、自然と親しみながら、あそびながら、自然の尊さとそして人間も自然の中の生物の一つであるという自覚を肌で感じとって育っていくものではないだろうか。そして、おとなになって日本の自然をなつかしみ、大事にするひととなるのではないだろうか。それがひいては、将来の日本を背負ってたつ子どもたちに自然保護を呼びかける最善の方法のような気がする。
(引用おわり)

『こどもの文化論』の出版からさかのぼること10年前に刊行された『きんいろきつねのきんたちゃん』(1971年学研/2005年ブッキング)には次のような場面が描かれています。ゴルフ場や別荘地などの大規模開発が盛んに行われるようとしているのを察知して日本の自然が破壊されることを危惧していました。

残念ながらこの本は絶版ですが、かこの絵をいもとようこ氏の絵に替えて出版された『きつねのきんた』(金の星社)版にかこさとしのあとがきがあり、この問題について記していますのでここで全文ご紹介します。

(引用はじめ)
この絵本のもとになったのは、一九七一年にかいた、『きんいろきつねのきんたちゃん』(学習研究社・刊)というお話です。当時、それほど問題になっていませんでしたが、自然をこわしたり、ゆがめたりする人間のわがままな行いを、動物たちを通じて考えてもらおうとした作品です。

それから二十年もの間、たくさんの人たちによんでいただき、紙芝居になったり、時にはミュージカルやアニメ映画にしようというお話があったりしているのですが、もとになった自然と人間の関係は、まだまだよい方向に進んでいないようです。ですからきんたをはじめ、動物たちも、いまも苦労をしていることでしょう。

この本をきっかけに、なぜ二十年以上も、よくなって行かないのかという、本当のわけを、よく調べ、勉強し考えて、正しくするよう力をつくしてくださるのを、願っています。
作者 かこ・さとし

(引用おわり)

この文が書かれてから17年。取り戻すことができない自然破壊を続けてきた17年が過ぎてしまいました。今こそ、かこがこのあとがきに込めた願いを実現させなければならない時であると思いを新たにしています。

2021年11月4日伊勢新聞・6日琉球新報・8日佐賀新聞・9日河北新報・静岡新聞・10日埼玉新聞・中国新聞・山陰中央新報12 日熊本日日新聞 22日神奈川新聞 24日京都新聞 26日山陽新聞. 12月5日宮崎日日新聞 7日 奥羽日報

今年を振り返るのは少し気が早いかもしれませんが、2021年11月に上記各紙で報じられたように、2021年は出版に恵まれた1年でした。
1月には、『くもとりやまのイノシシびょういん ー7つのおはなしー』(福音館書店)がでました。これは読み聞かせ・語りを目的にかこが書きためていたお話で、コロナ禍のステイホームで苦しい中、気持ちの和らぐお話として楽しんでいただいたという嬉しいお声が届いています。

かこさとしの伝記が初めて出版されたのも今年でした。初出の写真も豊富でかこさとしを知るには、必読です。わかりやすい言葉でかこの内面を伝え、生きる意義を考えさせられる、お子さんにも大人にもおすすめしたい一冊です。上記の新聞記事では著者の言葉を引用し詳しく紹介しています。

日本エッセイスト賞を受賞した珠玉のエッセイが文春文庫として登場したのは5月。ここにも貴重な写真やかこの挿絵がさらに加えられ、深い洞察が数々の思い出話の中に散りばめられ、読みやすい作品です。

加古が興味を持って研究した子どもの遊びは、子どもの成長にとって不可欠で、それにより想像力と創造力を育てる原動力になります。そのお手伝いとして、身近にあるものを使って自分でおもちゃを作る楽しさを紹介する『てづくり おもしろ おもちゃ』(小学館)は、1968年アメリカで発売された『Chock Full o’Fun』の日本語版で、この7月に英語版の復刻と合わせて出版されました。

復刊といえば、『うさぎのパンやさんのいちにち』『たろうがらす じろうがらす』『かわいい きいろのクジラちゃん』(いずれも復刊ドットコム)が次々に復刻され、こんな絵本があったとは!」と驚きを持って手に取っていただいています。

そして大きな反響を呼んだのが、絵本『秋』(講談社)。一人称で語られる18歳のかこが目にした戦争の凄惨な出来事はこれまでかこが語ったことがないもので、秋の美しい風景と対象的で胸にせまります。後年かこが子どもたちのために人生をかけて、とりくんだのはこうしたことがあったからなのです。

かこ作品の中でおよそ4分の1を占める紙芝居については、まとめたものがありませんでした。そこで、一冊の本にして8月に出版されたのが『かこさとしと紙芝居 ー創作の原点ー』(童心社)です。かこ自身による紙芝居の歴史や考察などを収録、現存する自作の紙芝居全てのあらすじも掲載しています。研究資料としても読み物としても面白いこの本について、記事では詳しく紹介しています。

また、記事では加古総合研究所が資料画像等を提供した長野ヒデ子氏による『かこさとしの手作り紙芝居と私』(石風社)についても合わせて伝えています。

このように2021年には新刊、復刊合わせて10冊が刊行され、いずれもかこさとしを知るのに欠かせないものですし、新しい情報に富み、読んで面白い、見て楽しいものばかりです。是非ご覧ください。

石、粘土版、木簡、皮など人間は様々のものに文字を書いてきました。電子機器に頼る現代の私たちですが、紙を手放すことはできません。紙を最初に作ったのは、中国の蔡倫と言われていますが、『新版 科学者の目』(2019年童心社)に紹介されているように「樹皮、麻布、ぼろきれ、魚網などを使って紙(蔡侯紙)をつくり、105年に和帝に献上した」そうです。

しかし、「考古学上の調査によると蔡倫よりもっと古く、紙らしいものがあるのに、紙の発明者として蔡倫の名が伝えられている」理由が重要なのだと続きます。是非、本文をお読みください。

今までゴミと思われていた玉ねぎやじゃがいも、みかんの皮や茶殻など様々な野菜を使った紙なども誕生しています。

以前ご紹介したバナナの茎の繊維を利用したバナナペーパーの本、『ミラクルバナナ』(2001年学研)もあります。

『ミラクルバナナ』は日本、ハイチの大学や企業など多くの協力で出版され、日本語の文をかこがお手伝いしました。あとがきのような最後の部分をご紹介します。

(引用はじめ)
「世界中のおともだちに バナナの紙をみてもらおう」
みんなでそうだんし、バナナのせんいをあつめて、船で日本におくることになりました。

日本の港についたバナナのせんいは、トラックで、紙をつくる工場にはこばれました。

そして、できあがったのが、この絵本につかわれているバナナの紙です。

国をこえて、みんがきょうりょくしてつくった、たいせつな、すばらしい紙です。
(引用おわり)

紙を通してSDGsを考えるきっかけにもなりそうです。

この本を通じ、ハイチのことを知ろうという小学校の呼びかけは以下をご覧ください。

ミラクルバナナ

尚、『新版 科学者の目』については2021年11月14日佐賀新聞「県立図書館のドンどん読書」コーナーで紹介。記事は以下でどうぞ。

科学者の目