メディア情報
みんなこどもから教わった
数奇な運命 歴史も表現
愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第5回目は『ならの大仏さま』(1985年福音館書店/2006年復刊ドットコム)についてです。
かこは、東大寺の大仏について日本では小学校でも中学校でも習うけれど、本質的なことが伝わっていないと嘆くように申しておりました。コロナ禍で注目を集めた大仏建立前の状況、聖武天皇(下)の願い、そして1000年以上にわたり現在にいたるまで、戦乱や災害にまきこまれながらも存在していることを様々な角度から歴史を追って科学的に伝える77ページの科学絵本です。
お寺に残る古い資料などもみせていただき、化学者として自ら塗金の方法や必要な金(きん)の量を計算をするなど執筆までに5年を費やしたと、あとがきにあります。
展示会場で絵をご覧いただくと感動される方が多いのも、この本の特長です。機会がありましたら是非お出かけください。
(『ならの大仏さま』のあとがきは当サイト「あとがきから」コーナー2019年5月に3回に分けて掲載しています。)
みんなこどもから教わった
『どろぼうがっこう』 歌舞伎調 笑いとスリル
愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第4回目は、『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)について。
前扉(上)から、すでに定式幕に大入袋、幕引きの黒子は頰被りと芝居の雰囲気、ユーモアたっぷりなこの本は、男性ファンが多く「子どもと一緒に楽しみました」というお父様からのファンレターに、かこは大変喜んでいました。
かこが学生時代に体験した、子どもたちが劇を見て笑いで反応する場面、夢中で遊ぶ姿、「プチ悪」から善悪を見抜いていく感性、そういったことをキーワードに解説が展開されます。
ところで、このお話には続編があるのです。「どろぼうがっこう」の生徒たちがクマサカ先生とどうやって全員脱獄(?!)し、大運動会を開催できたのか、是非、絵本でお楽しみください。
みんなこどもから教わった
『からすのパンやさん』
愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第3回目は、『からすのパンやさん』(1973年偕成社)について。
見開きいっぱいのパンの場面をいつまでも見ていた覚えのある方も多いことでしょう。パンやさんにやってくるからすたちの個性的なこと、4羽の子どもが家のお手伝いをしてお店を盛り立てる「個性を尊重し共生に思い」そこに「社会を考えるヒントを与えて続けている」と解説。
この本とその続編『からすのおかしやさん』(2013年偕成社)については以下の偕成社のサイトを是非ご覧ください。本屋さんで手に入る素敵なプレゼント情報があります。
偕成社 からすのパンやさん
2020年6月30日愛媛新聞 「加古作品の魅力 知って 児童らに読み聞かせ」
本展示会にあわせて6月27日には歴史文化博物館のある西予市の図書交流館分館で学芸員さんによる絵本の解説と読み聞かせ会が開かれ6月30日愛媛新聞にその模様が写真とともに紹介されました。以下でどうぞ。
愛媛 読み聞かせ
誕生日に贈りたい絵本
『からすのパンやさん』については絵本ナビスタイルで、「3歳、4歳、5歳の誕生日に贈りたい絵本」として紹介されています。以下でどうぞ。
絵本ナビ からすのパンやさん
2015年2月、みぞれまじりの寒い朝、かこは川崎市中原図書館で開幕する「かこさとし川崎の思い出〜1950年代のセツルメント活動と子どもたち〜」展の初日の記念講演の会場に入りました。
開場までにはまだ充分の時間があり、入場はハガキによる予約制でお断りをするのに苦労するほど多くのご応募があったため講演会の準備にも大勢にお手伝いいただき余念なく進むなか、一人の男性がマイクチェックをしている舞台のかこのもとに近づいて来られました。
その表情はなんと表現して良いのか、目元がくしゃくしゃしていて、何事かあったのかと思わざるを得ない様子でした。言葉も明瞭ではなく、聞けば、手にした一枚の写真を見せ、これは自分だといわれました。その方が持っていたのが冒頭の写真。かこのセツルメント活動を語るときに必ずと言って良いほど紹介されるものです。
女の子を先頭に子どもとセツルメントのメンバーたちが背の順にならび最後に立っているのが、メガネに帽子の若き日のかこさとし。その男性は「かこ先生」といったきり、もう言葉が出てきません。お顔を拝見すると、そう、写真の男の子の面影があります。慌ててかこの傍らにお連れし、あとは涙、涙の再会となりました。
その日の講演では、前半はかこがセツルメントについて語り、後半はセツルメント活動に携わった方々やかつての子どもたちが壇上に上がりに思い出を語るという構成でした。この日の為に、長い時間にわたる献身的なご協力をいただき、ようやく連絡がとれた当時の関係者の方々のお話からは、セツルメント活動が果たした役割の大きさが伝わってきて満員の聴衆も大変心を動かされました。写真の男性にも急遽壇上に上がっていただきました。
60年以上の時空を超えてかこと再会できたこの男性のおかげで当時の子どもたちのことが次第にわかりました。かこはこの再会を何にもまして喜んでいたのは言うまでもありません。その写真が、2020年3月20日に出版された『写真が語る 川崎市の100年』(いき出版)に収録されています。かこにとって忘れえぬこの一葉は、戦後日本の復興を支えた工場で働く人達の多くが暮らした川崎の歴史を伝える一コマでもあったのです。
2020年3月川崎市広報特別号などでも
この写真やセツルメント活動については川崎市広報特別号やタウンニュースでも取り上げられました。かこの手書き資料(初公開)などが掲載されています。詳しくは以下のサイトでご覧ください。
川崎市広報特別号
タウンニュース
日ごろの疲れがたまっているときにこそ、手に取ってほしい本5選 (プレシャス)
不穏な空気の中、「温かい気持ちになる本」を紹介しているコーナーで加古の遺言とも言える『未来のだるまちゃんへ』を取り上げています。遺言なのに温かな気持ち?と思われたら是非、お読みください。
記事は以下でどうぞ。
未来のだるまちゃんへ
2019年MOE絵本屋さん大賞6位に選ばれ書店でも特設コーナーで展示されている『みずとはなんじゃ?』(2018年小峰書店)は、生前かこさとしが手がけた最後の絵本です。下絵までは描いていたものの絵を自ら描くことが出来ず断念、その思いを鈴木まもるさんに託し、完成を見たこの科学絵本についての詳しい解説と書評が科学雑誌『日本の科学者』2020年3月vol.55(2020年本の泉社)に掲載されました。絵本ですが年齢問わず読んでいただきたい、深い内容です。
以下に情報があります。
日本の科学者
幼い頃に楽しんだ絵本が今でも本屋さんの書棚に並んでいるのを見つけると無性に嬉しくなります。
その本を手に取ってページをめくると、あっという間に気持ちは子ども時代に戻っていることに気づきます。
皆さんにとって、そのような本はありますか。たった1冊でもそんな絵本があれば嬉しいですし、子どもたちにはそういう本に出会ってほしいと願っています。
ロングセラー絵本として『からっすのパンやさん』が紹介されています。47年前に出版され、おかげ様で今でも人気です。
以下で。
ロングセラー
『未来のだるまちゃんへ』(2016年 文藝春秋)
出版にあたり90歳のかこさとしがこの本の題名を当初「遺言」にしたいと考えたように、柔らかな語り口で、幼少期から晩年までを振り返り、未来の子どもたちへの思いを伝えます。
中でも、なぜ絵本を書こうと思うようになったのか、19歳で敗戦を迎え、「かこさとし」として生きる道を見出し全うした90年を知ることは、子どものみならず、これからを生きる大人にも大きな力を与えてくれます。
推薦者のコメントとともに紹介されています。
「かがくのとも」五十年
福音館書店から「かがくのとも」が刊行されて50年が過ぎました。かこさとしは、このシリーズで『あなたのいえ わたしのいえ』『だいこんだんめん れんこんざんねん』『はははのはなし』など数多くの絵本を制作、現在でも読み続けられています。そこにはどんな魅力があるのでしょうか。特集記事のインタビュでーで編集の方々が語っています。
『だるまちゃんとキジムナちゃん』は2018年三作同時出版された「だるまちゃんシリーズ」の一冊です。間も無く92歳の誕生日を迎えようという、かこがテレビや新聞のインタビューでこの作品に込めた思いを語っていたように、あとがきにもありますが、戦後からの状況が未だに続く沖縄にエールを送りたいという気持ちを著したものです。
ご存知のように「だるまちゃん」シリーズはそのお相手を日本の郷土玩具に求めていますが、キジムナちゃんも他のお相手同様長い時間をかけて、かこが調べ温めていました。1991年刊行の『かこさとし あそびの大惑星4いちぬけた にいにげた のあそび』(農文協・下)に、すでに[おきなわキジムナーたちのあそび]という項目があり、「キジムナーは、おきなわのこどもたちの よいあそびなかまです」として、ヤラブやアダンといった沖縄独特の植物を利用した遊びの数々を紹介しています。
「おにごっこ・・・カチミンソーリー
かくれんぼ・・・クワッキソーリー
ちゃんばら・・・タタカイグアーセー
といいます。」と言った記述もあります。
『だるまちゃんしんぶん』(2016年福音館書店)には「おきなわ キジムナちゃん ほうもん」というコーナーがあり、だるまちゃんが報告しています。それによるとキジムナちゃんの嫌いなものは、にわとりの声と飛行機の音だそうです。
2020年1月12日琉球新報朝刊には、こんなクイズが掲載されました。
沖縄を舞台にした絵本「だるまちゃんとキジムナちゃん」を発刊した作家は誰かな?
三人の作家の名前から選ぶというもので、はなれた紙面にある答えには、絵本の内容が簡単に紹介されています。昨年は首里城の悲しい出来事もありました。キジムナちゃんは今頃どんなことを思っているのでしょうか。
2020年2月1日から始まる八王子市夢美術館での全国巡回展では、『だるまちゃんとキジムナちゃん』の原画もご覧いただけます。