あとがきから

「かこさとし七色のおはなしえほん」シリーズは〈面白い〉という言葉の〈白〉に注目したかこが、白にまつわる話、そして白だけでなく、黒、赤、茶、青、ふじ、黄そして本作品の紫など各本にテーマの色を決めて作った絵本です。

小さな小さな男の子と女の子は、紫色の深い森に住む紫の服を着たおばあさんに出会い、りんごを食べると姿が変わってしまいます。二人が可愛がっていた犬が助けにやってくるのですが、お話の最後は、その犬のおかげで思わぬ嬉しいことが起こります。かわいい、そしてちょっとドキドキする不思議で楽しいお話です。

はやぶさ2が持ち帰った小さなカプセルに思い重ねて『ちいさな ちいさな ものがたり』のあとがきをご紹介します。

あとがき かこさとし

(引用はじめ)
子供の目から見ると、机や扉や窓や乗り物など、みな高くて大きくて手が届かず、恐ろしいものに映ります。子どもに適した大きさや逆に小さいものに出会うと、親しんだりいつくしむ心を伸ばし、積極性や勇気を持つようになります。小型の模型や意のままになる玩具が、子どもに喜ばれ、成長に大きな役割を持つ理由がここにあります。

そうした小さなもの、可愛い大きさのものを主題にしたお話を、小さな草の根や貝殻から美しい古代色を生み出した紫に託してまとめてみました。
(引用おわり
本文は縦書き、漢字には全てふりがながあります。 

あそびの大星雲6ーお金と経済のからくりー(1992年 農文教)

前回、恐ろしいものをテーマにしましたが、世界大恐慌が起きておよそ100年。これなしでは現代生活が困難な、経済についての絵本『あそびの大星雲6 やすくておとくなあそび ーお金と経済のからくりー』(1922年農文教)のまえがきとあとがきをご紹介します。

この絵本では、[ねずみ講][ずるいかせぎかた][あくどいやりかた][つきみだんごのけいざい][もうかるかいしゃ][さかえるきぎょう]や[みっつのくにのけいざいせんそう][パンツのインフレーション][えんぴつのデフレーション](下)など、様々なテーマでわかりやすく説明しています。

かこさとしから、おとなのひとへ

経済という魔物に向かってーー

(引用はじめ)
時に魔物と呼ばれる金銭に、現代人間生活は深く依存し、子どもたちも共に暮らしています。金銭と経済を軸にしたこの巻をご覧いただく理由は、子どもたちを株のうりかいに引きずりこんだり、守銭奴やケチ人間にするためではありません。魔物として恐れ逃げるのではなく、積極的に正しく活用する知恵を持ち、もし経済の波や嵐が起こっても巧に立ち向い、その根源にメスを入れる力をもってほしいと念じての事に他なりません。どうぞお大事に。
(引用おわり)

かこさとしあとがき

お金の世の、荒波に対する知恵

(引用はじめ)
経済は魔物であるといわれます。かつて会社勤めをしていたおり、石油ショックと言う嵐が吹き荒れ、各社一斉に生産縮小・操業短縮を行い、そのアオリでプラスチックの原料チップが一時時品薄となり、関係者は必死で買い集めたことがありました。それまで倉庫にねていた品質不良品の山まで、あっという間に売り切れたことがあり、品質向上とか物性改良に取り組んでいた技術研究のむなしさと、経済の恐ろしさを痛感しましたが、大人はそうした魔性にただ揉まれれ、泣き笑いするだけで、同時に生きている子供たちに何の示唆も説明も、まして積極的な教育などしてきませんでした。お年玉とおこづかいの額が増えても「ムダづかいしないよう」だけが最大の指導では困ります。人生にもっと役に立ち、意味のある経済法則を知ってほしいという願いを込めて、この本を未来のアダム・スミスやシュンペーターたちにおくります。
(引用おわり)

あとがき かこさとし

10月最後の週となりました。2ヶ月後には、今年最後の週となりました、ということになりますが、今月は皆さんにとってどんな月だったでしょうか。

今から80年前の10月にかこが、感じたことを『こどものカレンダー10月のまき』(1975年偕成社)あとがきに書いていますのでご紹介します。

(引用はじめ)
秋は私のいちばん好きな季節です。空が澄みさわやかです。トンボのはねに白い光がきらめきます。おいしい果物がどっさりできます。その秋の最も秋らしい時期は10月と言えるでしょう。ですから、私は10月がとても好きです。

ところが、この素晴らしい秋が、10月が、とてもいやで、きらいになった時がありました。

昭和19年の秋、10月。そのころ私は高等学校の生徒でした。戦争が激しくなり、文科の生徒たちの中には、次つぎと戦場へ行くものがあらわれました。理科の生徒であった私たちは、その友人たちを、万歳と言って送りだしたのです。食べ物がなくなりました。食べられる野草はみんな利用しました。学校の授業は打ち切りになり、戦車工場へ行って、部品を作ることをしました。そして、毎日のように空襲があり真っ青に澄んだ空を、B29の編隊が銀色に光って通っていきました。秋は美しく、さわやかでも何の希望も持てない、いやな暗い毎日でした。

秋が来るたび、10月になるたび、そうしたいやな秋ではなく、素晴らしい10月であるように、二度とそんな秋が来ないよう願う私です。
(引用終わり)

本文は縦書き、漢字には全てふりがながあります。

《「海」にこめたもの》

さてこうして何度かおぼれそうになった未熟熟脆弱な私が、これだけは描きたい、日本の子どもたちに伝えたいとこの絵本にたくしたものは、次の3点です。

(1) 海という身近ではあるがあまり大きすぎてつかみ難いものを、部分でなく全体像として提示したかったこと、言いかえれば、海の片々たる個々の現象でなく、 大きな基盤と柱をつかまえたかったこと。

(2) 海が持ち、包含し、関係している有機的な様相、動的な関連性を総合しつつ整理し、一段進んだ理解を得たいと試みたこと。(海の生物の食物連鎖やサイクル、 地理的条件による物理や化学上の変移、 また光や波浪や水圧の影響等をちりばめたほか、時間的な推移を映画のこまおと しのように示したのもそのためです。宝庫としての海をたたえる反面、狂暴非情な海を描いたのもそのためです)

(3) 海とそれをとりまく自然に対し、勇敢に働きかけ、知恵と努力によって開拓してきた先人の業績と精神を学びとり、人類が発生したはるか昔と、未来社会との間におかれている海洋の今日的意義を感じとるよすがにしてほしかったこと。(南北極探険や海洋研究の業績をできるだけ多くもり込んだり、ときに時間や空間をとびこえて海賊やコンチキ号や海底都市 を同居させているのもこのためです。それらは正しい人間的な立場にたつ国際性と、何よりも日本の子どもたちを中心として考えることを基準に選ぶよう心がけました)

こうした意図を絵本という形の中におり込むため、この本では次のような表示と処理がしてあることを何とぞご了承ください。

A. 小さい読者も絵と見くらべながらひとりででも読めるよう、普通かたかなで書く生物名をひらがなで表示しました。

B.全部ひらがなにしたり、解説をつけるとかえって混乱するものは漢字のままで 表示しました。

C.船長名と船名などまぎらわしくなるところは、一部かたかなとひらがなとで区別しました。

D.だいたいの相互の比較はくずさぬよう 配慮しましたが、一つのめやすとして概略の長さを添記しました。場所によって大 きさがちがうものや、調査が不充分なものについては、長さを書いてありません。

E. 季節、昼夜、緯度などにより変動する生物を、ある時点で固定し、一致性を貫くことは、かえって障害ともなるので、 許せる範囲で処理しました。

F. この本だけではどうしてももり込めなかった点が多々ありますので、もし子どもさんから積極的な質問や疑問があったらご家族の方々の経験や後述の各場面の解説や、お手元の図鑑や書籍を参考にしてどうかその欠をおぎなってください。

31ページより。海底に設置した地震計回収でも活躍の白鳳丸や垂直になって観測ができるフリップなどがえがかれている。

『海』(1969年福音館書店)には巻末に11ページにわたる、各場面ごとの解説がついて、その最初に部分には、あとがきにあたる2章があります。長いので1章づつご紹介します。

《「海」ができるまで》

(引用はじめ)
私が海を絵本にしたいと思ったのは、もう7年も前の夏のことです。 それはちょうど「かわ」という絵本を書き終えたときでした。本を書き終えたときの私のくせとして、それまではりつめていた反動で1か月ばかりごろごろ寝ころびながら、壁に張りめぐらせた下絵群をながめ、淡い悔悟と反省に浸っていたとき、その最後の海の場面をスタートとして、海を舞台に取り上げてみたいという最初の衝動にとりつかれ、あれこれ思いをめぐらせ気持よくうたたねしたことを覚えています。

そのとき以来、折にふれては本を買い込 み、時をみては海岸に行ってできるだけ構想をまとめるように心がけましたが、いっこうに考えはまとまらず、いたずらに走り書きのメモは山積するばかりで数年がすぎていきました。 幸か不幸か南極観測と、その次に続いた宇宙開発のかげになって、はなばなしくはありませんでしたが、その数年間海洋に関 する多くの事柄が続々と明らかにされ、私のたくわえとなっていきました。

それらをもとにしてようやく具体的な作業にとりかかったのが2年ほど前になりま す。しかし専門の先生方のお話を聞き、個々の事実を調べると、まだまだ海は大きく果てしなく、知っている事のあまりに少ないのに気がつきました。私がというのではなく人類が海洋で知っている量は、あたかも海の表層部と海全体の比のごとく微小であることを知って、無知なのは私ばかりでなかったとほっとした反面、ひどい不安におそわれました。

その不安や迷いをほぐそうと、文献を読んだり図書館通いをしても、一つの解明は一つの疑問を生みだし、あふれる資料の波浪にもまれ、何度か計画は座礁しそうになりました。そうした折「海は、未知で未開拓な分野だからこそ、海の本が必要だし、子どもたちに与える大きな意義が出てくるのではないか」というはげましや、「海という巨大で複雑多岐にわたる対象を、盲蛇におじず、手をつけられるのはあなたのような専門外の人がいいんだ」というあたた かい(?)おだてにのって、ようやく形あるものにたどりついたのがこの本です。
(引用おわり)

13ページより。この丸メガネは構想をねっている、かこの姿でしょうか?

かこのデビュー作は『だむのおじさんたち』(1959年福音館書店・上)です。当時、日本は電力不足で佐久間ダムの建設が進められている最中でした。取材に行くことはできず何回も記録映画を見て、建設の様子を探ったとかこは語っていました。それから約30年経ったある日、読者からのお手紙でインドネシアで大きなダム建設が始まっていることを知りました。

『絵本への道』(1999年福音館書店)によると
(引用はじめ)
『だむのおじさんたち』のテーマは、建設と生活、科学技術と自然とを、対立するものでなく、渾然として調和させて描くことでした。昭和30年代はそれがまだ可能の時代だったのだけれど、その後の社会情勢は矛盾と問題を生み出すようになり、今の日本では限界となりました『ダムを作ったお父さんたち』の出版に際しては、向こうの人々のダムに対する対処の雰囲気を確かめたかったのです。
(引用おわり)
そこで、現地に赴き、当時のインドネシアは30年前の日本同様であることがわかり、執筆に取り掛かりました。

この現地取材でお世話になった方々が、かこの訃報に接し、福井県越前市のふるさと絵本館を訪ねてくださり、その思い出を色々と語ってくださったそうです。そういったことが2020年9月26日、日刊福井新聞に連載されている「絵本のまほう かこさんから子供たちへ⑥科学絵本の凄さ」で谷出千代子絵本館館長により紹介されました。

前扉のカバーには次のような説明があります。
(引用はじめ)
この本の舞台となったチラタ水力発電所は、1983年12月に着工され、約5年後の1988年9月に完成しました。貯水量約22億立方メートル(22億トン)、十和田湖より20%も大きい、64キロメートルの湖が出現する巨大なダムです。最盛時には、5000人もの人々が働いた、現在のピラミッド建設とも言える、スケールの大きな工事です。技術的にも、世界じゅうの関係者から注目されました。

総予算6億ドル、世界銀行の融資による国際的なプロジェクトで、日本からは約300人の技術者が参加しました。この本は、ダムと、発電所となる巨大な地下空洞を担当した大成建設の多大な協力を得て作成されました。
(引用おわり)


それでは、あとがきをお読みください。

あとがき

(引用はじめ)
この絵本は、インドネシア・チラタに建設された、水力発電用のダムとトンネルのようすを描いたものです。

わたしはかつて1959年、当時の日本のダム建設をテーマにした絵本を作ったことがあります。その本は残念ながら、経済・社会の変化により絶版となりましたが、アメリカのTVA(テネシー川流域開発公社)などに見るように、国の発展や地域の復興上、水力による発電は人類の基幹技術・基本事業として、今後も消えることがないというのが筆者の考えでした。そのような場と機会を求めていたところ、読者の方から、地球規模の大きな計画が、国際協力と言う新しい理想的な姿で実施されているのを教えていただき、勇躍したわたしに、関係部所の誠実で温かい理解と、取材のためのあらゆる便宜が与えられ、30年ぶりに取り組んだと言うわけです。

ようやくまとめることができた今、それらの方がたと、現地で奮闘された各国の人々に、この絵本を捧げたいと思います。それらの人の労働の大きさ、協力の美しさ、信頼の尊さを子どもたちに伝えたいと願います。
(引用おわり)
漢字にはすべてふりがながあります。

このダム竣工30周年の2018年7月、建設に当たった日本の方々が現地を訪れたそうです。この時、かこはすでに他界していましたが、イドネシアの電力を支えるこのダムの現在を知ったら、どんなにか喜んだことでしょう。

台風や暑さ、コロナと子どもたちがのびのびと楽しむ時間がこれまで以上に制約されていることが気がかりです。このような状況だからこそ、温かみのある遊びや小さな自然とのふれあいを大切に、この絵本で紹介しているちょとした遊びが、大人が思う以上にお子さんたちの心に響くことを体験していただければ幸いです。

あとがき

(引用はじめ)
秋は実りの季節。子供たちの活動もいちだんと深まる時です。

植物や昆虫、光や風などの自然の影響だけでなく、ともに遊ぶ子の言葉や声、表情や動きが互いに働きかけてゆきます。発育途上にある子にとって、周囲の自然や人々との交流や接触が、ひとりひとりの子の総合的な糧となって、成長を支え、促し、実りをもたらしていくのです。
どうぞ、こうした実りある秋の遊びとなるよう、楽しんでいただければ幸いです。
(引用おわり)

漢字には全てふりがながあります。

今年ももう三分の二が過ぎようとしています。9月といえば、夏休みが終わり、2学期を迎え、秋の行事の準備を始める時ですが、今年はどうも勝手が違います。それでも、日の入りが早くなり、蝉の声に虫の声が混じり、猛暑とはいえ季節は少しづつ移ってゆきます。

あとがきをどうぞ。

9月のあとがき

わざわいとたのしみの行事の月

(引用はじめ)
9月はイネのみのりには、たいせつなときです。それなのに、この時期には、たびたび台風がおしよせるので、むかしの人は「二百十日」や「二百二十日」といって、立春の頃から注意をはらって、わざわいをふせぐようにつとめていました。

9月は本来、満月や、かおりのよいキクをながめたり、しずかなながい夜をたのしむ季節です。

9月の行事には、わざわいをさけようとする努力やたのしみをひろげたいという人びとのねがいがこめられていることをよくくみとってください。
(引用おわり)

本文は縦書き、漢字にはふりがながあります。

かこさとし あそびの大惑星8 

かこさとしは遊びの本全10巻、3シリーズを出版しています。あそびの大宇宙全10巻、あそびの大惑星全10巻、そしてあそびの大星雲10巻です。

これはそのうちの一冊で世界中の遊びを紹介しています。タイトルは、ボールをつきながら歌う🎵「あんたがた どこさ 肥後さ 肥後どこさ」からつけられたようです。

副題【遊びの歌劇舞踏会】とあるように、パラリンピックの競技種目にもなっているボッチャー(本文の表記)やモルジブのたねとりごっこ(下)、ニューギニアのあやとりなど珍しい数々の遊びと子どもが参加するお祭りなど楽しさあふれる47ページですが、あとがきは辛口です。かこの思いをお読みください。

あとがき

人類の政治家や経済学者に

(引用はじめ)
地球人は多くの国・民族に分かれていますが、30億年前地球に生まれた生命が進化し、4百万年前現れた人類祖先の皆一族といえましょう。その後の居住条件や食性が、変化と多様をもたらしたのは、すばらしい事です。胎乳児期はもちろん幼少期の子どもは、基本的に全世界同じ経緯をたどる事を思えば、国や民族間の対立抗争は悲しいより暗愚な事です。この本はそうした大きな喜びと、政治家や経済関係者への責任告発をこめてつくりました。
(引用おわり)

「自然のしくみ 地球のちから」シリーズの第6巻『じめんがふるえる だいちがゆれる』には、小さなお子さんがびっくりするような地震の光景も描かれています。下は冒頭にある関東大震災を伝える絵ですが、恐怖心をあおるためではなく、正しい知識を身につけ備えてほしいという著者の願いからです。

まえがき

そうした意図で特別に「まえがき」がありますので、ご紹介します。

(引用はじめ)
自然は ときに じしんを おこし、おそろしい つなみを つくります。しかし 自然は、にんげんを うらんだり、にくんだり して、じしんや つなみを おこすのでは ありません。 地球のうごき、自然の いとなみの ひとつですから、じしんや つなみに よって、じぶんたちが すんでいる この 地球、にんげんが くらしている この自然を、ただしく しり、だいじにする きっかけにして いただきたいと おもいます。そうした ねがいを こめて ちいさな どくしゃに この ほんを おくります。
(引用おわり)
漢字にはふりがながあります。

地震が起こる前の準備(下)や地震が起こった時の注意(屋外・屋内)も絵でわかるように伝えています。

あとがき

(引用はじめ)
世界中で1年間に起こっている地震は、およそ100万回。M6以上の地震は約100回で、そのうち20回が日本やその付近で起こっているとのこと。したがって日本に住む者にとって、地震は恐ろしい自然現象のひとつですが、地震を調べ、研究することは自分たちの住む所地球をよく知ることですから、日本の自然の特長としてとらえ、長所となるよう小さい読者を導いていただきたいと願って、この巻をつくりました。

どうぞよろしくご活用ください。
(引用おわり)
(漢字には全てひらがながあります)