編集室より

半世紀暮らした藤沢の図書館へ「地元の方にもぜひ」

2024年1月に加古が晩年の48年間暮らした藤沢市の4図書館に童話集を寄贈したことを詳しく報じていただきました。
1970年に藤沢に転居してから楽しみに富士山の姿を眺めていたこと、2017年年頭の「広報ふじさわ」の表紙(下)に絵を描いたことなど藤沢市にまつわることも紹介する紙面でした。

途中までですが以下でご覧ください。

朝日新聞 童話集寄贈

2024/01/15

こども狂言

能と並んで古い伝統を持つ狂言ですが、面をつけずに演じ笑い話のような内容が多いので
親しみやすいともいえるでしょう。

加古は大学生時代に演劇研究会に属していたこともあり、演劇や舞台芸術に大変興味を持っていました。歌舞伎や文楽についても『子どものカレンダー』で取り上げたりしています。

そして狂言については『あそびの大惑星1 たいこドン ふえピッピのあそび』(1991年農文協)で、「こども きょうげん きつねばやし』を載せています。大名(だいみょう)が六人の冠者(かじゃ)を呼び寄せ、それぞれを白、黄、赤、青、ちゃ、黒のきつねにになって踊るうちに本物のきつねも混じってお囃子が続くという内容です。

繰り返しとにぎやかな歌とおどりが楽しい、子どもでもわかるものです。

そしてこの度刊行された『かこさとし童話集』第5巻にも子ども狂言「はるのおどり はなのまい」があり、言葉遊びのようなセリフが続きます。大きな声で舞台で演じているつもりで読むと楽しいものです。是非、試してみてください。

加古が亡くなるまでの晩年48年間を暮らした藤沢市にある4市民図書館に『かこさとし童話集』が寄贈されました。

今年の干支である龍が表紙にある4巻、江ノ島にまつわる天女と五頭竜の話を収めている5巻など1巻から6巻までをお年玉のこの時期に寄贈、7巻から10巻までは出版され次第寄贈の予定です。

東京新聞 童話集寄贈

なお、2024年1月12日神奈川新聞および読売新聞朝刊にも掲載されました。

かこさとしが晩年の48年を過ごした藤沢市にある4市民図書館に『かこさとし童話集』が寄贈されました。

本年の干支の龍の絵がある4巻、藤沢市にある江ノ島の縁起についてのお話をおさめた5巻の出版を待って迎えた2024年1月10日に寄贈式が行われ、その様子が2024年1月11日、テレビ神奈川のニュースで報じられました。

テレビ神奈川 童話集寄贈

約40年前、1975年出版のこの本の「あとがきーおうちの方や先生方へ」には、加古の歯に衣着せぬ思いが記されています。
どうぞお読みください。

あとがきーおうちの方や先生方へ

(引用はじめ)
お正月は、もちろん一年のはじめの月です。ですから、昔も今も、過ぎた年の無事を祝い、みのりや努力の結果が良くなるよう、新しい年への願いをこめる大事な月です。それらが新年の行事となり、食事や風習、遊びなど、生活全部にわたって行われてきました。古くさいとか迷信とかいうまえに、そのように自分の生活に真剣に立ち向かっていた先祖の姿勢を私たちは、今、科学が発達して便利になった中で、方法こそちがえ、もっと受けつぎ発達させていかなければならないのではないかと考えます。そうした考えから、できるだけたくさんお正月にちなむものを、このまきにとりいれました。

また、グリム、ペロー、キャロル、ミルンといった児童文学作家や、セザンヌ、ミレー、黙阿弥、マネ、白秋、シューベルトなどの芸術家と関係深い月ですので、それらのことにもふれました。


子どもたちをつつむ、社会や環境を、子どもたちの力や才能を充分のばしていけるよう整備するか、逆に、文化の名に値せぬ非建設的なタイハイ的な状態のままにしておくかは、一に今のおとなたちの態度にかかっています。親たちがかしこく、誠実で、人生に真剣に立ち向かうかどうか、それが、これから何十年後かの子どもたちの時代を、真の幸福な時代へと発展させることでしょう。

ご自愛とご活躍をお祈りします。
(引用おわり)
本文は縦書き、漢字にはふりがながあります。

今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

新年恒例の干支探しをはじめましょう。
辰年、龍といえば真っ先にこの絵が思い浮かびます。
中国では龍は皇帝のシンボル。子どもの日の鯉のぼりは、鯉が滝を登って龍になるという中国の故事からきています。

『えびすどん おばけどんのあそび』(1991年、現在は『あそびの大事典』2015年いずれも農文協)には下の絵に次のように説明があります。

「ちゅうごく インド にっぽんなどのりゅうは うみや あめの かみさまで てんにいて めでたい しるしと されています。」

一方、「ヨーロッパの ドラゴンは はねと どくの ある しっぽを もっている
あくまで じめんの したの ほらあなに すんでいると いわれています。」(下)

日本の昔話にも龍はたくさん登場します。
『あわびとりのおさとちゃん』(下・2014年復刊ドットコム)では、ゴズリュウを利用して民衆を苦しめる「なぬし」の悪意を知ったおさとちゃんが、一大決心をしてゴズリュウに挑みます。

『かこさとし童話集 第4巻日本のむかしばなし その1』には加古のふるさと福井県に伝わる「九頭竜の話」、同第5巻には、晩年四十数年暮らした地にまつわる龍のお話「腰越江島縁起伝」を、収めています。

そして裏表紙の絵は各巻共通でタツノオトシゴがいます!

タツノオトシゴといえば、もちろん『海』(1969年福音館書店)にも描かれていますし、

小学校卒業を記念して6年生の時に作成の画文集を出版した『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)を見ると、4年生の夏休みの作品展で特等をいただいた水の中の様子の工作にタツノオトシゴが描かれています。

かこ自身をモデルにしたカッコーはくしがヨーロッパ風のドラゴンをつかまえる『カッコーはくしのだいぼうけん』(下・2022年復刊ドットコム)は7つの首がある「ななくびりゅう」を相手にカッコーはくしの大活躍が楽しい物語です。この一場面は藤沢市本庁舎1階ロビーに展示中です。

辰年にちなんで、龍のお話をどうぞお楽しみください。
 

渺(びょう)、須臾(しゅゆ)、弾指(だんし)⋯あまり普段見かけない漢字です。この字が並ぶのは科学絵本『小さな小さなせかい』(1996年偕成社)の見返しです。

最初に出てくるのが、分、厘、毛。そう、これは小さな世界を漢字であらわす数詞で、分は10分の1、厘はさらにその10分の1、つまり100分の1。厘は1000分の1、10のマイナス3乗ということになります。

国際単位で見ると、d、c、m。そういえば小学校で習いました!
1リットル=10デシリットルのdです。1メートル=100センチのc、1センチ=10ミリのm。

μ(マイクロ)は10のマイナス6乗、n(ナノ)は10のマイナス9乗、p(ピコ)は10のマイナス12乗と続きます。
そのひとつ手前10のマイナス11乗が渺(びょう)、少という字が含まれていますね。須臾(しゅゆ)は10のマイナス15乗、弾指(だんし)は10のマイナス17乗だそうです。

「刹那」はこの漢数詞では10のマイナス18乗、ここに記されたいる一番小さいのは「浄」で10のマイナス23乗です。

数字が苦手な筆者には想像もできない世界ですが、この絵本では10分の1づつ小さな世界に進んでいきますので、絵や図を見ながら、最後には宇宙誕生時の「小さな小さなせかいにゆきつきます。」

小さいものを追求するうちに果てしなく広大な宇宙と関連してくる、まるでメビウスの帯のような不思議をこの本で体験してください。

2023年11月にオンデマンドで出版された『こぶた四ひき ちんちろりん』(偕成社)は文字通り4ひきのこぶたが主人公です。

こぶたといえば『にんじんばたけのパピプぺポ』(1973年偕成社)を思い出す方もいらしゃるでしょう。この本は『からすのパンやさん』と同じシリーズで今年出版50周年を迎えましたが、そこには20匹のこぶたたちが登場していました。それから13年後の1986年に出版されたのが本作です。

どうして加古はそんなにこぶたが好きなのでしょうか。
あとがきをどうぞ。

あとがき

(引用はじめ)
この絵本は、六年前、雑誌の依頼で書いた『四ひきのコブタ』の童話をもとにつくりました。なぜ主人公がブタなのか?と言われれば、やっぱりまるまるふとって健康で、親も子もかわいい(!)のがその理由です。もうひとつ、やっぱり仇役のオオカミとの関係で、おいしそうなことが選んだ理由です。

それでは、なぜ四ひきなのか?ときかれるなら、一ぴきや二ひきでが少ないし、三びきではもうすでに知られた古典があるうえ、五ひき以上を個性をもって描くには、短い物語では無理だったからです。

けれどもなかには、ブタなんかよりネコやパンダやラッコの方がずっとかわいいとおっしゃる方がいるでしょう。四ひきぐらいでもたもたしないで、一ダースか二ダースぐらいいたほうがいいのにとおっしゃる方もいるでしょう。うんと勉強して、千びきぐらいのかわいいゲジゲジちゃんの作品をかいてみたいですね。

では、チンチロリン。
(引用おわり)

オンデマンド出版になった5冊の絵本と『かこさとし童話集』の出版を記念して福井県ふるさと文学館の尾崎秀甫さんと加古総合研究所・鈴木万里の対談が開催されます。オンライン視聴もあります。

日時:2023年12月25日午後2時から
場所: 神保町ブックハウスカフェ
詳しくは以下でどうぞ。

対談 尾崎秀甫・鈴木万里