編集室より

2016/08/29

帽子

だるまちゃんがてんぐちゃんに出会って気になったものの一つがてんぐちゃんの帽子。
だるまちゃんがてんじんちゃんや、やまんめちゃんに出会ったときには、野球帽をかぶっていました。

帽子は大切な頭を守るのでかこさとしは小さい時から愛用しています。雪国育ちですから、当ウェブサイト・プロフィール写真にある、2歳にならない頃、かぶっているのは母親手編みの毛糸帽です。

夏は日射病(と昭和時代は言っていました)予防に帽子をかぶりましょうと、学校でも勧めたものです。夏休みは麦わら帽子にランニングシャツ、半ズボンが男の子の虫取りスタイルでした。

上は「こどもの行事 しぜんと生活 7月の巻」(小峰書店)の第1ページ。この本の23ページには「ぼうしをかぶりましょう」という項目があり、下のイラストにあるような新聞紙を折って作る帽子の製作手順を図解して説明しています。

加古の帽子は、趣味ではなく、理にかなった安全策と思っていただいて間違いありません。若い頃に働いていた化学工場ではもちろん作業服に作業帽子が毎日の服装でした。

「未来のだるまちゃんへ」(2014年文芸春秋社)の冒頭には、加古は目が悪く家の中でもあちらこちらにぶつかるので帽子をかぶっている、とありますが、朝箒の時はピケ帽。当然外出にも帽子が欠かせず、もっぱらハンチング。長身、がっちり体型だった若い頃は刑事さんに間違えられそうになったこともあったそうです。

そんな著者ですから登場人物も帽子をかぶって出かけることが多くなります。加古ファンの中には、そのことをお見通しでご紹介くださっている方がいらっしゃるほどです。

「いっちく だっちく あひるのさんぽ」(偕成社 1984年 かこさとし七色のおはなしえほん①)は、あひるのお母さんがたくさんのヒヨコをつれてお散歩に行くのですが、ヒヨコたちはみーんな帽子をかぶっています。

途中で出会った風船売りのおじさんも帽子をかぶっています。この風船で事件が起こるのですが・・・
あとがきには次のようにあります。

(引用始め)
はじめこの<おはなし>を口演童話として発表したところ「勇気と知恵があるのがいい」とか「感謝の心が大切なことを教えている」とか、いろいろ批評をいただきました。

しかし、作者のひそかな意図は「戸外にゆく時、子どもは帽子をかぶりましょう、帽子を忘れないように」ということでした。

帽子なんかをなぜ? といえば大事な頭を守るためで、なぜ頭が?と考えれば、自分の体は自分で気をつけるのが一番で、自分だけで?となれば当然ほかの人にも同じようにと、親も子も思いを及ぼしていただけると思ったからです。

よくばりの私は、もうひとつ、帽子はかぶったままなのか、どんな時脱いだりとったりするのか、しなければならないのかを、子ども自身が考えれるようになってほしいと願いました。

そんな思いと願いをあひるちゃんに託したのです。
(引用終わり)

上の絵は、「とこちゃんはどこ」(1970年福音館書店)の一場面です。とこちゃんは赤い帽子が目印ですね。絵本の中の登場人物がどんな帽子をかぶっているのか注目して見るのも楽しいのではないでしょうか。

最後に蛇足で、帽子にまつわる加古流のあそびをご覧下さい。農文協あそびの大惑星5「いっすんぼうしのぼうしたち」というコーナー、13ページからです。

あるくやま うごくやま

かこ・さとし かがくのほん(全10巻)の第4巻「あるくやま うごくやま」は1968年に出版され、1998年に現在発売している改訂版になりました。半世紀近く愛読されている本書の画は当初の赤羽末吉さんから宮下森さんに変わりました。作は、かこさとし。

あとがきをご紹介しましょう。

(引用はじめ)

せまい日本でも、海を実際にみたことがない子どもはまだいるでしょうが、山はほとんどの子どもが知っている親しい存在です。

その山は、大きいもの、高いもの、不動なものの代表とされています。

しかし、山の特徴の一つである、動かないということも、ほんとうはそうではなく、一瞬の休みもなく動いているということ、火山の力や、水や風の力によって、何百年も何千年もという時間の経過によって、山はかわるということを示したのがこの本です。

ゆっくり写したフィルムの一コマ一コマをはやくまわすと、花びらがみるみるひらいてしぼむのがわかるように、何百年、何千年、ときに何万、何十万年のフィルムをはやくまわしながら、不動とかんがえられていた山さえも、こんなにいろいろかわり、動くのだということを知ってもらうのがこの本のねらいです。

このことは、科学への第一歩である、条件や環境をかえると、ものごとは新しい違った結果となること、固定した見方、考え方にとらわれないことへの発展として、わたしは極めて大切にしたいとおもっています。
かこ・さとし

(引用おわり)

やまをつくったもの やまをこわしたもの

上の写真は、かこさとし自然のしくみえほん 1 地球のちから 「やまをつくったもの やまをこわしたもの」(農文協2005年)の後ろの見返しです。

このシリーズは、「自然の現象変化や地球のさまざまな活動の起こる原因や理由を、ちいさい読者に伝える」ためにつくりました。
この巻は、特に地球の高い所、山岳や高原ができたことや、それから後どのように変化しているかをのべましたが、それらによって、自然のきまり、法則というものを知って頂ければと願っています。」(あとがきより)

当サイトでご紹介した2016年7月3日、第5回 愛知子どもと本と文化を考える会 講演会レポートの冒頭に掲載している写真の絵は「わっしょいわっしょいのおどり」(第1回平和展出品・へいわのおどり)と題するかこさとし1952年の作品です。(絵本ナビインタビュー第1回にもこの絵が紹介されています)

かこさとし自身はこの絵について次のように解説しています。

「いわゆる童画は、動物風景などが多く、人を描いてもかわいい類型であるのにあきたらず、泣き 怒り、動き 笑い 働き 考える 多様なひとの共生共苦共楽を示そうとしたもの。この絵の黒白絵ハガキを、みられた福音館書店の松居さんが絵本をかく機会をくださった僥倖の画」

掛図式の絵話や紙芝居、幻灯に描いたものもこの絵と同じようなタッチで描かれていました。そして1973年に絵本「わっしょい わっしょい ぶんぶんぶん」(偕成社)が刊行されました。あとがきを引用します。

(引用はじめ)

この「わっしょい わっしょい ぶんぶんぶん」のおはなしは、おおげさにいうと、わたしにとって記念碑的な作品のひとつです。

それは、子ども会活動をはじめた二十数年前の、もっとも初期にうまれたものであると同時に、いつしか多くの子どもたちと、そのまわりの人々に愛されるものとなり、最初の掛図式の絵話は、各所で使われ演じられたので、ぼろぼろになり裏打ちされた後もいつのまにかなくなってしまいました。

その再版ばかりではなく、わたしは請われるままに、紙芝居や幻灯、パンフレットなどにこの「わっしょい」のおはなしを、いくたびか作りかえ描きなおしてきました。

こんどのこの「おはなしのほん」の一冊とするために、七度めの筆をとりながら、かつて子どもたちが批評示唆してくれた点を、すべて作品の中にいかし、集中するよう努力してみました。
わたしの娘協力を得て数えてみましたら、この作中には人物が1、094人、動物が465匹、物や道具が294個、描かれている結果となりましたが、そのひとつひとつの顔に、わたしはこの作品を喜んで見てくれた子どもたちを思い出しながら、そしてまた、新しくこの本を見てくださる方々顔を考えて描きつづけたことをつけくわえて、あとがきといたします。
(引用おわり)

「わっしょいわっしょい ぶんぶんぶん」の幻灯が、2016年8月7日(日) 東京・池袋で上映されます。詳しくは以下をご覧ください。

28年幻灯映画チラシ

かこさとしは、カラスが大好きと言われていますが、絵本の中ではスズメも大切な役回りをしています。

スズメに田んぼの大切な稲を食べられてしまったら大変なので、カカシや鳴子が必要だったわけです。京都・伏見稲荷の門前にスズメ焼きが空高くズラリと並べられ売られていたのを目にしたのは筆者が10歳になろうかという時でした。ちょうどその頃に「だるまちゃんとてんぐちゃん」(1967年福音館書店)が世に出ました。

10歳ともなればそろそろ絵本は卒業、もっと字がいっぱいある本だって読めるんだと挑戦したくなる年頃です。そんなこともあってか、残念ながら、だるまちゃんの世界にどっぷり入り込んだ覚えがありません。だるまどんが作るお餅の鼻が、うまくつくのかは心配でしたが、スズメのお米好きは伏見稲荷での生々しい光景のおかげですっかり承知していましたので、スズメがお餅の鼻にとまるのも当然と納得していました。

数々のうちわの場面では、「このうちわ、うちにもある!」「あれも描いたのー?」などと自宅にあるものが絵本に登場するのを楽しんでいましたし、ヤツデの木も植わっていましたから、なるほどなるほどと現実と絵本の世界を行き来していました。それが、ごく最近、加古が言った半世紀前の言葉が突然、唐突に蘇ってきたのです。窓から外を見ていた子どもの私に向かって「スズメのほっぺには黒いヒゲみたいなのがあるでしょ」

今一度絵本を見て愕然。全く見過ごしていました。スズメにはだるまちゃんと同じようなヒゲがある!

そうか!!
このヒゲがあるからだるまちゃんの鼻にとまるのは、ちょうちょではなくスズメ。お米が好きだからスズメと思っていたけれど、きっと加古は幼い時の観察でヒゲのようなスズメの黒いほっぺが面白くて、大人になってからも、いつか、どこかで使おうと思っていたに違いありません。

スズメ起用に二重の意味が込められていたことを発見するのに50年近くもかかってしまった私。もしあと2-3年早くだるまちゃんに出会っていたらその時に見つけていたかもしれない、スズメのヒゲ。見たつもりになっていたけれど、見落とし、気にもとめなかったこんな小さなことを大人になって発見するとは・・・失ってしまった感受性を今更嘆くのはなんと情けないことか。ああ、それにしてもスズメのほっぺ。

「うつくしい絵」姉妹編

1974年に出版された「うつくしい絵」から遅れること15年、1989年に「すばらしい彫刻」が刊行されました。

スフィンクスなどエジプト彫刻の特徴、生き生きとしたギリシャ彫刻、数々のビーナス像、日本の仏像、ミケランジェロの作品やロダンに見られる表現の工夫などについて、わかりやすく解説しています。

ミロのビーナス(紀元前103-120年ころの作)について10-11ページ

ロダン作 考える人の表現の巧みさを著者による画を示し解説。26-27ページ。

あとがきを記します。

(引用はじめ)

今から15年前、小さい読者むけに「うつくしいえ」という美術の本をだしました。多くの方に喜んでいただいたうえ、高校生や大人のかたから続編をというはげましをいただきました。

そこでただちに準備に入り、多くの候補が何冊分もたまったのですが、私はできたらつぎは、立体のもつふしぎな感じや、空間にひろがる美しさをもりこんだ(彫刻の本)にしたいと、ひそかに思っていました。なぜなら、やさしい良い彫刻の本は、とて少なかったからです。

おおよそのもくろみは、つぎの年のうちにできたのですが、たくさんの作品をくらべ、選び、迷い、その実物をたずね、自分の目でたしかめ、どんな角度の、どんな光やかげでおしらせしたなら、その作品のすばらしさが伝わるか考え、なやんでいるあいだに、10年があっという間にたってしましました。

立体を本で見ていただくのを制約ではなく長所にして、ふつうでは見られぬ部分や細部を拡大や対比することで、彫刻家がこめたおもいをお知らせしたいとあれこれ努めているうちに、また数年がたってしまいました。

こうして15年もたって、ようやく見ていただくようになったのがこの本です。長いことお待たせしたことをおわび申しあげ、皆さまとともにゆっくり見直して、すばらしい作品をつくって下さった彫刻家と、お世話になった方に感謝したいと思います。

(引用おわり)


2016/07/09

うつくしい絵

かこさとしが出版を依頼した唯一の本

1974年 偕成社より出版され現在に至る本書は、かこさとしが自ら出版社に企画を持ち込み、その刊行を依頼した唯一の作品です。そのあとがきをご紹介します。

(1974年1月の初版ではタイトル「うつくしいえ」で、同年4月に図版の一部の編集を変更し、「うつくしい絵」となりました。)

(引用はじめ)
1973年の秋、私は旅さきで、ふと絵の本をまとめたいという強い衝動にかられました。帰宅とともにほとんど眠らぬまま、2日半ほど部屋にこもってかいたのが、この本の原案になりました。しかし実をいうと、この本はずいぶん長い間いだき続けてきた私の三つの思いがこめられているのです。

その第一は、私が中学生のころ上野の博覧会の会場でダ=ビンチの自画像の瞳にいすくめられたことに端を発しています。それいらい芸術や科学のすばらしさに魅せられた私は、あるときは図書館の一隅で、あるときは試験勉強のさなかひろげた画集の上で、ときには展覧会の人ごみの中で燃えつのらせた、偉大な絵かきさんたちへの思慕と敬愛の念を、この本にこめました。

第二は、学生時代から約17年ばかり子ども会でやっていた絵画指導の折、私が子どもたちに問い、考え、語ってきたことの集約をこの本にもりこみました。

第三は、私たち庶民の生活とは無縁なところで、近代的と称して動いている画流や現代芸術論とやらにたいする疑問と批判をひそかにこめておきました。

このささやかな本を、美を愛する人びとと、子どもたちにおくることができるのを、私はたいへんうれしく思っています。
かこ さとし

(引用おわり)

尚、この本制作の経緯については、ラジオ深夜便、2016年6月15日の放送でかこさとしが詳しく語りました。2016年7月31日まで、ストリーミング放送でお聴きいただけます。

本作を作る直接のきっかけとなったモナ・リザの美しさはどこにあるのか、なぜ世界中の人々が美しいと感じるのか、本作の次ページで説明されます。

2016年7月3日、愛知県刈谷産業振興センター小ホールで開催された講演会には他県からご参加の方もあり150人以上の皆様が集まられ熱心に耳を傾けてくださいました。

講師は、加古総合研究所の鈴木万里。100枚以上の写真・画像をご覧いただきながら、加古のデビューまでの三十数年間を振り返りました。

自然の中で鋭い観察眼を養った幼年時代。絵を描くことに目覚めた小学生時代。文学に興味をもった高校時代。演劇研究会に入っていた大学時代、そして社会人となりセツルメント活動で子どもたちと過ごした試行錯誤の日々で生まれた物語や紙芝居の数々。

皆さん、興味津々でご質問からも加古作品をこよなく愛読してくださっていることがわかりました。お答えする中で、加古が唯一自ら企画した「美しい絵」出版のいきさつもご披露しました。

講演会場とは別の部屋いっぱいに、加古の著作が並べられていました。中には、本年復刊された「しろいやさしいぞうのはなし」の元になった「ぞうのむらのそんちょうさん」や「わたしのかわいいナミちゃん」「ゆきこんこん あめこんこん」(いずれも偕成社)など、今となっては大変貴重な本もあり、皆さん手にとってご覧になっていました。

中心話題であるセツルメント活動のご紹介パネルも掲示しました。

残念ながら全員は写っていません。。。列の端の方、せっかく並んでいただいたのに失礼いたしました。。。

「ゆきこんこん あめこんこん」(1987年)
この作品は2部からなり、第1部は、なかじままりがコンクールに応募し入選した紙芝居で、画面は第2場面。第2部は、かこさとし「ひが さんさん あめ ざんざん」。

あとがきの最後の部分を引用します。
(引用はじめ)
子どもたちが知っている、親しい主人公たちが、野山や風雪や太陽の光のなかで、自然につつまれ、のびやかに生活する喜びを、この二部作で伝えられたらと考えています。
(引用おわり)

2016年6月に復刊された「世界の化学者12か月」(偕成社)は、絵でみる化学の世界シリーズの最終第6巻として1982年に刊行された「かがやく年月 化学のこよみ ー化学の偉人と科学の歴史ー」を復刊したものです。

ご参考までにそのシリーズ6巻の題名を記しておきます。
1原子の探検 たのしい実験ー原子・分子と実験の話ー
2 なかよし いじわる元素の学校ー元素の性質と周期表の話ー
3 ふしぎな化学の大サーカスー最新の化学と技術の話ー
4みんなの生命 くらしの化学ー自然と生命化学ー
5 ひろがる世界 化学の未来ー資源とエネルギー話ー
6 かがやく年月 化学のこよみ ー化学の偉人と科学の歴史ー

これらの本を小学生の時に読んで、現在は化学者として活躍されている方もいらっしゃいますし、最近は、中国や韓国でも翻訳されて読まれています。

左が1982年版、右が2016年復刊の「世界の化学者12ケ月」

著者は工学博士(応用化学)で技術士(化学)ですから、このシリーズの企画を40年近く前に日本化学会からいただいた時には、お役に立てることに大きな喜びを持って執筆していました。

「世界の化学者 12か月」では月ごとに、化学の歴史上重大なできごととそれにまつわる化学者が紹介され、この部分が本の核となっています。他には、その月に関係する「化学 花ごよみ・味めぐり」という楽しく、ちょっと物知りになれるコーナーとその月その日生まれの科学者の欄もあります。閏日もあって366日が科学者の誕生日。自分と同じ誕生日にうまれた科学者が誰なのかがわかります。

「世界の化学者12ケ月」6月のページには、スズランのにおいやアジサイ、バラの花の色素について記載。本の下部、黄色く見える部分が年表。

さらに、全ページ通しで科学年表・化学の歴史があり、その最初の事項は「紀元前150億年 宇宙で大爆発(ビックバン)おこる 宇宙に、物質とエネルギーがひろがった」とあります。1982年版の最後は、「1981年 福井謙一博士、ノーベル化学賞受賞(日本)」で、「✳︎このあとは、みなさんが書きくわえてください」となっていました。

復刊までの34年の月日が流れる間には様々な出来事があり、十数項目を新たに追加しました。復刊本の年表の最新事項は「2016年 米大学など国際研究チームが、重力波初観測に成功」です。この次にはどんなことが記されることになるのでしょうか。

理科が苦手という方にも親しみ易い内容になっていますので、是非、日々の生活の中にある化学の世界の楽しさに親しんでいただけたらというのが著者の願いです。

「ぼくのいまいるところ」(童心社)は1968年に出版されました。作は、かこさとしですが、この時の画は北田卓史さん、後に改定され現在に至るものの画は太田大輔さんです。

加古による画は、ほぼ同じ内容の紙芝居「ぼくがいるとこどーこだ」(童心社、1971年)でご覧いただけます。

かこ・さとし かがくの本1「ぼくのいまいるところ」のあとがきをご紹介します。

大きな世界と小さい自分の存在の尊さ

(引用はじめ)
「きりなし絵」というのをご存知ですか?子どもが絵本をみている絵があります。よく見ると、その本の絵は子どもが絵本をみているところで、そのまた絵本の絵が本を見ている子どもで・・・と、どこまでもつづく絵のことです。

わたしは小さいとき、こういう絵が大すきでした、そしてふと気がつくと、その絵本をみている自分がその絵の当人じゃないかと思いつき、おもしろさと、ふしぎな気分にいつまでもひたったものです。

この本はそうしたことをめざしています。

わたしたちは、無限という宇宙空間と時間の流れの中に生きているといいます。

そうした大きな、広い、長い中での存在というもの、それを認識するということは、とてもむずかしいことですし、大切なことであると考えます。

「きりなし絵」で気づいたようなことを、小さな子どもたちが、「存在」とか「認識」といったむずかしい熟語は使わないでも、感じとってくれたらというのが、作者のねがいです。 かこ・さとし
(引用終わり)

紙芝居「ぼくがいるとこどーこだ」(全12場面)の表紙絵

「ぼくのいるとこどーこだ」第4・9場面

2016/06/08

断面図

「だいこんだんめん れんこんざんねん」は、ユニークな書名です。
このタイトルだけですと一体なんの本なのか見当がつきません。野菜の本?それとも残念無念な結果に終わるお話?いいえ、これは断面についての科学絵本です。実はこの「だいこんだんめん れんこんざんねん」 (1984年福音館書店)の出版より10年以上前の1973年に断面についての科学絵本、その名も「だんめんず」が同じく福音館書店より刊行されています。

小さなお子さんが断面を知るにはみじかな果物や野菜を切って見るのが一番ですが、「だんめんず」では、 食器や花瓶、楽器や車、郵便ポストの断面図も登場します。方眼紙には家の平面断面図つまり地面に水平に切ったものを上から見た断面図と、垂直に切った断面図が描かれ、断面図が設計において大切な役割であることをやさしい文で説明しています。

「だんめんず 」最終場面。裏表紙の絵の断面図になっています。

「だんめんず」より。画面右下は方位磁針と水平を測る水準器。

そういえば、「あなたのいえ わたしのいえ」も家の断面を見ながらその機能についてページが進んでいきます。科学絵本「かわ」は鳥瞰図ですが、「海」や「地球」は断面図により場面が展開していきます。これらの本では、自然や人、人間が作り出してきた様々な物が描きこまれていますので断面図といっても親しみやすく詩情もある場面が繰り広げられます。圧巻は地球の断面図です。

「地下鉄のできるまで」より

「地球」より

現在はMRIで人体の輪切りの断面図を見ることができるようになり、ソナーで海底の地形を知ることができるようになりましたが、見えない物の内部を理解するのに大切な断面という方法を小さいお子さんに示し理解し納得していただく絵本には、科学的に見、考える手助けの第一歩となればとの著者の思いが込められているのです。

あそびの大星雲「くしゃみやおへそのあそび」にはMRI自体の断面図とMRIで撮れる画像を紹介しています。


残念なことに「だんめんず」は絶版ですが、6月14日から千葉県稲毛駅前・こみなと稲毛ギャラリーで開催される展示会「90&99ミライへのコトバ展 かこさとしと小湊鉄道」で展示致します。エスカレーターはこんな仕組みなんだ、ということが一目瞭然の断面図を是非、会場でご覧下さい。