編集室より
戦後80年のこの夏、小学生にこそ読んでいただきたい『くらげのパポちゃん』(2025年講談社)が朝日小学生新聞に紹介されました。
「戦争にいかなければよかったのに⋯」この本を読んだ小学生がつぶやきました。
ところが戦争をしていたその頃の日本では、戦争にいかない自由はありませんでした。言われたようにしなければならない、それを強いられていた時代でした。
「くらげのパポちゃん」は、戦争にいって亡くなった人を見つけようと大海原をどこまでもどこまでも探しにいきます。
パポちゃんの旅は時にユーモラス、時にハラハラ、ドキドキする冒険のようで、たくさんの海の生き物に出会います。そしてついに⋯
小学生のみなさんの感想をぜひ聞かせていただきたいと思います。
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『くらげのパポちゃん』は現在、藤沢市アートスペースで開催中の「かこさとし作品展」で3枚の絵を初公開しています。入場無料、8月24日までです。
8月9日(土)には絵を描いた中島加名のトークイベントがあり、本物のミズクラゲや海の生き物が「おでかけえのすい」(テラスモール湘南)でご覧いただけます。
越前市出身 絵本作家かこさん、未来託す思い
複製原画、下絵でたどる
静かで涼やかな会場で絵に見入る方々の姿が印象的な藤沢市アートスペースでの「かこさとし作品展 〜これまでの100年、そして未来へ〜」について、福井新聞文化面で2025年7月30日に紹介されました。
紙面には、初公開『くらげのパポちゃん』の絵を見る来場者の方の写真も掲載され、本展示の構成やそこに込められた思いを説明、「かこが歩んできた100年を絵本で振り返り、未来について考える夏にしてほしい」というメッセージを結びに伝えていただきました。
2025年7月30日 福井新聞 かこさとし作品展
展示会に設けられている越前市情報コーナー
スタンプラリーも実施中。ゆったりした時間が流れる越前市を訪れてみませんか。
かこさとしが20代半ば川崎セツルメント(ボランティア)活動を始めた頃、毎週日曜日には南武線の鹿島田駅で降り、徒歩で古市場(ふるいちば)第2公園、通称三角ひろばに向かいました。
駅前の道は雨が降るとぬかるむ中、子どもたちが絵を描いたり、ガリ版刷りの新聞に使う藁半紙を駅前のお店で買い求めて、毎週日曜日、加古自身が借りていた小さな貸家に通いました。
そのお店が現在の鹿島田駅前にある「北野書店」さんです。店さきにはそんなゆかりを伝える看板もありますし、お店近くには三角ひろばの場所を示す区の案内プレートもあります。
今はすっかり綺麗に整備された駅前ですが、鹿島田駅から三角ひろば、そして多摩川の土手を目指してかこさとしゆかりの地域を巡ってみてはいかがでしょうか。
2025年7月27日東京新聞で「北野書店」さんのことが紹介されました。
2025年7月 東京新聞
セツルメント活動で子どもたちに見せていた紙芝居が元になってできた絵本、藤沢市アートスペースで展示中
セツルメント時代の記念碑的作品。8月6日から藤沢市ギャラリーで展示予定
子どもたちが101ちゃんと言い出し題名にまでなった作品。紙芝居のタイトルは「市べえ沼の大じけん」。8月6日から藤沢市民ギャラリーで展示
かこさとしの生まれ故郷福井県越前市では長い間コウノトリの自然繁殖に取り組み、その甲斐があって今では毎年ひなが巣立つようになりました。
その取り組みに興味をもった加古が、現地におもむいて環境を整備している活動の様子を直接伺い、コウノトリがエサを取れるよう農薬を使わないたんぼを見学したのは、青々と鮮やかなイネの色が目に染みるような真夏のことでした。
こうして出版されたのが『コウノトリのコウちゃん』(2017年小峰書店)です。刊行当時は、まだ絵本に描かれているように繁殖が進みませんでしたが、しばらくするとまるで物語そのままに、次々とヒナが生まれ巣立ち、現在にいたっています。
越前市武生(たけふ)中央公園の大型遊具の支柱のてっぺんには「コウノトリのコウちゃん」が描かれた大きな看板があり、その側の「コウノトリと大空散歩」という遊具の周囲には、こうしたコウノトリ繁殖の取り組みがパネルで紹介されています。
そしてなんと!
2025年夏、コウノトリが藤沢市にも飛来したというニュースがあり、写真にはコウノトリが写っていました。
絵本のあとがきが現実になったようで嬉しく思っているところです。あとがきの一部をご紹介します。
「コウノトリが飛んできて住みたくなるようなところは、人間の生活にもよい自然と環境なので、そうした状況を守り、地球の生物がともに楽しく平和にくらせるようにとのねがいをこめて、つくりました。」
ぷかぷか漂うクラゲ
2025年7月12日の福井新聞で、越前市にある、かこさとしふるさと絵本館石石(らく)の展示について紹介されました。
この2月に出版された『くらげのパポちゃん』(講談社)は現在、藤沢市アートスペースにて初公開中ですが、パポちゃんはミズクラゲでこのミズクラゲをはじめその仲間や多くのクラゲやについての科学絵本『くらげのふしぎびっくりばなし』(2000年小峰書店)の初公開の絵などを、ふるさと絵本館では多数展示しています。(2025年9月1日まで)
他にもユーモラスなクラゲの絵がいろいろあって、小さいお子さんたちも喜ばれることでしょう。
この絵本館と藤沢市アートスペースの2展示をご覧いただくと『くらげのふしぎびっくりばなし』のほぼ全場面を見ていただけることになります。
また、福井新聞の記事にはこの2か所を巡るスタンプラリーのことが紹介されています。
7月15日現在、すでに2館を訪れてくださった方々がいます。越前市、藤沢市からの特別プレゼントも先着順で差し上げていますので是非この夏スタンプラリーにご参加ください!
上の絵は『くらげのふしぎびっくりばなし』の第1場面、ミズクラゲの仲間を紹介しています。
加古はたくさんの童話や科学絵本を書いてきましたが 1980年代に12冊シリーズの社会の本を書きました。図書館、郵便、病院やテレビついてなどですがその中には『こどものとうひょう おとなのせんきょ』というものもあります。今回取り上げるはそのシリーズの最後の巻『あなたのまちです みんなのまちです』(1987年/2017年復刊ドットコム)です。
ただいま藤沢市アートスペースにて開催中(8月24日まで)の「かこさとし作品展〜これまでの100年、これからの未来へ〜」の冒頭に並ぶ7枚の絵は本書からのものです。
お子さんたちにも、わかりやすく日本の歴史を振り返りつつ、これまで100年の日本の社会、藤沢の歴史とともにかこさとしの生涯に起きた出来事やそれにまつわる作品をご覧頂けたらという意図があります。
表紙の絵からもわかるように、太古の昔から1980年代までの日本の歴史を伝えるこの本の後半にたびたび登場するのが選挙権のことです。
『こどものとうひょう おとなのせんきょ』に関連してお伝えしましたが、もう少しご紹介しましょう。
明治時代は納税額で選挙権が得られました。
1925(大正14)年男性25歳以上の男性全てに選挙権があたえられます。
戦後(1945年)満20歳以上の男女に選挙権が与えられました。そして現在は満18歳以上に選挙権があります。
この本のあとがきにあるように、私たちが今当たり前のように暮らしている社会やその設備、仕組みは「長い時間かかってつくりあげてきた」ものであることを忘れずににいたいと思います。
藤沢市政85周年記念事業として藤沢市アートスペースで開催中の「かこさとし作品展 〜これまでの100年、そして未来へ〜」を記念して2025年7月12日(土)藤沢市民会館にて記念講演会「未来へつなぐこころのかたち 〜絵本でたどる思い〜」が開催されました。
藤沢市長様はじめ定員いっぱいの方々にご来場いただき、鈴木万里が、展示会に飾られている作品を中心にかこさとしが絵本に込めた思いをご紹介、初公開の絵がある『秋』の朗読には、聴衆の皆様が80年前の戦争を思い聴き入りました。
講演会の最後には質問の時間がとられ、多くのご質問やご感想伺うことができました。未来に向けた所感や思いを語ってくださる方もあり、会場の皆様とこれまでの100年を振り返りつつ未来に思いを馳せることができるひとときでした。
その模様や参加した方のご感想が2025年7月13日朝、NHKテレビ(総合)でニュースとして放映されました。
2025年7月NHKニュース
「かこさとし作品展〜これまでの100年、そして未来へ〜」の見どころご紹介
7月8日藤沢市アートスペース(辻堂)での展示が始まりました。
2会場で開催の本展示会ですが、まずは70点を超える藤沢市アートスペースの【見どころ】をご紹介しましょう。
(8月6日から開催の藤沢市民ギャラリーの展示については改めてご案内いたします)
辻堂の藤沢市アートスペースでは「わたしたちのまち」をテーマにしています。市政85周年を迎えた藤沢、そして日本中のあるいは世界の「わたしたちのまち」にも思いを馳せます。
【見どころその1】
初公開作品が展示のおよそ4分の1を占めます。
その中には今回のテーマとなる歴史に関して『わたしたちのまちです みんなんまちです』(1987年童心社/復刊ドットコム)の7枚や、かこが小学3年生の時にあった東北冷害・飢饉に関しての絵『ヒガンバナのヒミツ』(1999年小峰書店)ほか、『童話集』(2023-24年偕成社)の挿絵、『秋』(2021年講談社)や本年2月に刊行の最新作『くらげのパポちゃん』(講談社かこさとし・文、中島加名・絵)も登場します。
【見どころその2】
初公開ではありませんが、ほとんど展示されたことがない珍しい絵もあります。
例えば1983年に童心社出版(現在は復刊ドットコム)された『しんかんせんでも どんかんせんでも』は当時の二色刷りの過程がわかる絵が並びます。
一方非常に色鮮やかで大きな『宇宙』の2枚の絵や日本科学未来館での展示会ポスター用に描かれたキャラクターがたくさんの絵も見応え十分です。
【見どころその3】
『だるまちゃんとかみなりちゃん』の表紙を除く全場面を展示、その下絵も合わせてご覧いただけます。下絵にはかこが鉛筆で書いた文があり、本描き直前でも推敲している様子がわかり出来上がった絵と見比べられます。
他にもまだまだありますが、それは会場でのお楽しみ⋯
お楽しみといえば、かこさとしの生まれ故郷、福井県越前市と藤沢市がかこさとし生誕100年をコラボしてお祝いするということでスタンプラリーを開催します。越前市と藤沢市の会場でスタンプを集めるともれなくプレゼントがあります。詳しくは会場ででどうぞ。
越前市の絵本館や公園をご紹介コーナーもありますので、この夏に越前行きを計画されてはいかがでしょうか。
*本展示会会場でのギャラリートークはありませんが、7月12日(土)午後2時〜3時半市民文化会館での鈴木万里の講演会にて、展示作品にまつわるお話をいたします。ご興味ある方はぜひご参加ください。
7月12日 講演会「未来につなぐこころのかたち 〜絵本でたどる思い〜」
2016年選挙権は18歳以上になりました。
『わたしたちのまちです みんなのまちです』(1987年童心社/2017年復刊ドットコム)には、1925(大正14)に満25歳以上の男性全てに選挙権が認められ、1945(昭和20)年には男女平等の選挙権が満20歳以上になったことに触れています。
1925(大正14)年男性25歳以上の男性全てに選挙権
1945(昭和を)年満20歳以上の男女に選挙権
この本はかこさとし社会の本シリーズ12巻の最後の巻で、このシリーズには今回取り上げられた『こどものとうひょう おとなのせんきょ』も含まれていて、そのあとがきの最後には次のような言葉があります。
少数でもすぐれた考えや案を、狭い利害や自己中心になりやすい多数派が学び、反省する、最も大切な「民主主義の真髄」をとりもどしたいという願いで書いたものです。「民主主義のヌケガラ」と後世から笑われないために、私たち自身が反省したいとおもっています。 かこさとし(1983年旧版掲載文)
『くらげのパポちゃん』刊行を記念して越前市ふるさと絵本館ではかこさとしが描いたクラゲの絵をたくさん展示しています。
例えば科学絵本『クラゲのふしぎ びっくりばなし』の表紙や扉、本文からミズクラゲの絵を選んで初公開しています。
たくさんのクラゲが背景にも描かれている表紙
ユーモラスなクラゲや海の生き物が描かれている前扉
たくさんのミズクラゲが乱舞する最終場面
又、初公開といえば『あかですよ あおですよ』(下)の絵など、いずれも初公開ですから、この時期の絵本館展示は見応え十分です。
クラゲや海の生き物達が、たこの学校の授業を興味深々で見学している様子は、思わずニヤニヤしてしまうほどです。絵本館で心ゆくまでご覧ください。
この展示は9月1日までです。
絵本館で展示していないものにもミズクラゲは描かれています。
『こんにちは また おてがみです』(下)の中はこんな感じ。
「7、8、くらげ、くじゃくにくじら」と続きます。
もちろん科学絵本『海』の中にもミズクラゲや他の種類のクラゲがあちらこちらに登場していますし、他の絵本にも描かれています。ほぼ全作品が揃う絵本館で探してみるのも一興かもしれません。
(尚、絵本館は6月26日(木)は館内整理のため臨時休館となります。ご了承ください。)
かこさとしの孫、中島加名の描いた「パポちゃん」はこちらです。