編集室より

コロナ

投稿日時 2020/09/04

コロナといえば新型ウイルスのことと思うようになってしまった私たちですが、そもそもはラテン語で冠を意味し、太陽の外側にあるガスの層が冠にように見えることからコロナと名付けられたそうです。

『大きな大きなせかい』(1996年偕成社・下)には、コロナについて注があり次のように説明しています。

(引用はじめ)
太陽表面の外がわに、高温の大気が彩層となり、さらにその上に、もっとかがやくうすい大気。
(引用おわり・漢字にはふりがなあり)

この本によると、太陽表面は温度が6000K、外側の彩層は10000K、紅炎は7000Kそしてコロナ流線は100万K以上とあります。そして次の場面ではそんなコロナ流線をまとった太陽よりも巨大な恒星(自らかがやいて光をだす天体)が描かれ、さらにその次ページにはそれらの星よりもはるかに大きな巨星が描かれてています。

さらに驚くことに、私たちが知っている太陽が生まれたばかりの原始太陽と言われる時には、途方もなく大きく「現在の100倍も明るくかがやいていた」というのです。さぞかし大きなコロナであったことでしょう。

太陽の一生については『宇宙』(1978年福音館書店・下)にも描かれています。
宇宙にはさらに大きな超巨星と呼ばれるアンタレスやさらに大きな恒星があることが『大きな大きなせかい』や『宇宙』を見ると一目瞭然です。

目に見えない新型コロナウイルスに気を使う毎日ですが、本を開いて大きな大きな世界に目を向ける時間はいかがでしょうか。

2021年カレンダー

投稿日時 2020/09/10

来年のカレンダーができました。卓上に置くタイプが初登場です。

「だるまちゃんかれんだー」は絵本『だるまちゃんとてんぐちゃん』(1967年福音館書店)の絵と『こどもの行事 しぜんと生活』(2012年小峰書店)の行事にまつわる絵や解説もあり、大人も大満足のカレンダーです。それにお子さんが遊べるかわいい仕掛けもあります。

詳しくは以下でどうぞ。

だるまちゃん 卓上カレンダー

浦島太郎

投稿日時 2020/08/29

昭和時代の日本では、おそらく浦島太郎を知らない子どもはいなかったのではないでしょうか。絵本を読んだことがなくても、聞いたことがある昔話です。

かこが川崎でセツルメント活動をしていた時のことを綴った中に、この浦島太郎のくだりがありますので、ご紹介します。

(引用はじめ)
。。。子どもたちが「学芸会」をやり出すのをみていると、お天気なのに長ぐつをもって来て、女の子のスカートをはくから妙だなと思ったら、それが浦島太郎の役だったのである。おかしくって脇腹がいたいほど笑ったあと、私は涙が出てきた。この子らは、学校なんかじゃ絶対に学芸会の役なんかまわってこないガキなんだ。それが自分たちで劇をやろうとなったら、たどたどしいけれどセリフを覚え、長靴をきれいに洗い、そのドタくつをはいて、それらしき仕草や演技をし、世にもうれしそうにおじぎをした顔や、そしてまたドタ靴をかかえて満足にかえるーーーその力はどこからでてくるのか。
(引用おわり)

『おもちゃの旅』(ほるぷ新書)の一部ですが『かこさとしの世界』(2019年平凡社)に該当部分は再録されています。

子どもたちの隠れた力の凄さを知ることになった、こどもたち演ずる浦島太郎の物語は、かこにとって特別なものになったに違いありません。

『あそびの大惑星5 こびとおとぎのくにのあそびー遊び宮殿かんらん車ー』(1991年農文協)には表紙(上)にも描かれ、絵探し(下)まであります。

『あそびの大惑星6 どじょっこ ふなっこのあそび ー遊びの水中実験船ー』(1991年農文協)は海の生き物にまつわる遊びが満載されています。その中に、【えにもかけない りゅうぐうじょう】の絵と玉手箱がひっくり返る不思議な紙おり遊びがでてきます。さらに、浦島太郎の3人の弟を絵入りで紹介するという、ユーモアあふれるものまであるのです。

下は【えにもかけない りゅうぐうじょう】の絵。画面左上にいる魚の名はリュウグウノツカイ(龍宮の遣い)。

さて、令和の子どもたちは、浦島太郎のお話を知っているのでしょうか。今一度、昔話を思い出してから、かこさとし作『だるまちゃんととうらしまちゃん』をお聞きください。残念ながら下絵の段階のままで出版されることはありませんでしたが、『母の友』(2018年福音館書店)10月号【ありがとう 加古里子さん!】に掲載されました。YouTubeでご覧いただけますので、以下でどうぞ。

だるまちゃんとうらしまちゃん

今年ももう三分の二が過ぎようとしています。9月といえば、夏休みが終わり、2学期を迎え、秋の行事の準備を始める時ですが、今年はどうも勝手が違います。それでも、日の入りが早くなり、蝉の声に虫の声が混じり、猛暑とはいえ季節は少しづつ移ってゆきます。

あとがきをどうぞ。

9月のあとがき

わざわいとたのしみの行事の月

(引用はじめ)
9月はイネのみのりには、たいせつなときです。それなのに、この時期には、たびたび台風がおしよせるので、むかしの人は「二百十日」や「二百二十日」といって、立春の頃から注意をはらって、わざわいをふせぐようにつとめていました。

9月は本来、満月や、かおりのよいキクをながめたり、しずかなながい夜をたのしむ季節です。

9月の行事には、わざわいをさけようとする努力やたのしみをひろげたいという人びとのねがいがこめられていることをよくくみとってください。
(引用おわり)

本文は縦書き、漢字にはふりがながあります。

かこさとし あそびの大惑星8 

かこさとしは遊びの本全10巻、3シリーズを出版しています。あそびの大宇宙全10巻、あそびの大惑星全10巻、そしてあそびの大星雲10巻です。

これはそのうちの一冊で世界中の遊びを紹介しています。タイトルは、ボールをつきながら歌う🎵「あんたがた どこさ 肥後さ 肥後どこさ」からつけられたようです。

副題【遊びの歌劇舞踏会】とあるように、パラリンピックの競技種目にもなっているボッチャー(本文の表記)やモルジブのたねとりごっこ(下)、ニューギニアのあやとりなど珍しい数々の遊びと子どもが参加するお祭りなど楽しさあふれる47ページですが、あとがきは辛口です。かこの思いをお読みください。

あとがき

人類の政治家や経済学者に

(引用はじめ)
地球人は多くの国・民族に分かれていますが、30億年前地球に生まれた生命が進化し、4百万年前現れた人類祖先の皆一族といえましょう。その後の居住条件や食性が、変化と多様をもたらしたのは、すばらしい事です。胎乳児期はもちろん幼少期の子どもは、基本的に全世界同じ経緯をたどる事を思えば、国や民族間の対立抗争は悲しいより暗愚な事です。この本はそうした大きな喜びと、政治家や経済関係者への責任告発をこめてつくりました。
(引用おわり)

ベルツ水

投稿日時 2020/08/09

ベルツすい、といっても、一体何?ですよね。ずーと忘れていたのに突然思い出した言葉です。半世紀以上前の昔、私が幼稚園に通っていた頃、冬になるとしもやけの手をしていました。原因は手を洗ってきちんと拭かずいたからかもしれません。

当時はハンドクリームの種類も限られ、まして、子どもなのでクリームのようなものはベタベタして嫌い。そこで化学会社につとめていた、かこがツルの首のようなものが付いているプラスチックの容器に入った液体を持ち帰りました。それがベルツ水。水というくらいですから水のようなさらったした無色透明、匂いもない液体です。

弾力性のある容器を押すとそのツルの首のように細くなった先からでてきます。しもやけに塗ることになりました。いつしか、しもやけもなくなりベルツ水のこともすっかり忘れていましたが、コロナ禍でしっかり手を洗う回数が増え手荒れが話題になって記憶の底からよみがえってきました。ベルツというのはドイツの化学者だそうです。

その容器のことは、つる首スポイト(洗浄びん)というらしいのですが、かこは絵を描く時この容器に水をいれて水彩絵の具をといていました。今でも書斎の机の片隅に置かれています。いつも見ていたその容器ですが、ベルツ水、急に湧いて出てきた言葉につられ思い出した幼い頃の記憶に若き日のかこの姿がありました。

「自然のしくみ 地球のちから」シリーズの第6巻『じめんがふるえる だいちがゆれる』には、小さなお子さんがびっくりするような地震の光景も描かれています。下は冒頭にある関東大震災を伝える絵ですが、恐怖心をあおるためではなく、正しい知識を身につけ備えてほしいという著者の願いからです。

まえがき

そうした意図で特別に「まえがき」がありますので、ご紹介します。

(引用はじめ)
自然は ときに じしんを おこし、おそろしい つなみを つくります。しかし 自然は、にんげんを うらんだり、にくんだり して、じしんや つなみを おこすのでは ありません。 地球のうごき、自然の いとなみの ひとつですから、じしんや つなみに よって、じぶんたちが すんでいる この 地球、にんげんが くらしている この自然を、ただしく しり、だいじにする きっかけにして いただきたいと おもいます。そうした ねがいを こめて ちいさな どくしゃに この ほんを おくります。
(引用おわり)
漢字にはふりがながあります。

地震が起こる前の準備(下)や地震が起こった時の注意(屋外・屋内)も絵でわかるように伝えています。

あとがき

(引用はじめ)
世界中で1年間に起こっている地震は、およそ100万回。M6以上の地震は約100回で、そのうち20回が日本やその付近で起こっているとのこと。したがって日本に住む者にとって、地震は恐ろしい自然現象のひとつですが、地震を調べ、研究することは自分たちの住む所地球をよく知ることですから、日本の自然の特長としてとらえ、長所となるよう小さい読者を導いていただきたいと願って、この巻をつくりました。

どうぞよろしくご活用ください。
(引用おわり)
(漢字には全てひらがながあります)

金魚

投稿日時 2020/07/28

昭和時代、暑中お見舞の図柄によく登場したのは、朝顔、うちわ、風鈴、そして金魚と、目にも涼やかなものばかりでした。

金魚といえば、お祭りの金魚すくいで持ち帰ったり、それこそ金魚売りがきていた地域もあったことでしょう。

かこ作品で金魚をめぐる面白い絵が『おおきいちょうちん ちいさいちょうちん』(1976年福音館書店)にあります。この本は反対言葉の意味を絵で見てわかるように構成されています。

例えば、上は「なか・そと」。「ふえる・へる」では、小さな子がストローで花瓶の水をのむ「へる」に対して「ふえる」は下の絵です。金魚がユーモアを添えています。

クイズあそびもあります。
『かこさとし あそびの本1 かわいいみんなのあそび』(2013年復刊ドットコム)にある【さかなはなんびき】は、魚といっても金魚のようです。この本はもともとは1970年に刊行されたものですが、金魚鉢というと真ん中にあるこの形を思いおこします。

『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)の8月にも下のような絵がそえられています。

お子さん向けの科学絵本『すって はいて よいくうき』(1977年童心社)の表紙にも立派な金魚がいます。
本文で、金魚も水にとけた空気を取り入れようとして、口をパクパクするのだと説明があります。

昭和50年にかかれた『こどものカレンダー8月のまき』(1975年偕成社)には金魚すくいに、金魚の4コマ漫画4連作、折り紙で金魚のつくり方(下)が紹介されています。
「いろいろな かおや うろこのきんぎょを」自分で描きいれつるして「モビールにするととても涼しく、きれいです」と【おうちのかたへ】アドバイスしています。

下は同じく『こどものカレンダー』の絵ですが、金魚すくいの様子は『とこちゃんはどこ』(1970年福音館書店)の秋の「おみやさんのおまつり」の場面にもあります。

かこにとって絵かき遊びの「金魚」との出会いは衝撃的だったようです。
『絵本への道』(1999年福音館書店)では以下のような図とともに子どもたちが描くキンギョの多様性を紹介しています。


『伝承遊び考』4巻の第1巻『絵かき遊び考』(2006年小峰書店)第1章で「ことのはじまり」として語っているのがこの「キンギョのとりこ」になった顛末です。

セツルメント活動をしていた、川崎の子どもが口ずさみながら線や図形を描いてキンギョの絵が出来上がる一連の絵かき遊び。それには対句をなした言葉、韻をふみユーモアがあふれていることに、かこは喜び感嘆し「奥知れぬ遊びの世界を彷徨させる端緒となった。」と書いています。

残念ながら1970年頃から急にこの「キンギョ」の絵かき遊びは収集できない状況、つまり、子どもたちに描かれなくなったのでした。今残っている絵かき遊びは、てるてる坊主にもかかれる「へのへのもへじ」くらいでしょうか。

『かこさとし あそびずかん なつのまき』(2014年小峰書店)にも「きんぎょちゃん」としてこのえかきあそびをのせています。

たかがキンギョ、されどキンギョ。筆者はかこが迷調子で歌いながらこのキンギョをテレビや講演で紹介していたの思い出しますが、皆さんはキンギョの絵かき遊びをされた記憶がおありですか。

最後にクイズです。金魚や鯉を飼う池が描かれているこの絵はどの本にあるでしょうか。

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第7(最終)回は、『こどもの行事しぜんと生活』(2011年小峰書店)について。

かこが『日本伝承の遊び読本』(1962年福音館書店)を書いたのはまだサラリーマンであった頃です。セツルメント活動で川崎の子どもたちと接し、子どもたちがあそんでいる石蹴りや絵かき遊びの多様性、柔軟性、創造性に目を見張り子どもたちが持っているすばらしい力に気づきました

各地で遊びを収集、29万点の資料を系統別に分類、そこには科学者としての視点と絵かき遊びの言葉の素晴らしさに感嘆する文学の心がありました。

『こどもの行事しぜんと生活』12巻では、月ごとに全国そして各地に伝わる行事にこめられた、先人たちのこどもの健やかな成長や生活の安心を願う祈りと知恵をわかりやすくひもといています。このような時代だからこそ、もう一度長い間伝えられてきた思いを探り、未来へ向けて考えるヒントにしたいものです。

展示会では、『伝承遊び考』4巻(小峰書店)の膨大な資料の一部、『こどもの行事しぜんと生活』12巻の表紙を全てご覧ただけます。お楽しみください。

7月23日は海の日ですが、大海原の中、噴火が続く西之島の光景をニュースで見ました。海洋気象観測船「凌風丸」からの映像とのことでした。りょうふうまる、どこかで聞いたような、見覚えがあるような。。。そうです、『海』(1969年福音館書店)のこの場面。

『海』は19場面で構成される大型科学絵本で、これはその第16場面にあたります。巻末にある著者の解説によると「凌風丸は気象庁所属の1、200トンの観測船です」とあり、この本が出版された時期から考えるとこの絵にあるのは現在の凌風丸(3代目)ではなく、1996年に竣工された2代目のようです。

『海』のこの場面をもう少し詳しく見てみると「りょうふうまる」の上空には気象衛星、台風のたまごも描かれ竜巻もおきています。海底には海底地震、海中には地震津波が伝わる様子もあります。凌風丸は台風を含め洋上の空気、海水や海流、海底火山など海底の地形などを長期監視しているとのこと。

西之島では6月中旬からほぼ毎日高さ約2000メートル以上の噴煙が確認され、7月4日には最高の約8300メートルに達し気象庁火山課によると「マグマが大量に上昇している状態」だそうです。

この夏は海の家がない湘南の海岸ですが、はるか海上ではこうしてデータを集めながら航海している船があることを想い、目の前のことばかりが気になる日常から想像の翼を広げる時間を本とともに過ごすことを楽しみたいと改めて感じています。