編集室より

ご覧いただいているのが、でんがらでんえもん。右手を懐の中に入れ、小太りでこんな目つき。一体どんな人物だと想像されますか。

むらいちばんの金持ちで「じぶんのために かねを ため」るでんえもんの前に現れた、きたなじいさまに不思議な力を授けられます。最初は大喜びのでんえもんでしたが、はたと気づくと青ざめ、「どうしたものかと、じぶんの ひたいに手をあてた とたん」⋯

テンポの良い語り口調の文と表現力豊かな絵によって、瞬く間にでんえもんの世界に引き込まれます。あとがきをご紹介します。

あとがき

(引用はじめ)
この話は、古くから内外に伝わっていて、よく金銭欲を戒める題材として法話や修身の説話に登場してくるものです。

そうした「たてまえ」はあっても、現実の世界では、お金によって、時に幸福さえ買えるというのが、今の社会の実情です。そして、あこぎな金満家は、その富の力で権力や法律や世論さえ操作し、貧しい人々が生活の資を求め、才能をのばす経済的な基盤を得ようとする要求を、こうした「いましめ話」で断念させてきたのが、これまでのこの話の使われ方でした。

私は、それを単に富める人々をやっつける筋に変えたり、裏返しにするだけでは、つまらなく浅薄な事だと思いました。図式的な対立関係を固定的に考え、どちらが善くてどちらが悪いとわりきってしまうのでは、この話の一番大事な点をそこなってしまうのではないかと考えたのです。

どんなにひどい、道ならぬ考えや行動している者でも、それにはそれ相応の理由や立場やそうするに至った経緯があるものです。人間というものは、それによって同一人が、時に「仏」になり、「鬼」にもなるものだし、だから努力しなければならないという ことを前提にするからこそ、私たちは、子どもに良い本を与えたり、教育や指導を重視するのでしょう。自分もそうした一面を持った人間だということを忘れず、自己に対しては、強いおそれとつつしみを抱き、そして、社会の歪みや制度の悪に敢然と立ち向かってほしいというのが、この物語に託した願いです。
かこさとし
(引用おわり)


カエル

投稿日時 2017/06/08

〽︎カエルがなくから帰ろ

こんなことを言いながら家に帰る子どもの姿は、もうずっと遠い昔のことになってしまったようです。雨の季節に、カエルを加古作品の中から探してみることにします。

デビュー作「だむのおじさんたち」(1959年福音館書店)では、カエルも動物たちと一緒におじさんのお手伝いです。大規模なダム工事も、みじかな石運びだったら小さなお子さんにも理解できます。科学絵本でありながらこういう描き方をするのが加古里子です。

「わっしょいわっしょい ぶんぶんぶん」(1973年偕成社)では表紙をはじめ様々な局面で小さなカエルたちが出てきます。(上)


「おたまじゃくしの101ちゃん」(1973年)と続編の「おたまじゃくしのしょうがっこう」(2014年いずれも偕成社)はおたまじゃくしたちのお母さん、そしてお父さんも登場して大活躍です。

(下は「おたまじゃくしょのしょうがっこう」たいいくのじかん)

カエルしか登場しないのは、「うたのすきなかえるくん」(1977年PHP)。若い頃から演劇に興味があった加古だけに、この物語はまるで舞台で演じられることを想定して書かれたような展開の作品です。

上にご覧いただいているのは、「こどものカレンダー6月のまき」(1975年偕成社)の表紙です。この本の6月12日は、「かえるづくし」(下)で言葉あそびの面白さが絵によって倍増されています。

字がご覧になりにくいと思いますので右ページ上から下の順に列記します。

かんがえる、とりかえる、むかえる、ひっくりかえる、ふりかえる、みちがえる、うちへかえる

以前、美しい前見返しとしてご紹介した「あめのひのおはなし」(1997年小峰書店)は小さなお子さん向けの物語です。登場人物を中心としたすっきり画面にもかかわらず、細かい気配りがされた小道具が伏線として効果的に配されている点は見逃せません。カエルもその一つで、加古らしさ溢れるおはなしの表紙はご覧の通りです。

「こどもの行事 しぜんと生活 6月のまき」(2012年 小峰書店)にあるのは[いろいろな指あそび]で30ページには、
「人の手とゆびはすばらしいうごきをします。手や指をおもったとおりにうごかすことができるよう、手や指をつかうたのしいあそびをしてみましょう。」
とあり、指をいろいろ組み合わせて[ひねしょうが]、[リス]、[キツネのめがね]そして[カエル]などを作る手順が図解されてます。指を動かし口を開けしめさせてカエルの鳴き真似ごっこも楽しそうです。

カエルといえば、泳ぎの名手。科学絵本をのぞくと、「じょうずになろう およぐこと」(1981年評論社)では、バクテリア、いか、へび、アヒル、サカナ、イルカ、クジラとともにカエルの泳ぎ方が図入りで説明されています。

そしてもう一つの特徴はその跳躍力。「じょうずになろう とぶこと」(1982年評論社)によるとカエルは自分のからだの40倍の距離、12倍の高さまでとぶことができます。これは驚異的な跳躍力をもつノミを除き、他の動物や昆虫に比べ非常に優れた能力といえます。

「地球」(1975年福音館書店)水田の場面(下の絵)には、「つちがえる」「とのさまがえる」が見えます。こんな里山の風景は「出発進行!里山トロッコ列車」(2016年偕成社)の紫陽花咲く水田とも共通し、心安らぐ風景です。
同書では房総のカエルの種類もしっかり絵で紹介していますが、専門家によると他では聞くことが難しくなってしまったカエルの鳴き声が聞こえるそうです。

なんだか、カエルの大合唱が聞きたくなってきました。おしまい。

福井県越前市かこさとし ふるさと絵本館 石石(らく)でお配りしているカレンダーです。小さくてご覧になりにくいと思いますが、実物はB4サイズです。

4月から始まり緑の欄は行事、青い欄では「もとのえをみるへや」、つまり原画展示のお知らせで年に4回の展示替えがわかります。ピンクの欄で休館日をおつたえし、そのほか定例イベントの時間帯や1階のえほんのへや、あそびのへや、屋外ひろばの様子を伝えています。

ご来館の記念に是非お持ち帰り下さい。裏面も必見で本年度は3種類あります。いちばん小さいお子さん向けのものはこれです。

「行事とあそび こどものカレンダー5月のまき」(1975年偕成社)からの[どうぐしらべ]です。「いろいろなどうぐがありますね。だれがどんなどうぐをつかっているのか、わかりますか?」と本文にあり、左下には、「おうちのかたへ 動作と物を関係づけて認識する力は、日常生活のなかで注意してものごとをみる態度からうまれてきます。」と著者からの一言があります。

もう一枚も小さいお子さん向けです。

同じシリーズの10月の巻から[どうぶつのはやさくらべ]です。

そして最後は、「かこさとし あそびの大星雲 10ちえとちから わきでるあそび」(1993年農文協)から[せかいの こどもの こんにちは]。フランス、イギリス・アメリカ、スペインなど欧米はじめイラン、パキスタンやアジアの国々それに沖縄ことばなど、「こんにちは」の言い方が40の原語とカタカナで記されています。言葉に興味を持ったり、世界に目を向けるきっかけになれば嬉しいです。

このカレンダーにあるように、「あかいありとくろいあり」(1973年偕成社)の」展示は6月25日までですのでお見逃しなく。
6月26・27・28日は展示替えの為休館、6月29日からは「かいぶつトンボのおどろきばなし」(2002年小峰書店)を展示します。

[かこさとし からだとこころのえほん]という10冊シリーズが農文協から出版されています。初版は1998年ですから20年近く前のことですが、現在でもお子さんはじめご家族で読んでいただきたいテーマばかりです。体の仕組みや働きだけではなく、脳や神経、心の持ち方や大げさな言い方に聞こえますが、人間としての生き方のヒントになるようなことが、平易な文章ですべてひらがなで書かれています。

このシリーズによせて、次のような著者の言葉がカバーには記されています。
(引用はじめ)
なぜ、人間は歩いたり話したりできるのだろう。なぜ嬉しくなったり悲しくなったりするのだろう。子どもの素朴な疑問と悩みを通して、最も身近な存在である自分自身の体と心について、子供の目で見てみつめていく絵本です。

子どもは大人と同じ身体的機能や感情を持ちながら、伝達能力がつたないばかりに行動や感情表現の真意を大人に理解されないことが多いのではないか。

このシリーズは、子どものための絵本であるとともに、子どもから大人へのメッセージでもあります。
(引用おわり)

このシリーズでは、第2巻「びょうきじまん やまいくらべ」と第5巻「おとうさんのおっぱい なぜあるの」(上の写真)のみ文・画ともにかこさとしが担当していますが、他の巻では文のみ、かこです。巻末には綴じ込み付録がついています。

第1巻「わたしがねむり ねていたとき」(1998年 農文協 文・かこさとし 絵・栗原徹)の冒頭にある〈この本のねらい〉をご紹介します。

この本のねらい かこさとし

(引用はじめ)
誕生から死に至るまでの人間の生活時間を分類すると、睡眠に費やされる部分が大きいことに気づきます。「長い生涯」とか「働き続けた一生」であっても、「酔生夢死」とか「あとの半年位寝て暮らす」とか言われるように、人間の生きている実態上、大きな部分を「ねむり」が占めている訳です。

逆に言えば「ねている時」は「目覚めている時」の附属物ではなく、「生きていること」の重要な要素であり、さめている時間帯と共に「生きていること」を分かち合っている、とても大事な時なのだということを、「睡眠」は生きる上でなくてはならぬ、積極的な大事な意味と効用・役目を持っていることを、知っていただきたいのがこの本の願いです。そのねむりを充分とることによって、私たちの体も心も、生き続けることができることを、子どもたちに伝えたいと願っています。
(引用おわり)

むし歯予防

投稿日時 2017/05/24

むし歯は今から半世紀ほど前には子どもの大問題でした。

(1928年から1938年までは6月4日はむし歯予防デーとよんでいましたが、現在では6月4日から10日を「歯の健康週間」としているそうです。)

そこで生まれたのが以下のような絵本や紙芝居です。
「はははのはなし」(1970年 福音館書店)
「むしばミュータンスのぼうけん」(1976年童心社)
「むしばちゃんなかよしだあれ」(1976年而至歯科工業・1980年フレーベル館)
「6がつ6ちゃんはっはっは」(1978年童心社・紙芝居)
「ぼくのハはもうおとな」(1980年フレーベル館)
「むしばになったらどうしよう」(1981年フレーベル館)

この問題の深刻さをうかがえるようなあとがきが、「むしばミュータンスのぼうけん」にありますので、ご紹介します。

(引用はじめ)
現在、日本の子どもは、98%がむしばにかかり、平均9本のむしばを持っているという事実は、驚きと悲しみと怒りを私に与えます。
砂糖業者や菓子メーカーやテレビのコマーシャルや、なおしてくれぬ歯科医がわるいという声もききます。

確かに、それにも問題がありますが、こんなにも多くのむしば子にしてしまった兇悪無残な犯人は、極悪非道な悪者はーーーまぎれもなく大人、特にその子の親だということです。

文字どおり「甘やかし」、「アメをなめさせた」方々に反省を求めつつ、この本をおくります。私は、ひじょうに残念な気持ちでいっぱいなのです。
(引用おわり)

このあとがきが記されて40年を経た現在、子どもたちの口内の状況はどうなっているのでしょうか。
下は「むしばちゃんのなかよしだあれ」の前扉

その「むしばちゃんのなかよし だあれ」のあとがきもご紹介します。これは小さい読者のために全部ひらがなで書かれています。

(引用はじめ)
この ほんは にっぽんじゅうの こども みんなが むしばのない つよい からだの かしこいこになってほしいと おもって かいたものです。 なかに むずかしい ことばがあったら おうちの ひとや おとなの ひとに おしえてもらってくださいね。 かこ・さとし
(引用おわり)

かこさとしの絵本は子どもから大人まで楽しんでいただけるものが多くありますが、そのような本の一冊に「大きな大きなせかい」(1996年偕成社)があります。
お子さん達は文とともに絵を見て想像を広げてゆきますが、この本は大人にとっても絵を見て思いを巡らすことができる科学絵本です。

この本の冒頭には[はじめに]として、この本の見方の説明があるというのもユニークです。というのは、この本では次のページにすすむごとに長さで10倍、広さで100倍になるように絵が描かれてるのです。
最初のページに登場するのは、おこさん達の姿とおもちゃ。それが次のページになると同じ絵が2センチ足らずになってページ片隅に描かれ、そのページの絵の中心は高さが10倍のスケールで描けるような2階建の家やキリンです。その次のページではその家やキリンは2センチ角の中に収まってしまい、ページ全体に描かれいるのはさらに10倍つまり最初のページの100倍の長さのものとなります。家やキリンに比べクジラや東大寺大仏殿、飛行機がどんなに大きいのかが一目瞭然となります。こうやって、私たちが見慣れたものからだんだんと遠くまで、地球を超えて宇宙の遥かかなたまで、大きな大きなせかいが広がる様を体験できるのです。

もう一つこの絵本が科学絵本として特色あるのは、各場面が表す距離を1秒間で進む波長が記載されていることです。普段私たちの身の回りにありながら目視することができない電子レンジや通信放送用電波から地磁気など特殊な広範囲のものがあげられ、それに比較して光の速さがいかに速いかを知ることができます。

また、所々にそのページのスケールにはいっている酸素分子の数や水素原子の数などが示され小さなものの大きな数の明示は、この本の姉妹編「小さな小さなせかいへの伏線にもなっています。
それではあとがきをご紹介しましょう。

あとがき

(引用はじめ)
1970年の暮れ、NHKTVで宇宙についての科学番組の収録がありました。著名な学者先生の相手役を命ぜられた私は、手書きの1冊の絵本を作り、第1場面の人間から始まり、住宅、高層ビル、富士山と次々にページをめくり、最後の27場面で、「私たちの宇宙はこの大きさで、今日はこの話です。」とはじめることにしました。

その番組が放映になった当日、ある大手出版社の編集長がとんできて、その絵本をすぐにかいて欲しいと言われ、驚いたり熱心さに感心したりしました。まだ十分に調査もしていない思いつきだったので、そのときは丁重にお断りしたのですが、それがこの絵本をつくるもとになりました。

しっかり間違いのないようにと、集めた資料は山をきずき、楽しいものにしたいと厳しく選択して、その山を崩すことを何度も繰り返しながら、その間、めざましい学問の進歩やその成果を伝えたいと試みているうちに、あっという間に25年の月日が過ぎてしまいました。

すでに退職された、その時の仕事熱心な編集長に、お詫びとお礼の気持ちをこめて、この本を科学を敬愛する皆様にささげます。
(引用おわり)

様ざまな虫たちが活発に活動するのを目にする季節です。
かこさとし おはなしのほんシリーズから、てんとうむしを主人公にした「からたちばやしのてんとうむし」(1974年偕成社)のあとがきをご紹介しましょう。

(引用はじめ)
子ども会でのある日、ひとりの女の子が、にぎりしめた小さな手を、そっとひらいて私に中をみせてくれました。
どんな大事なものが、入っているのかとのそきこんだ私の目に赤いてんとうむしが一匹、チョロチョロとはい出し、やがて、やおら羽を広げて飛んでいきました。それを見送ったとき、その女の子は私の顔を見上げて、ニッと笑いました。その笑った歯の白さと飛んでいったてんとう虫の赤い色がこの作品を作る直接のきっかけとなりました。

西欧では、"淑女の甲虫"とか"レディーバード"とか呼ばれて可愛いがられ、日本でも各地のわらべうたに、
〽︎ てんとむし てんとむし
てんとさまの おつかい いってこい

〽︎ まんじゅうむし まんじゅうむし
まんじゅう かっておいで

とうたわれて、子どもたちのよい遊び相手となっています。

このてんとうむしを題材にして、①色の変化と身近な虫たちの四季の変化と身近な虫たちの習性をえがくこと、②てんとうむしの紋様や種類のくべつをおりこむこと、を目標に子ども会での理科教材として作ったのがこの作品のはじめの形でした。

今回、このシリーズに入れていただくため、やや文学的(?)なよそおいにかきなおしたものの、本来は、理科教材の昆虫編のひとつだったを考えて読んでいただければ幸いに存じます。
(引用おわり)

(上は裏表紙。右下に小さく「さ」とサインが入れられています。

あとがきには、「やや文学的な(?)」とありますが、「からたち」と言うと北原白秋の童謡を思い出す方もおられるでしょう。加古は川崎でのセツルメント活動を1970年夏、藤沢に転居するまで続けていました。今ではなくなってしまいましたがその頃には藤沢の家から海に向かう小道の傍に「からたち」の低い生垣があり、そこから着想を得たそうです。からたちばやしを舞台にしたてんとうむしたちの春夏秋冬をお楽しみください。

[2] ぺっちゃん救出・裏話

一つひとつできあがった花の名前を確かめて自分が組み合わせたブロックの前で大満足の記念撮影。ニッコリしていると何処からか声が聞こえてきます。
「助けて~」
ギャングありにさらわれたぺっちゃんです。ぺっちゃんを助けに向かいます。

ぺっちゃん、発見、救出。

この辺りまで来ると子どもたちはもう完全に「あかいあり」になりきっていて、ぺっちゃんを助けられた喜びが表情に溢れます。この満足感がぺっちゃんを閉じ込めたギャングありを退治しようという気持ちに変わります。

さて絵本では、ぺっちゃんがギャングに勇敢に立ち向かうのですが、このゲームでは残酷ではなく、でも思い切りギャングをこらしめなければなりません。

ここで裏話をご紹介します。
ぺっちゃんが木に登るのをどう表現するのか?このゲームを監修してくださった早未恵理さんが考案したのは子どもたちがぺっちゃんを木に登らせる手動エレベーター。

救け出したぺっちゃんをエレベーターに乗せてヒモを引っ張ると上がっていきます。上に到着すると子どもたちの視線からはぺっちゃんは見えなくなります。その時すかさずスタッフが「あっ!ぺっちゃんがあそこにいる!」

指差す先に「ぺっちゃん」を発見、となるようセットしておきます。

さあ、これからはぺっちゃんに加勢してギャングありを思い切りこらしめます。何しろぺっちゃんを誘拐した悪者ですから。こんなです。

ロープをゆらし始めると「がんばれ!」の大声援が絵本館スタッフやボランティアさんからも。
ギャングが水に落ちて「やったー!」拍手喝さい。
ギャングを次々落とすたびにその声も大きくなり大変な盛り上がり。

最後には、あかいあり皆で力を合わせ、ギャングから取り戻したビスケットを運びます。
「わっしょい、わっしょい」の掛け声にも力がこもり、子どもたちは汗をかき、ほっぺは赤く満面の笑みでゲームは終わりとなりました。

大型連休中は、このゲームの一部分を絵本館でお楽しみいただける予定です。
詳しくは絵本館までお問い合わせ下さい。電話 0778ー21ー2019

[1 ]春の草花ゲーム

2017年4月26日に4周年を迎えた越前市ふるさと絵本館では、「あかいありとくろいあり」(1973年偕成社)にちなんだオリエンテーリングが4月29、30日に開催されました。

絵本を読みきかせしてもらい、あかいありに変身したところで、絵本の世界と同じく、あかあり小学校終わりのカランカランという鐘の音が聞こえてきます。あかありちゃんに扮した子どもたちが出てくる小学校はご覧の通り。大きなスミレは越前和紙でつくられています。

学校帰りの道で見つけるのはツクシ。はかまのどこかを切っておいて、「どこが切れている?」とあてっこする遊びをしたことはありませんか。最近は草花遊びをすることが少ないようですが、身近な自然に親しむことで観察眼が養われることを願ってのゲームです。

準備万端のツクシ。切れているところを見ると、小さなお子さんにも読めるようひらがなで植物の名前が書かれています。

実際は下のように配置。黒子ならぬ黒ありがお子さんを見守ります。

女の子が見つけたツクシには「のげし」とあります。「のげし」はどんな草花でしょうか。

ここでも大人が観察を見守ります。実物の写真や図で花や葉の形を確かめて、段ボールでできた草花ブロック(写真後方)を組み合わせます。

さあ、しっかり見て・・・

完成するとこうなります。

かこ・さとし かがくの本 5「あまいみず からいみず」初版(1968年 童心社)は、かこさとしの絵によるB5変形・21センチの小型絵本でした。

上の写真はその表紙、下は裏表紙と28-29ページです。当時は4色刷り(カラー)が高価だったたため本文は2色刷りでした。

現在の大きさでカラーになったのは、初版から20年経た1988年で、この時に和歌山静子さんの絵に変わりました。

コップの実験からひろげる化学の推理

かこさとし画の版では、あとがきの見出しは「一般から特殊なものへひろげ演繹してゆく考え方」となっていましたが、1988年以降は「コップの実験からひろげる化学の推理」となりました。

あとがきの文は同じです。以下にご紹介します。

(引用はじめ)

「かがく」ということばはときどき困った場合が起こります。文字に書くと「科学」「化学」でわかるのですが、ことばや音だけでは説明がいることとなります。それでしばしばバケガクという言い方が、多少うらみをこめて言われます。

子どもの本、特に幼児向きの本で「化学」を扱ったものが非常に少ないというのがわたしには残念でなりませんでした。この本の塩や砂糖が水と引き起こす現象は、化学の中の溶解とか溶液とか濃縮という重要な項目の一つです。

また、小さなコップやおなべでわかったことがらを、大きな自然現象に拡張すること、手近な実験で確かめられた事実を、実験のできない現象にまで適用推論すること、そういう考え方、すじみち、手法は、化学の研究ではごく普通の、しかも大事なものとなっています。むずかしくいえば、一般的な事例から、特殊なものへひろげ及ぼしていく、いわゆる演繹法とよばれる考え方、すじみち、態度をくみとってほしいのが、わたしのひそやかな願いです。
かこ・さとし

(引用おわり)