編集室より
加古の絵本には本人らしき人が描かれているのはみなさんご存知の通りです。
『こどものカレンダー2月のまき』(1976年偕成社)の13日のページには、「なまえ」と題しこの日生まれた19世紀の歌劇作曲家ワーグナーと加古の自己紹介をしています。
「おうちのかたへ」のメッセージにあるように園に通うようになったら、自分の名前と家族の名前が言えるようにという準備を促すものです。
この本が出版された頃は、子どもたちは胸に名札を下げて園や学校に通ったものですが、今はそれが心配される社会になってしまいました。
ところで、この絵を見て気が付かれた方がいらっしゃることでしょう。この顔、どこかで見たような⋯ そうです。『かこさとし童話集』の背表紙、題名の上についている顔はこの絵から取りました。是非お手に取ってご覧ください。
童話集第7巻生活のなかのおはなし〈その2〉の表紙には、すいかやだいこん、かぼちゃなどがニコニコ顔でお祭囃子を演奏しています。
この絵は、この巻に収録している『おどろいた小さな八百屋さん』が最初に演じられた1957(昭和32)年当時に描かれた手描きの紙芝居からです。
当時はスーパーマーケットはほとんどなく、肉は肉屋さん、魚は魚屋さんという具合に小売り店で買うのが普通でした。お米は米屋さん、お酒やビールは酒屋さんが届けてくれました。豆腐は夕方になるとラッパを鳴らしながら豆腐屋さんが自転車で売りにくるので、鍋やボールを持って通りに買いに出たものです。
新聞の4コマ漫画で「八百屋さーん!」と吹き出しに書いてあり、「このハッピャクヤってなあに?」と加古に聞いたのは幼い頃の筆者です。加古は笑いながら「これはやおやと読むんだ。」と教えてくれました。まいったなあ、という気持ちと何やら嬉しさがいりまじった加古の表情でした。
『からすのやおやさん』はひらがなで書かれていますが、この童話集ではあえて漢字で書いているのは、筆者の思いこみかもしれませんが、「ハッピャクヤ」ではなくて「やおや」と読むんだよ、と教えてくれたその時の加古の「こどもが漢字を読む時の読み方」の発見と関係しているように思えてなりません。
そんなことはさておき、思わず笑ってしまう「おどろいた小さな八百屋さん」のお話をぜひお楽しみください。
この本は1985年ポプラ社から「かこさとし こころのほん⑧」として出版されました。心の問題を絵本にするのは、当時は大変まれなことでした。あとがきにもあるように、同年出版された紙芝居を絵本にかきかえたものです。
あとがきをどうぞお読みください。
あとがき
(引用はじめ)
このものがたりは、1985年全国心身障害児福祉財団からの依頼でつくった「ふれあい紙芝居」の作品がもとになっています。
今、いろいろなところで森を大事にしたり、動物を愛護する運動が行われています。とても大切なことと思います。
ところがそうした中で、私たちの近くで、心身にハンデをもつ子に対して、思いやりのないいじめや、冷たい無関心が今なお横行しているのに、じっとしておられず、私の思いを「きいろいクジラ」にたくしたのです。
どうか、みんなの心に朝の光が差してくるよう祈ります。
1985年12月 かこさとし
(引用おわり)
昨年秋から刊行中の『かこさとし童話集』が藤沢の4市民図書館に寄贈されたことを伝える記事が掲載されました。
刊行の経緯や込められた思いについても触れられています。記事は以下でどうぞ。
タウンニュース 童話集寄贈
半世紀暮らした藤沢の図書館へ「地元の方にもぜひ」
2024年1月に加古が晩年の48年間暮らした藤沢市の4図書館に童話集を寄贈したことを詳しく報じていただきました。
1970年に藤沢に転居してから楽しみに富士山の姿を眺めていたこと、2017年年頭の「広報ふじさわ」の表紙(下)に絵を描いたことなど藤沢市にまつわることも紹介する紙面でした。
途中までですが以下でご覧ください。
朝日新聞 童話集寄贈
能と並んで古い伝統を持つ狂言ですが、面をつけずに演じ笑い話のような内容が多いので
親しみやすいともいえるでしょう。
加古は大学生時代に演劇研究会に属していたこともあり、演劇や舞台芸術に大変興味を持っていました。歌舞伎や文楽についても『子どものカレンダー』で取り上げたりしています。
そして狂言については『あそびの大惑星1 たいこドン ふえピッピのあそび』(1991年農文協)で、「こども きょうげん きつねばやし』を載せています。大名(だいみょう)が六人の冠者(かじゃ)を呼び寄せ、それぞれを白、黄、赤、青、ちゃ、黒のきつねにになって踊るうちに本物のきつねも混じってお囃子が続くという内容です。
繰り返しとにぎやかな歌とおどりが楽しい、子どもでもわかるものです。
そしてこの度刊行された『かこさとし童話集』第5巻にも子ども狂言「はるのおどり はなのまい」があり、言葉遊びのようなセリフが続きます。大きな声で舞台で演じているつもりで読むと楽しいものです。是非、試してみてください。
加古が亡くなるまでの晩年48年間を暮らした藤沢市にある4市民図書館に『かこさとし童話集』が寄贈されました。
今年の干支である龍が表紙にある4巻、江ノ島にまつわる天女と五頭竜の話を収めている5巻など1巻から6巻までをお年玉のこの時期に寄贈、7巻から10巻までは出版され次第寄贈の予定です。
東京新聞 童話集寄贈
なお、2024年1月12日神奈川新聞および読売新聞朝刊にも掲載されました。
藤沢市内にある4市民図書館に飾っているかこさとしの複製原画が掛け替えられました。
お近くの方は是非ご覧ください。
詳しくは以下でどうぞ。
藤沢市民図書館
かこさとしが晩年の48年を過ごした藤沢市にある4市民図書館に『かこさとし童話集』が寄贈されました。
本年の干支の龍の絵がある4巻、藤沢市にある江ノ島の縁起についてのお話をおさめた5巻の出版を待って迎えた2024年1月10日に寄贈式が行われ、その様子が2024年1月11日、テレビ神奈川のニュースで報じられました。
テレビ神奈川 童話集寄贈
約40年前、1975年出版のこの本の「あとがきーおうちの方や先生方へ」には、加古の歯に衣着せぬ思いが記されています。
どうぞお読みください。
あとがきーおうちの方や先生方へ
(引用はじめ)
お正月は、もちろん一年のはじめの月です。ですから、昔も今も、過ぎた年の無事を祝い、みのりや努力の結果が良くなるよう、新しい年への願いをこめる大事な月です。それらが新年の行事となり、食事や風習、遊びなど、生活全部にわたって行われてきました。古くさいとか迷信とかいうまえに、そのように自分の生活に真剣に立ち向かっていた先祖の姿勢を私たちは、今、科学が発達して便利になった中で、方法こそちがえ、もっと受けつぎ発達させていかなければならないのではないかと考えます。そうした考えから、できるだけたくさんお正月にちなむものを、このまきにとりいれました。
また、グリム、ペロー、キャロル、ミルンといった児童文学作家や、セザンヌ、ミレー、黙阿弥、マネ、白秋、シューベルトなどの芸術家と関係深い月ですので、それらのことにもふれました。
子どもたちをつつむ、社会や環境を、子どもたちの力や才能を充分のばしていけるよう整備するか、逆に、文化の名に値せぬ非建設的なタイハイ的な状態のままにしておくかは、一に今のおとなたちの態度にかかっています。親たちがかしこく、誠実で、人生に真剣に立ち向かうかどうか、それが、これから何十年後かの子どもたちの時代を、真の幸福な時代へと発展させることでしょう。
ご自愛とご活躍をお祈りします。
(引用おわり)
本文は縦書き、漢字にはふりがながあります。