2024年11月26日神戸新聞〈日々小論〉『こどものとうひょう おとなのせんきょ』紹介
国内外で選挙に関しての話題が多かった2024年です。
11月24日の神戸新聞〈日々小論〉では、かこさとしの『こどものとうひょう おとなのせんきょ』を取り上げ、あとがきを引用しながら「メディアの選挙報道はもちろん、交流サイト(SNS)の情報発信のあり方など、さまざまな観点で検証が求められている」としています。
以下は、そのあとがきです。
国内外で選挙に関しての話題が多かった2024年です。
11月24日の神戸新聞〈日々小論〉では、かこさとしの『こどものとうひょう おとなのせんきょ』を取り上げ、あとがきを引用しながら「メディアの選挙報道はもちろん、交流サイト(SNS)の情報発信のあり方など、さまざまな観点で検証が求められている」としています。
以下は、そのあとがきです。
絵本の多くにはカバーがかけられていますが、福音館書店の特に小さいお子さん向けの絵本にはカバーがありません。たとえば「だるまちゃん」シリーズや「ことばのべんきょう」シリーズなどがそうです。
これはカバーがあると小さいお子さんが本を持ちにくいということからなのではないかと想像しています。一方絵本でも、もう少し上の年齢の方がお読みになるであろう『海』『地球』『宇宙』『人間』にはカバーがかけられています。
カバーは表紙の汚れを防ぐ意味もあり、1968年に童心社より出版された「かこさとし かがくのほん」10巻シリーズ(旧版)には透明のビニールのカバーがかけられていました。
ほとんどのカバーは表紙と同じ絵が印刷されていますが、『万里の長城』(2011年)は龍のカバー(上)を外すと長城(下)が現れます。
表紙がソフトカバーの場合はカバーと表紙が違うことが多く、『だるまちゃんと楽しむ日本の子どものあそび読本』(下左・2016年福音館書店)はカバーを外すと旧版ともいえる『日本伝承のあそび読本』(下右・1967年福音館書店)を彷彿とさせるオレンジ一色の表紙が目に飛び込んできます。
この本の仕掛けを参考にしたのが『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社)です。この年開催の Bunkamuraでの展示会の公式図録でもあり、表にはだるまちゃんとだるまこちゃんにからすのお父さん、お母さん。裏表紙にはからすの一家が飛んでいますが、このカバーの下から現れるのは、モノクロのペン画です。
ちょっと怖そうな恐竜の背中には子どもが乗っていて恐竜たちの言葉には加古のユーモアたっぷりのセリフがそえられています。
カバー上にまく、帯はずいぶん前からあるようですが、最近は『からすのパンやさん』ホリデー版のように、カバーとほぼ同じ大きさの巨大帯まで登場しています。
2024年11月21日に出版の『かこさとし 新・絵でみる化学のせかい』5冊シリーズにも帯が巻いてあり、【かこさとしの人気化学絵本シリーズが最新データと学説で生まれ変わった! 監修 藤嶋昭】とあります。
『太陽と光しょくばいものがたり』(2009年偕成社)の共著者でもある藤嶋先生がいらしたからこそ新版にすることができました。
そして嬉しいことには、各巻に著名な方からのコメントが掲載されています!
東京大学名誉教授の養老孟司先生からのメッセージです。
【化学の説明を通して、かこさんの自然やこどもに対する深い愛情が伝わってきます。子どもに愛される本だと思います。】
養老先生とは加古は対談でお話をさせていただき、このような心に響く言葉をいただきました。
コメントは絵本作家 ヨシタケシンスケさん。味わい深い絵も添えていただき感激しております。
【思いやりと賢さとユーモアを携えて 人を、世界を、未来を信じていく。かこ先生の本は、私たちにとっててひとつの大きな「答え」であり、「問」でもあり続けるのです。】
『水とはなんじゃ?』(2018年小峰書店)の絵を描いていただいた絵本作家 鳥の巣研究家の鈴木まもるさんが、心を込めて嬉しいメッセージをくださいました。
【「そうだったのか、なるほど!」身近な絵の具やテレビ、半導体など、知っているようで知らないことばかり。かこ先生が描く昔の名画との組み合わせが心暖かく秀逸です。】
『ちっちゃな科学』(2016年中央公論社)の対談でお世話になった福岡伸一先生が、自ら「生物と無生物のあいだ」著者・大推薦!と太鼓判を押してくださいました。
【ビッグバンからRNAワクチンまで。網羅的想像力が全開。しかも科学技術万能主義への警鐘も。かこさとしの真骨頂ここにあり。】
そしてもう一方、加古が直接お目にかかる機会がなかったのですが、宇宙飛行士 東大特任教授の野口聡一さんからも力強い応援メッセージをいただきました。
【科学技術の光と影を描き続けた、かこ先生のメッセージが時代を超えて蘇る! 資源とエネルギーが循環するサステナブルな未来像を、なつかしいイラストで教えてくれます。】
いずれも加古が読んだら大いに照れることしきりでしょう。
メッセージを寄せてくださった方々にこの場をかりて心より感謝申し上げます。
加古は読者の皆様が出版社にお寄せくださる読者カードを拝読するのを何よりの楽しみとしていました。今は亡き加古ですが、皆様の率直なご感想を出版社を通してお聞かせいただけたら幸いです。
「大きなもの」と聞いて何を連想されますか。
『ピラミッド』、『万里の長城』、『ならの大仏さま』⋯いずれも加古作品になっていますが、2024年11月16日の福井新聞「越山若水」では、その冒頭で加古のデビュー作『だむのおじさんたち』(1959年福音館書店)を紹介しています。
今からさかのぼること65年前、まだ戦後の復興途中にあった日本では電力の供給が追いつかず夕方になると停電が起きたりしていました。当時福音館の編集長であった松居直さんに「時代にふさわしい大きなテーマ」の絵本をかいてほしいと言われてかいたのが、水力発電のため次々と建設されていたダムについてでした。
その後、読者さんからのお手紙をきっかけに、国際協力でインドネシアに建設されたチラタダムを取材して『ダムをつくったお父さんたち』(1988年偕成社)を出版することとなりました。
この福井新聞ではじめて知ったのですが、福井県では足羽ダムが5年後の完成を目指し建設中だそうです。そのスケールの大きさに圧倒されたと記事を書いた方の感想がありました。加古が存命だったら、出かけて行って3冊目のダム絵本に挑戦したかもしれません⋯
加古の2冊のダム絵本については当サイトに詳しい記載があります。
普段あまり彫刻に馴染みがなくてもロダンの「考える人」は思いうかびます。
筆者は幼い頃、展示会に出品した作品を見に加古に連れられて上野で見た覚えがあります。「カレーの市民」の市民の意味がよくわからず、「考える人」の姿に大人はこんなふうに考えるものなのかと感じたことを覚えています。
加古が唯一出版社に依頼して刊行された『うつくしい絵(1974年偕成社)に続く『すばらしい彫刻』(1989年偕成社)では11月12日に生まれたロダンのこういった作品も紹介しています。
この有名な姿勢は実際に同じポーズをしてみるとわかるように、大変不自然で難しいのです。
(引用はじめ)
ひとのすがた そのままではなく、にんげんの ふかい なやみが わかるように ロダンがあたらしく あみだした かたちなのです。
(引用おわり)
そして「考える人」は「地獄の門」の一部として「つかうためにつくった」ことが写真入りで解説され、その「考える人」がなぜそれほどまでに深刻なのかが納得できます。
この本の最後は次のようなメッセージで終わります。
(引用はじめ)
わたしたちも きているものや ことばや うわべのきれいさではなく、すばらしい彫刻のように
かたちや すがたの なかにある たいせつなものを いつまでも おいもとめてゆきたいと おもいます。
(引用おわり)
こちらは「考える人」を加古が描いたもので、こどもや犬が同じ姿勢をしようとしていますが、それとともに筋肉の様子を描いています。
見出しには「人間を守る化学のはたらき」とあり、どんな関係があるのかと思われるかもしれません。
2024年11月下旬に出版される『新・絵でみる化学のせかい④地球と生命 自然の化学』の一場面で、「人間は、数十兆もの細胞のあつまりでできていて」「この細胞は、おもにたんぱく質と核酸という、生命の活動をささえる化学物質でつくられている」と説明が続き、細胞の図も掲載されています。
この『新・絵でみる化学のせかい』シリーズは特に3巻を中心に名画などを使って、内容をわかりやすく印象に残るよう工夫されていますが、4巻のこの絵もその一例です。
「考える人」が美術の本にも化学の本にも登場するのが加古らしいところです。
この姿勢をまねて筋肉を痛めたりすることがないようにお願いいたします。
6年ぶりに新しい素数が発見されたというニュースが伝わりましたが、素数とは1とその数以外に約数がない数で、すべての自然数は素数の積になっています。英語ではprime numberといいます。(英語だと何か特別な感じがしますね。)
ところで、具体的にある自然数がどの素数の積になっているのかを調べることを「素因数分解」といい、中学数学でも学習します。『科学者の目』(新版2019年・童心社)に登場するガウスは、18世紀の終わりにこの素数が自然数の中にどのように分布しているのか予測を立てました。それから百年以上も経った19世紀の終わりに、ガウスの予測が正しいことが証明され、素数定理と呼ばれるようになりました。この定理はのちの数学の発展に大きく貢献しました。
『科学者の目』(新版2019年・童心社)では「数学の王さま」と呼ばれるガウスの若い頃の逸話や「算術幾何平均」などを紹介「真実をどこまでも追求するすばらしい「科学者の目」となったのである」と結んでいます。
10月27日(日)、選挙や地域のお祭りと重なる日曜日でしたが、定員いっぱいの皆様にお集まりいただき、この春全10巻の刊行が終わった『かこさとし童話集』についてお話しをいたしました。
246話からなるこの童話集は、一番古い作品は大学卒業前の1947年に執筆、翌年に上演した童話劇「夜の小人」の脚本、一方新しいものは2010年ごろ加古が80代の作品に至るまでを収録しています。
全部ひらがなが書かれた、ことばを覚え始めたお子さん向けの作品から文語調の格調ある韻文に至るまで実に多種多様の作品が含まれていますが、1ー3巻は動物のおはなし、4、5巻は日本のむかしばなし、6−8巻は生活のなかのおはなし、9、10巻は世界のおはなしという構成で各巻の最初や最後にはメッセージ性の強い作品が来ること、各ジャンルのお話が複雑に重なり趣のある作品となっていることなど例を挙げ、その一部を朗読しながらご紹介いたしました。
生活のなかのおはなしは、加古が20代後半からおよそ20年間取り組んだセツルメント(ボランティア)活動で子どもたちがかいた作文と絵を活かして、加古が作品化したもので特色があり、「自転車にのってったお父ちゃん」を動画でご覧いただきました。
限られた時間で多数の作品をご紹介したく駆け足でしたが、ご質問にお答えする時間も少し取ることができました。大変熱心に頷きながらお聞きくださった皆様と読書週間の最初の日に大変貴重な時間を過ごすことができました。
ご清聴いただいた皆様、この会のためにご準備くださった方々に心より感謝しております。
楽しいお話、心に響くお話など子どもも大人も楽しめる『かこさとし童話集』作品の読み語りの催しが図書館スタッフにより開催されます。
どなたでもご参加いただけます。2階ホールに直接お越しください。
紙芝居といえば幼稚園や保育園でご覧になったでしょうか。
ご自分で演ずることはあまりないかもしれませんが、紙芝居にまつわる話題をお届けします。
加古が子どもたちのためになることをしようと思い至り20代はじめ、会社員の時に人形劇と紙芝居の勉強を始めました。人形劇は劇団プークで、そして紙芝居は童心社の前身、教育紙芝居研究会の会合に参加し自作を披露、合評会を通して学んでいったようです。
後に、その童心社からは多くの紙芝居を出版する機会をいただきました。現在販売されているものは、かこさとし かがくのいりぐちシリーズで以下の5作品と『みんなげんき ピヨピヨ1・2』です。
『あめふってきた ゆきふってきた』
『うみのはなし』
『スイスイおよごう スイミング』
『せぼねのはなし』
『6がつ6ちゃん はっはっは』
『みんなげんんきピヨピヨ1・2』は、小さいお子さんも大好き、誰でも思わず笑顔になります。
セツルメント活動で子どもたちに見せていた手描きの紙芝居や、現在出版されていないものなど150あまりを作りました。その全部をご紹介しているのが書籍『かこさとしと紙芝居 創作の原点』(2021年童心社)です。
全部と言えば、上記のようなフェアが開催され、かこさとしの作品と拙著も並ぶそうです。紙芝居を本屋さんでお手にとっていただくことはなかなかできませんが、この企画ではじっくりご覧いただけそうです。
詳しくは以下をどうぞ。
同音異義語は子どもにとって、ちょっとややこしいものです。目と芽、歯と葉、鼻と花などだるまちゃんの「だるまどん」でなくても混乱を招くことになりかねません。
お話をご存知ない方のためにお伝えすると、「てんぐちゃん」のトンボが止まる長い鼻を見た「だるまちゃん」はおとうさんの「だるまどん」に「てんぐちゃんのような長いハナがほしい」と言ったところ、だるまどんが用意してくれたのは花!だったのでだるまちゃんは怒ってしまいます。
童話集⑦の最初にある「めと はと はなの はなし」はまさにこの同音異義語について全部ひらがなでわかりやすく、特に体の働きを中心に説明しています。
このようによく使われる同音異義語とは別に、それほど頻繁に使われてない言葉の場合、それはそれでまたややこしいようです。
「ひいらぎ」で思い出すのはクリスマスにも登場する柊でしょうか。ところが魚の名前でもあります。
「かます」は魚しか思い浮かびませんが、土嚢(どのう)袋の元になったものを「叺」(かます)というそうです。ムシロを折って袋のようにして縄をかけて使います。実はこの言葉は童話集⑥の『ぼくの母ちゃん』に「かますの縄かけ」という言葉ででてきます。
馬連(ばれん)をご存知でしょうか。版画を刷るときにこする物で、竹の皮でできたものを使ったことがあります。一方、纏(まとい)の下の垂れて別れている部分もバレンというそうです。
近頃庭に植えられているのをよく見るエキナセア(下)は花が咲き終わるとこのバレンのように花びらが下に垂れてしまうので別名バレンというのだとか。
ものには名前があるのは当然ですが、まだまだ知らない名前があることに気づかされるこの頃です。
秋は運動会の季節。猛暑の影響で時期を遅くすることがあるようですが、学校行事のなかで1番の注目かもしれません。
昭和30年代の運動会では、足元は「はだしたび」がお決まりで、帰る頃には、指先あたりが擦れて穴があくので、高学年になると、はだしたびをはいた上に運動靴をはいて登校しました。
赤白ハチマキや赤白帽は今でもかわりませんね。
昭和時代に小学生だった筆者にとっては玉入れ、大玉ころがし、綱引き、徒競走といった種目が思い浮かびます。
加古作品の中にも登場しています。
『ことばのべんきょう②くまちゃんのいちねん』では玉入れ(上)、綱引きに加え二人三脚とかけっこ(徒競走)が描かれています。
『ことばのべんきょう くまちゃんのいちねん』
『こどものカレンダー10月のまき』
小学校に上がったばかりの頃、二人三脚の意味がわからず加古に尋ねると「脚というのは足のことで二人だけれど足を結んで一緒に動かさなければならないので3本の足のようだから、こういうのだ」と教わりました。
『とんぼのうんどうかい』(下)では、玉入れの代わりにたまわりです。
『どろぼうがこうだいうんどうかい』では大玉ころがしや、綱引きのほか、逆走100メートル走(下)や「ドルばこリレー」「ニセさつわたし」など世にも珍しい種目がプログラムに並んでいます。
綱引きは簡単ながら全員参加できる競技で、『とんぼのうんどうかい』にもあるように空中でもできるようです。『だるまちゃんしんぶん あきのごう』(下)では、「そらまめようちえん」の運動会のおしまいに綱引きで白組が勝ちというニュースも絵入りであります。
童話集③にも「かにちゃんおーえす かめちゃんおーえす」(下)という綱引きのお話があってこれはなかなか面白いので是非お読みください。
今年の運動会、みなさんはどんな種目に参加したり応援したりするのでしょうか。
秋の花で思い浮かぶのは秋の七草、ヒガンバナ、菊、コスモス⋯。
加古は秋が大好きで、コスモスの花もよく描いています。
『世界の化学者12か月』(偕成社・上)の9月のカレンダーにはコスモスが添えられています。『秋』(2022年講談社・下)の美しいコスモスは大変印象的です。
コスモスの特徴は綺麗な花の色と風に揺れる繊細な作りでしょうか。若い頃にはそんな風情を詩に書いたりしていた加古です。
下の場面は『あそびの大星雲3みごと はなやかなあそび』(農文協)からです。
その雰囲気が残る言葉から始まりますが、コスモスの花のしくみの科学的な説明もあり、加古自身が数えて調べた、まるで理科の観察記録のような数字が並びます。
かこさとしらしさは花を使った遊びの紹介(小峰書店『あそびずかん あきのまき』)にとどまらず、
『こどものカレンダー10月のまき』(偕成社)の目次のページにはこんなユーモラスな絵もあります。
この秋、コスモスを見かけたら、しばし目をとめてご覧ください。