編集室より

バナナからつくられる紙のことが最近話題になっていますが、2001年学研から出版された『ミラクル バナナ』という絵本は、バナナの茎の繊維を利用してつくられた紙でできており、かこさとしは文章を提供しています。

この本は、日本のODA(草の根無償資金協力)によりハイチ大学で実施したバナナ紙製造セミナーがきっかけとなり、ハイチやジャマイカの大使館、日本の大学や和紙職人らによるバナナ・ペーパー・プロジェクトの一つとして生まれたものです。

ハイチの人たちによる作と絵を元に日本語の文章をかこが担当、帯にはこうあります。

バナナのかみでできた絵本

(引用はじめ)
バナナといえば、おいしいくだものや、甘い香りのキャンディだけではありません。バナナから、きれいな紙ができるのです。さあ、バナナの絵本のすばらしさをぞんぶんにあじわってください。
加古里子(かこさとし)
(引用おわり)

また、以下のような、あとがきにかわる短いメッセージを書いています。

世界の子どもたちへ

(引用はじめ)
絵本をひらくと、自然の香りがするでしょう。やさしいおいしさに、引きこまれるでしょう。輝く太陽の、色と光につつまれるでしょう。
(引用おわり)

5月は祝月? 悪月?

(引用はじめ)
5月はこいのぼりや武者人形の飾りなど、男の子の成長をいわう行事の月とされています。しかし、中国から伝わったのは、「5月は悪月なので、邪気やけがれをのぞくため、薬草をとりヨモギやショウブを軒につるす」ということでした。

いっぽう、5月は田の神さまにまもってもらうため、たかい棒の先にスギの葉をつけ、田植えの目印にしていました。

これらのことがいっしょなって端午の節句の行事となり、3月のひな祭りが女の子のいわいごとであるのにたいして、男の子のいわいごとなりました。

ちまきなどのたべものも、薬草の類で、その由来は屈原の死をいたむ、かなしい伝説ですから、5月は健康にいっそう注意するようにしましょう。
(引用おわり)

尚、本文は縦書きで全ての漢字にふりがながあります。

まもなく迎える5月には母の日、6月には父の日がありますので、「まま、パパ」が題名に入っている「かこさとし 食べごと大発見9」のまえがきにあたる「この本のねらい」とあとがきをご紹介します。

この本のねらい ご整腸への感謝

(引用はじめ)
子どもたちの食事の嗜好調査によると、野菜は嫌い、低位の部になっています。そこで緑黄野菜は体に良いとか、ビタミンやミネラル、さては繊維質は胃腸の働きを助けるとか、整胃整腸作用が美容のもとだと言った論ですすめようとする方策がにぎやかです。

結構なことですが、食事は理屈ではなく、食べるのは当人の意向です。だから例えば、畑仕事が手間取り、とうに正午がすぎた時、もいで塩も何もつけずに食べたきゅうりが満足をもたらすように、空腹とおいしさ、もっと突き詰めれば正しい全身の運動、筋肉の活動と、適切で巧みな調理が、野菜のご馳走の基本なのではないのかと留意して、特に美味しく楽しい野菜の本にするよう心がけました。

どうぞよろしく。ご整腸(!)ありがとうございました。
(引用おわり)

あとがき

(引用はじめ)
食卓の皿やおはちに、肉や魚や、卵のないときがあっても、野菜は必ず出てきます。ことさら野菜料理とか、葉っぱのおひたしを大皿山盛りと言うことはなくても、みそ汁の中や、あぶらげの横にそえられているのが野菜です。

お料理の主人公としてでてくるのはまれですが、脇役としていつもひかえ目であるが、しっかり役目を果たしている野菜は、太陽と空気、そして大地が育てた産物です。脇役でつつましくひかえている野菜は、そうした大きな力、みずみずしい活力、無限の恵みを毎食卓、少しずつ運び、伝え、はげましてくれているように思います。

その白やみどりの手紙や歯ざわりの良いメッセージを、どうぞこれからもよく味わって、よんでください。
(引用おわり)

4月23日は「子どもの読書の日」そしてその日から5月12日までは「こどもの読書週間」だそうです。
福井県立ふるさと文学館では、これにちなみプロローグゾーンにて、「ふくいゆかりの児童文学」展を開催中で、かこ作品の中から『未来のだるまちゃんへ』の表紙複製原画を展示しています。

4月からの新しい環境に緊張がちな日々、幼い頃にお気に入りだった絵本を読んで、心を落ち着けるのはいかがでしょうか。 もちろん、新しい分野の本に挑戦するのも素晴らしいことです。

子どもにとって、外遊びが大切ですが、一日のどこかで本を手に取る時間、習慣を身につけることは大きな意義のあることに違いありません。

下のような場面から始まりますが、春の夜空のお話です。
「あとがき」をご紹介します。

(引用はじめ)
夜空の星を見て、なぜ光っているんだろうと考えたり、これから宇宙や星のことをうんと知りたいなぁと思っているみなさんに、この“星の本”をおおくりします。はじめて読む人や、ちいさい子どものための、やさしくてたのしい、いい星の本を見ていただきたいと、ながいこと、しらべたり考えたりしてきました。

さいわい藤井旭さんが、素晴らしい春の星の写真をたくさんとってくださったので、ようやくそのねがいがかなえられました。北斗七星や“たすきのちかちゃん”をおぼえたら、外へ出て春の大三角形や、スピカの星をみつけて、星をすきになってください。
(引用おわり)

“たすきのちかちゃん”とは一体なんでしょうか。かこさとし流、お子さん向けのあるものの覚え方の出だしです。この後に続きがあるのですが、ヒントは、最初の”た“は“太陽”の“た”です。

春の野辺で楽しそうに遊ぶ子どもたちの表紙は、見ているだけでもワクワクしてきます。

草花遊び、虫や鳥、空模様など自然の中で楽しむ方法や、手品あそびや折り紙、文字あそびなど盛りだくさん。一人で遊べるもの、みんなで楽しめるもの、いずれも今すぐできるものばかりです。

「あそびずかん」4巻に込めた著者の思いが表紙カバーにあります。

子どものあそびがもたらす実り かこさとし

(引用はじめ)
子供の遊びは、楽しみながら知恵や力を伸ばし、体や心を育てゆく実りをもたらしてくれます。
しかし、いやいやながらやおしつけでは、良い実りにはなりません。
小さい子があそびのおもしろさを知ると、いろいろ考え、探し、工夫して、自分に合ったあそびにしてゆきます。
この「あそびずかん」は、書いてあることがわかって、すすんであそびができるよう、絵と言葉でやさしくつづった、子どものあそびの本です。
(引用おわり)
漢字にはふりがながあり、縦書きです。

はるのまき まえがき

(引用はじめ)
このほんは ちいさい このための はるの あそびの ほんです。そのため、よういするものや あそびかたなどは、ぜんぶ ひらがなで かいてあります。こどもは ちいさいときは たのしい あそびを しながら くふうを したり、ちえを みがいたりして、てや あしや からだ ぜんぶを つかって うごくので、ぐんぐん すばらしく そだってゆきます。
ですから、どうぞ げんきに はるの あそびを たのしんでください。
(引用おわり)
上記のように分かち書きになっています。下は、まえがき、もくじに続く「くさつみ、はなつみ、さんさいとり」の場面。

はるのまき あとがき

(引用はじめ)
本書は主文をひらがなで記述しているところからおわかりのように、3歳ごろから小学校1、2年生頃の幼い子供のためのやさしい遊びを選びました。やり方や内容がすぐに理解できて、興味を覚えると自分ですすんで体の各部位や指先までうまく使おうとはげみ、もっている知恵や能力を総動員して挑戦を続けます。この面白さに推進された心身のいとなみが、幼い子のよき成長の原動力となってゆきます。どうぞたっぷり春の遊びを楽しまれるよう、はげましていただきたいと念じます。
(引用おわり)
漢字には全てふりがながあります。

2018年4月26日に開館5周年を迎える福井県越前市ふるさと絵本館では、だるまちゃん、マトリョーシカちゃん、そしてからすに変身できる衣装を揃えています。ご覧のような新しい帽子に、写っていませんが、チョコちゃん、リンゴちゃん、レモンちゃん、オモチちゃん色のマントも出来上がりました。

大人用、小さなお子様用の2種類のサイズがありますので、是非この衣装をまとってからすの気分に慕ってみてはいかがですか。絵本館でお待ちしています。

2018/03/14

ランドセル

小学校入学の思い出はランドセルとともによみがえってきます。背中より大きなちょっと重いランドセルは小学1年生にとって大人に近づく自覚を促す特別な道具のようでもありました。

加古作品にも、そんなランドセルを背負った小学1年生が登場します。上は、『ことばのべんきょう 2くまちゃんのいちねん』(1971年福音館書店)、下は、『こどものカレンダー4月のまき』(1975年偕成社)で、当時の小学一年生の姿を現しています。昭和時代の小学生はまさにこんな感じでした。

『おたまじゃくしのしょうがっこう』(2014年偕成社)は、「おたまじゃくしの101ちゃん」の続編です。小さなおたまじゃくしのたちに後足が生え、ランドセルを背負って「いちべえぬま小学校」にはいって勉強をします。ずらりと並んだランドセルは小さくてカラフル。

3月13日に出版された、かこさとしが小学校卒業にあたり学校で書いた作文と絵からなる『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)は、満開の桜の下ランドセルを背負った自身の小学校入学の様子から始まります。今から85年以上前の小学校一年生。

桜の開花時期が早まっても、いつの時代でも 日本人にとっては入学式に桜は欠かせないもののように思います。

「はじめに」にあるようにこの本は、『あそびの大宇宙全10巻』(1990〜1991年)を492ページの一冊に再構成編集したものです。著者の言葉をご紹介します。

はじめに

(引用はじめ)
私は戦後、川崎の戦災跡の工場労働者住宅街で、会社に勤めながら子ども会を25年間していて、遊びのもつ野生的な楽しさと生きる意欲を、子供たちから教わりました。その後、会社を退職し、六つの大学で10年間、児童文化と行動論の講義を担当しました。

その折、「遊びの本」出版の依頼を受けたので、子どもたちから受けた遊びの多彩な楽しさと、大学講義の基軸である、子供の成長発達の推進力を込めて記述したのが『あそびの大宇宙』で、思い出深い著書です。

今回、新書を出版にあたり、嬉しい懐かしさと共に、新しい読者の方々に、当時の子供たちの生き生きとした行動と生き抜こうとする力が伝わるなら、最高の幸いです。
かこ さとし
(引用おわり)


『てんとむしバッタくんのあそび遊びのこん虫曲芸団』

かつての第6巻『てんとむしバッタくんのあそび遊びのこん虫曲芸団』は、この事典ではパート6として同じタイトルで登場し、単行本の時のあとがき「ムシは子どもと同格、同類」も収録されています。啓蟄も間も無く、お読みください。

(引用はじめ)
よく、「子どもの目のたかさで」と言われるように、同じ条件、状況下にあっても、大人とちがった強度や印象でこども等に投影することを知らねばなりまでん。その子どもの視点に適合する対象のひとつに身近にいる虫たちがあります。この巻は、そうした「生きているおもちゃ」昆虫や、身近にいて「相手となってくれるともだち」の、いろいろムシたちの遊び集です。「虫たちが可哀そう」とか「虫をとる子をみたらやめさせよう」という視点や「うちの子はムシなんかより、ずっと高級」という考えに対し、子どもとムシたちにかわって、形をかえた抗議が、このパートです。どうぞ、よろしく。
(引用おわり)

地震のゆれ、津波の恐怖、食い入るように見たテレビ画面の信じがたい惨状。何も手がつかず、見えない放射線に怯えるしかない日々。一体どうしたら解決できるのか。未曾有の被害に見舞われた3月11日がまた巡ってきます。

かこさとしは、当時執筆が終わり編集部にあった『こどもの行事 しぜんと生活3月のまき』(2012年小峰書店)の原稿を差し戻してもらい3月11日の原稿を急遽この災害のことに描き直して出版しました。決して忘れてはならないという思いからに他なりません。

2013年に刊行された『からすのてんぷらやさん』のあとがきにも、あの日のこと、そして様々な災害を思い出し以下のように記しています。

あとがき かこさとし

(引用はじめ)
この本は、からすのパンやさんの三番目の子に生まれた「レモンちゃん」のその後のお話です。いつのまにかレモンちゃんは、姿も心もきれいなステキな女の子となっていました。いつもは静かで楽しい「いずみがもり」ですが、ときには、思いがけない事件やわざわいが起こります。そんな時、レモンさんやその仲間がどうしたかの話です。

私は戦災や震災の時、レモンさんのような方がたに何人も接して、平時では得られる貴重な教えをいただいてきました。そして人間の社会は、ただ大勢いるのではなく、たがいに助けあい、補いあって、社会が成り立つことを知りました。

それが、このお話をかこうとおもったきっかけです。
(引用おわり)
尚、本文は縦書きで全ての漢字にふりがながあります。