作品によせて

2023/06/25

紫式部

最近咲き始めたこの小さな薄ピンク色の花は、やがて秋にはあざやかな紫色の実となり、たくさん連なります。この植物の名は「紫式部」。命名者の感性に感服します。

かこさとしのふるさと越前市にある絵本館の前の遊歩道を武生中央公園公園を背にして進むと紫式部の像がある式部公園に着きます。(当サイト絵本館情報に遊歩道のご案内を掲載しています)

その昔、紫式部の父が越前の国司となりこの地に赴任してきたのに伴い、式部は一年ほど越前で暮らしました。式部が京都以外で暮らしたのは越前以外にはないそうです。

それでは、紫式部についてかかれている作品を探してみましょう。

歴史上の人物ですので、『いまはむかしれきしのあそび』(1993年農文協)の前扉には、少女漫画の主人公 のようなタッチで描かれた式部がいます。
また本文には、「平安のすぐれたおんなのひとたち」として、清少納言、和泉式部たちとともに有名な和歌と合わせて紹介されています。

そして、京都で行われる時代祭にも登場します。その様子は『こどもの行事しぜんと生活10がつのまき』2012年小峰書店・下)でご覧ください。

もう1冊、紫式部の名がでてくる本は科学絵本『宇宙』(1978年福音館書店)です。いったいどうして?とおもわれることでしょう。

月や他の天体には、地球から観測していろいろな地形がわかってきていますが、地球の私たちがそれぞれの場所に地名をつけています。

月の表面には、ハーシェル、バスコダガマ、裏面にはアインシュタイン、ノーベルなど。また、火星(上)にも天体望遠鏡を開発したハーシェルの名や、ガリレオ、ダ・ヴィンチ、ニュートン、コペルニクスなどがあります。

そして水星(下)には、ベートーベン、ミケランジェロ、ルーベンス、シェークスピアなどとともに広重、人麻呂、世阿弥、芭蕉、そして紫式部もあるのです!

はるか平安時代の人の名前が水星にあるとは、意外であり、ロマンを感じます。

かこ作品のお話の展開には、静かな日常から始まり事件や出来事がおこって、大騒ぎのてんやわんやがようやく落ち着いて、また元の静けさが戻っておしまい、というものが多くみられます。

『おたまじゃくしの101ちゃん』や『とんぼのうんどうかい』(上・下)『さざんちゃんのおともだち』(いずれも1973年偕成社)などがその典型的なものです。

「だるまちゃん」シリーズもそういった筋が多く、小さいお子さんたちが、毎日、新しいことにであい、ちょっとびっくりしたりドキドキしながら少しづつ成長してゆくのと同様で、お子さんたちはこういったお話の結末に安心感を覚えることとなります。

最初から賑やかで、途中アクマの悪巧みで元気をなくした人々が最後にはまた、前以上に元気で明るく歌い踊る場面でおわるのが『わっしょい わっしょい ぶんぶんぶん』。

最初より発展して、大きな成果が得られる結末となるのは、『にんじんばたけのパピプペポー』(いずれも1973年偕成社)やその続きのおはなし『パペプペポーおんがくかい』(2013年)です。

その逆にどんでん返しで終わるのが『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)です。お気づきのように多くは50年前に出版されたロングセラー絵本です。

こういった筋を追うだけでなく、お子さんたちは主人公のそばに登場する小さな動物たちの様子や表情もしっかり見て絵を読んでいます。それで時々前のページの戻って確かめたいと思うことがあります。

それがどの本のどの場面なのかは、まちまちでしょう。例えば『ことばのべんきょうくまちゃんのかいもの』の最後の場面、こんなにたくさん買った?!と思いながら、ページを逆戻りして、確かに、と納得する方があるかもしれません。

『だるまちゃんとてんじんちゃん』で、てんじんちゃんたちの庭さきにいるウソドリのつがいはいつからでてくるのか、てんじんちゃんのお母さんが花入にさしている山ゆりや、だるまちゃんが持って帰ったホタルブクロはどこで取ったのかをたしかめてみたり。。。

『はれのひのおはなし』(小峰書店)をはじめ、くもり、あめ、ゆき、かぜの日にまつわる5つのお話は、大きな出来事というよりこどもたちが体験するような、遊んで面白かった一日を再現していますが、『あめのひのおはなし』の最後はこんな場面で終わります。

右奥には4本の傘が放置されています。黒い傘はつぼめられて枝にかかっていますが、茶色や黄色の傘は、藪や池のほとりに放りだされたまま、小川のわきには、緑色のかさもあります。

いったい誰が使っていた傘なのか?というわけで前のページを見て確認。小さいお子さんであっても、この色だけで、誰が使っていた傘なのかすぐに思い出せるのかもしれませんが、前のページに戻ってみと。。。

「かえるちゃんたちは、じぶんの うちへ かえって ゆきました。」

なるほど納得ですね。
傘の置いてある場所がそれぞれのお家の近くで、性格まで垣間見えてにっこりしてしまいます。

みなさんにとって、前のページに戻ってみたくなる場面は、どんなところでしょうか。行きつ戻りつ、どうぞ心ゆくまで絵本をお楽しみください。

『わっしょいわっしょいぶんぶんぶん』の最後の場面は、越前市武生中央公園の温水プールがある建物内の1階ホール壁面に大きな絵となって飾ってあります。お近くに行かれましたら是非ご覧ください

きみはタヌキモを知っているか ー食虫植物とぼくたちの関係ー

タヌキモ?
いったい何のことかと思われるかもしれません。

最近のニュースで絶滅危惧種の水草「ムジナモ」の国内唯一の野生が石川県で確認されたとありました。
ムジナ(上の絵の左)というのは、アナグマのことで、タヌキ(上の絵の右)とよく間違えられるそうですが、タヌキはキツネの仲間でムジナとは異なる種だそうです。

「ムジナモ」はムジナの尻尾の形に似ていて、牧野富太郎博士によって命名されました。この水草は根がなく、栄養を葉の先についている2枚貝のような葉で水中の虫を捕える食虫植物なのです。

そしてこれによく似ているけれど、虫のとらえかたが異なる食虫の水草「タヌキモ」もあります。

加古がこのタヌキモのことを初めて知ったのは小学3年生の時で、その時のことは『過去六年間を顧みて』2018年(偕成社)にもかかれています。

ある日曜の朝、父親の友人の息子さんでかこより一回り以上年上の英(エイ)さんが釣りに行かないかとやってきました。かこは翌日は遠足だからどうしようかと迷っていたものの沼にでかけ、沼の近くの田んぼでめだかを20ぴきほどつかまえて、金魚ばちで飼い始めます。

ところが翌日、こどものメダカがいなくなっていることに気づき、あれこれ尋ねたり調べた結果メダカと一緒に持ち帰ったタヌキモが原因だとわかります。『きみはタヌキモを知っているか』はこんな出来事から始まりますが、副題ー食虫植物とぼくたちの関係ーとあるように、タヌキモ、ムジナモの詳しい生態をはじめ、前後の見返しにも驚くほどたくさんの食虫植物が紹介されています。

しかしながら、かこの問いかけは、そこにとどまりません。

1930年代には東京のどこにでも自然に生息していたタヌキモですが、戦争で焦土と化し、現在は野生のものでなく、栽培されたものが流通しているようです。そして、タヌキモに似ているけれど虫(魚)のとらえかたが異なるムジナモは、ニュースで報じられたものが唯一になってしまったそうで絶滅危惧種です。

15場面で構成されるこの本の最後の3場面は、「植物と虫のほんとうの関係」「植物と動物の長い長い関係」「植物と虫とぼくたちの関係」について」で、晩年完成させたかった「生命図譜」に通じる思いが込められています。

この本の終わりには次のような一節があります。
(引用はじめ)
だから、人間だけがよければという考えや、やりかたをしていると、それはかならずめぐりめぐって 自然のつりあいをこわし、生きもののくらしをつぶす、わざわいとなってくる。
(引用おわり)

1999年にこの本を出版した時点でのかこの危惧がますます深刻になってきていることが、この1冊の本を通してわかります。

最後に、あとがきをご紹介しましょう。

あとがき

(引用はじめ)
ぼくが、タヌキモという名前を知ってから、もう60年以上もたちました。そのあいだ、たくさんのこん虫や動植物から、たくさんのこと、環境や公害や健康や生きることなどについて、教えてもらいました。そのきっかけとなったエイさんですが、戦争にいってなくなり、一人のこった奥さんの家もぼくの家も、戦災で焼けてしまい、そのあとのようすをお伝えできないのが、残念です。おゆるしください。
(引用おわり)

2023/05/03

新茶の季節

新茶の季節がやってきます。
新茶は、立春から88日目にあたる八十八夜(5月2日頃)につんだ茶葉を加工、これを飲むと長生きするともいわれています。末広がりの「八」が重なるので縁起がよいとされているからでしょう。

『こどもの行事 しぜんと生活5月のまき』(2012年小峰書店)には、詳しい説明と遠くに鯉のぼりが泳ぐ茶畑、茶摘みの様子が描かれています。

お茶といっても、いろいろ種類があり、国によっては紅茶だったり、ウーロン茶だったり、これは同じ茶の木から摘むやわらかい葉でつくられるものの、その工程が「むしたり、もんだり、かわかしたり、細菌の力で発酵させて色や味を変化させるなどの加工方法のちがいで、さまざまなお茶ができ」るのです。

『きれいくだもの あまから菓子』(1994年農文協・上)では、おかしだけでなく、「お茶もどうぞ」と、多様種のお茶を発酵のある無し、またお茶といっても茶の葉を使っていない昆布茶や蕎麦茶も紹介しています。

お茶を入れる茶碗やカップも描かれていますが、『こどもの行事 しぜんと生活』(上)の急須の左にある湯呑み茶碗は、加古自身がこの絵を描いた頃に使っていたものによく似ています。拡大するとこんなふう。

実際のものは。。。
ヒビが入ってしまったので筆立てにしてずっと使っていました。

新茶が楽しみです。

2023/04/27

青い鳥

「青い鳥」といえばまず思いうかぶのはメーテルリンクの童話劇です。チルチルとミチルという幼い兄妹が冒険に満ちた旅の末、幸せは自分たちのすぐ近くにあるということに気づくという筋です。

転じて「幸せ」の代名詞にも使われますが、若い頃から演劇に大変興味のあった加古はこの名作を『こどものカレンダー5月のまき』で絵入りで紹介しています。作者のメーテルリンクが1949年5月6日に亡くなったからです。

『こびととおとぎのくにのあそび』(1991年農文協)には「チルチルとミチル こうふくのとりは?」というクイズまでありますし、『こどもの行事 しぜんと生活5月のまき』には青い鳥が出来上がる折り紙を3種類も紹介しています。

実際の「青い鳥」といえば私たちが思いつくのは、空飛ぶ宝石にたとえられるカワセミでしょうか。『地球』(1975年福音館書店)には緑豊かな高原の水辺で魚を狙う様子がありますし、『あそびずかんなつのまき』(2014年小峰書店)にはカワセミやオオルリが、紹介されています。

絵本の中で登場しているのは『サザンちゃんのおともだち』の前扉です。

バオバブのある大地に飛ぶのはアフリカのムクドリのように見えます。

また、手前には2羽の美しい青い羽根のホロホロ鳥もいます。

サザンちゃんと一緒に勉強したり絵を描いたりするお友達の中にいる鳥はペリカンやフラミンゴで残念ながらこの青い鳥たちはいませんが、それでも前扉に登場させたのは、裏表紙(下)のみに描かれるホオジロカンムリヅル同様、この美しい青い鳥に加古が大きな魅力を感じていたからに違いありません。

時としてかこの絵本の中には、ふつうの絵本ではあまり見かけもないものが登場します。

例えば『あかありのちゃんのやまのぼり』(1988年偕成社・上)はふつうの山登りに見えますが、やがて道が険しくなってくると。。。

山登りをしながら何やら難しい漢字や化学式、DNAの二重螺旋だったりを色々思いうかべています。

この絵の右下、帽子をかぶったメガネのありちゃんはどこかで見たことがあるような。。。本の虫そのものですね。数学の本を読んでいるのでしょうか。

前をゆくありちゃんは歯をくいしばっているような顔つき、頭の中にはE=mc2乗。

これはアインシュタインのエネルギーに関しての数式であることが、別の絵本『びっくりしゃっくりのあそび』(1992年農文協・下)で「アインシュタインかがくかん」として説明されています。

(引用はじめ)
10グラムの ものを ぜんぶ エネルギーに
かえることが できれば、100まんキロワットの
でんきを 1にちつけることが できる ちからとなります。
この「ぶっしつは エネルギーの かたちを かえたもの」という
ほうそくを かがくでは したのような かたちで
あらわします。 このほうそくを みつけだした
かがくしゃが アインシュタイン さんです。

(エネルギー)=(ぶっしつのりょう)X(ひかりのそくど)2乗
(引用おわり)

こども向けのあそびの本なのに、この内容。まさにびっくりしゃっくりですね。

その1でご紹介した本より少し対象年齢が上のお子さんたち向けの本4冊です。

『ねえねえなにかうの』(2002年ポピラ社)は、『きてよ きてよ はやくきてー』などと同じ大きさ、作りの絵本ですが、おままごとに夢中な二人の子どもがお母さんの買い物についていきます。行く先々のお店で色々な商品が並んでいるのでお買い物や品物の名前の勉強ができる楽しい絵本です。

『ことばのべんきょう』シリーズ4冊(福音館書店)の中にも『くまちゃんのかいもの』というさらに小型のロングセラー絵本もあります。

『はいはいのんのん どっちゃんこ』(1996年小峰書店)は、「かこさとしの ちいさいこのえほん」として出版されたものです。はいはいができるようになったあかちゃんが主人公で動物と一緒に面白く、楽しいことをします。擬態語や掛け声が満載で、動作を真似して身体全体をつかって読みながら遊んだりできそうです。

『いろいろな かたち さまざまな いろ』(1988年フレーベル館)は「かこ・さとしの えほんでべんきょう①」として出版されたものでその名の通り、色や形を学ぶ第一歩となるものですが、ただの暗記ではなく、その後の基礎を作るために考えられています。

『たのしい たしざん しっかり ひきざん』(1988年フレーベル館)は「かこ・さとしの えほんでべんきょう②」のあとがきに本書の意図が記されていますのでご紹介します。

あとがき

(引用はじめ)
子どもは成長につれて未知のものにひかれ、理解したい、学びたいという意欲をもってきます。この本は数に興味をもちはじめた子のたすけとなるように配慮してつくられました。
内容として10までの数の概念、順序、たし算、ひき算をやさしく、述べてあります。特に将来もっと大きな数の位どりや、加減10進法への理解に資するため、「数」の対応として、タイルを登場させています。指や小石にはない特長を、家庭や園で指導される場合、活用されるなら幸いに思います。
かこ・さとし
(引用おわり)

新学期が始まり新しい教科書を手にする季節です。
学校に入る前の、ずっと小さなお子さんたちのためになるような絵本を2回に分けてご紹介しましょう。

『おかおいろいろ あかちゃんいろいろ』(2008年ベネッセコーポレーション)はまさにあかちゃんのための絵本。あかちゃんのさまざまな表情を輪郭も色もはっきり描いています。話し言葉に近い文章は、あかちゃんへの言葉がけのようで、絵本にあるのと同じような顔を読み手がしたり、あかちゃんの手を絵本と同じように動かしてみたり、そんなコミュニケーションを誘うような作りです。

『きてよ きてよ はやくきてー』(2002年ポピラ社) は全7場面でペンギンや犬などの動物もでてきます。
小さなお子さんは困ったことに遭遇するとすぐに助けを呼びますが、それは動物も同じで、ちょっと困ったけれど助けてもらって、というあかちゃんに安心感を与える絵本です。『おかおいろいろ あかちゃんいろいろ』同様丈夫な厚みのある紙で作られています。

『えーん あーん ないちゃだめ〜』(2002年ポピラ社)は、『きてよ きてよ はやくきてー』の姉妹編のような絵本です。自分で解決策が見つからないとすぐに泣くのが小さいお子さんの特徴ですが、動物、そして人間の子どももいい子いい子をしてもらって、ようやく泣き止みます。絵本を見ながら 泣き止むことを少しづつ覚えていけたらいいですね。

2023/03/26

漢字の本?

石偏や金偏の漢字が並んだこの場面、いったいこれは漢字の本なのでしょうか。

『なかよし いじわる 元素の学校』(1982年偕成社)の前見開きで、見えにくいのですが左上に中国の周期表とあり元素記号が一緒に表記されています。日本化学会監修の科学絵本です。

これはいかがでしょうか?

ページの上に全部ひらがなで次のようにあります。
(引用はじめ)
むかしの ちゅうごくには てや ゆびを つかう じが、こんなに たくさん ありました。
ですから、てや ゆびは、とても よく うごいて いろんな ことを たくさん できる ことが わかります。
(引用おわり)

実は、小さいお子さん向けの科学絵本『てとてとゆびと』(1977年童心社)の一場面です。

指や手の40以上の動作を絵で表し、さらに小さい子ども向けだからと言って躊躇せず、このように100の漢字を並べることによって、人間が獲得した手の動きの多さを伝えています。大人が見ても知らないものがあり興味が湧きます。

下は現在私たちが使っている漢字が中心で、遊びの本『どじょっこ ふなっこのあそび』(農文協)のページです。

貝については「かたちや いろが きれいで めずらしい かいは むかしから おかねの かわりに つかわれたり、たからものとして だいじに されてきました。」とあります。

(引用つづき)
「それで、「貝」という じが ついた 「字」は おかねや たからに かんけいした ことを あらわしています。おうちの ひとと いっしょに みてください。
(引用おわり)

とあり、リュウグウオキナエビス貝なども描かれています。

この本には魚偏の魚の名前も並びます。本文にもあるように、これは「かん字と言っても、国字と いって 日本で つくられた 字が とても たくさんです。」(漢字にはふりがながあります)

海に囲まれ、タンパク質を魚から摂取していた日本だからこそ生まれた和製漢字ですね。全てを魚偏で書くのではなく絵で表しているところ、英語名の例までつけ加えているところが、かこさとしらしい点です。

科学絵本や遊びの本でも、文章が全部ひらがなで書かれていても、このように漢字や英語を紹介しているのは、お子さんたちがいずれ学ぶことになるので、楽しみながら興味を持ってほしいと願ってのことだったのでしょう。

2023/03/22

道具 今昔

子どもたちの身近なものを描いてきた加古の絵本。しかしそれが50年前のものですと、今や歴史的な意味を帯びてきて、昔を知り、今と比較することができるという、描かれた当初にはなかった要素が加わってきているものもあります。1970年に出版された2冊の本を開いてみます。

『ことばのべんきょう くまちゃんのいちにち』(福音館書店)はその題名のように言葉を覚え始めるお小さい子さん向けの本で、朝の歯磨きから夜寝るまでの場面に登場する身近な道具の名前が書かれています。

朝食の場面の「おひつ」は今や珍しいのではないでしょうか。

台所にあるマッチは、ガスコンロが自動点火になる以前は必需品で、商店が配る名入の粗品には、布巾やマッチが多くありました。
おもしの石がのせられている樽は漬物か味噌が入っているのでしょうか。用途は同じでも、今では素材がプラスチックにとって変わられた、ざるやしゃもじ、ヘラなどが見受けられます。

『どうぐ』(福音館書店/瑞雲舎・下)にも同様のものが並んでいますし、文房具では竹の物差し、象牙か牛骨のヘラなどもあります。昭和のはじめには、今ではプラスチックがあたり前の歯ブラシが豚毛だり、歯磨きのチューブが薄い金属性だったり、台所にあるスポンジの代わりにヘチマやシュロのタワシが使われていました。

下の場面、左下にあるのはダイアル式の電話で右下に並ぶいくつかの四角いものは、初期のコンピューターです。
このような絵を見ながら、是非、今ある電気製品がなかった時代の物やプラスチックを使っていなかった頃のことを、お子さんと話題にして頂ければ幸いです。