編集室より

2022年のリニューアルで一番大きく変わったのがパピプペポー広場です。この広場を囲むように巡っていたモノレールはお色直しをして『だるまちゃんとかみなりちゃん』にでてくるような「かみなりまちのモノレール」になりました。

動画は以下です。どうぞご覧ください。

パピプペポー広場 動画

そびえたっているのは「かみなりまちのほうでんとう」です。

2人で並んですわる座席がゆっくり上がっていきますが、目の前にあるロープを引くとさらにそのスピードが増し、あっという間に最上部に到達します。そのままロープを引っ張り続ければその場に止まっていることもできますし、手をロープから離すとゆっくり下降、最後は下に戻ってくる仕掛けです。

てっぺんには、かみなり型のパラボラアンテナがついています。

放電灯の下を走るのは、ウンカーではなく『だるまちゃんととらのこちゃん』の「とらのまちのひげとらタクシー」です。
バッテリーで時速2キロで走り、小さなお子さんが大人と一緒に乗って安心して運転できます。

モノレールのレールの向こう、放電灯の手前にあるのは、リニューアルしたての「おもちゃの国のメリーゴーランド」です。

天井の絵や周囲の柵や屋根にかこの絵を配置。下は絵を見やすくするため90度回転させています。

公園の東側から入って、大人気の「からすのパンやさんの風車塔」や「だるまちゃんとかみなりちゃんのふわふわ雲」(トランポリン)へ向かうところにあるこの絵。飲食施設〈はぐもぐ〉の裏側と言った方がわかりやすいかもしれません。

上の絵の右側には、広場の名前の由来となった絵本『コウノトリのコウちゃん』と『だるまちゃんとてんぐちゃん』の2枚の絵があります。

左には同様に『にんじんばたけのパピプペポ』前扉の絵。

モザイクで作ってあるように見えますね。

ところが、近づいて見ると、たとえばだるまちゃんの胸のあたりはこんなかんじです。

かみなりちゃんの方は、

全て、かこの絵本の表紙からできています。

それでは動画でご覧ください。

表紙でできた絵

2018年に誕生した武生中央公園(福井県越前市)には「だるまちゃん広場」をはじめ3つの広場があります。かつては野球場だった広大な場所を整備して出来上がりましたが、その後もリニューアルや新遊具の設置が進められついに2022年秋に全ての施設が整いました。

新たに加わったものをご紹介しましょう。

遠くに山、建物には「越前山歌」の大壁画、手前の巨木の下にあるのはウッドデッキとかまどでしょうか。
何か字が書いてあるのは看板?

反対側に回ってみましょう。。。

からすのパンやさんの看板です。

幹の上の方には⋯

いました!

4羽のからすのこどもたち。
ここは「からすのパンやさん」のおうちなんですね。

よーく見るとウッドデッキはクロワッサンの形です。かまどに見えるものは紙芝居の台にもなり、ウッドデッキに座って木陰で紙芝居を見る。そんなことができるよう作られています。

ロンドンのハイドパークにあるスピーカーズコーナーのように、自由に紙芝居ができるようにという願いが込められています。

おや?
からすのお父さんでしょうか?

2022年11月18日、福井県越前市にて講演会を開催しました。駅前の植栽にも雪吊りが施され冬支度の整った武生でしたが、好天に恵まれ、晩秋の紅葉に彩られた村国山(写真中央、手前は〈コウノトリの大空散歩〉の遊具)を望む、かこの墓所がある引接寺のお堂が会場でした。

コロナ禍で全国紙芝居大会の2021年プレ大会と2022年夏の本大会が中止となり、関係者一同は大変落胆されましたが、それを振り払うかのように当日は紙芝居に関わる大勢の方々がご参加くださいました。

前半は紙芝居『ゆきこんこん かぜこんこん』の上演とかこの手描き紙芝居のご紹介。紙芝居をもとに作成された幻灯「ぼくのかあちゃん」と「自転車にのってったおとうちゃん」も上映し、当時の様子に思いを馳せました。

熱心なご質問が相次ぎ、和やかに楽しく紙芝居やこどもを話題に全体で1時間半ほどの会でした。

久しぶりにかこのふるさとの皆様とゆっくりお話しすることができ温かな気持ちに包まれたひとときに感謝の気持ちでいっぱいになりました。

翌2022年11月18日、福井新聞朝刊に写真入りでご紹介いただきました。一部ですが以下に記事があります。

福井新聞「紙芝居遊びを創る一歩」

11月27日は四谷怪談を書いた鶴屋南北、そしてアメリカの劇作家でノーベル文学賞を受けたユージン・オニールが亡くなった日です。大学時代に演劇研究会には入っていたかこは洋の東西や時代を問わず、芝居には大変興味を持っておりました。

『こどものカレンダー11月のまき』(1975年偕成社)ではその日に合わせて「おしばいができるまで」というタイトルで、脚本家、演出家、舞台監督、衣装、化粧、効果、照明、音楽、装置、宣伝、総務など俳優以外の人々が働いたり考えたりしていると紹介、プロンプターや演出助手にも触れているほどです。

『うつくしい絵』(1974年)『すばらしい彫刻』(1989年いずれも偕成社)に続き演劇の絵本も作りたいとよく口にしていました。もし演劇の本を作るとしたら、まず入れたいのは人形浄瑠璃・文楽と申していたのが大変印象的で忘れられません。

その文楽については『こどものカレンダー3月のまき』(1976年偕成社)であやつり人形と共に紹介しています。[おうちのかたへ]というメッセージには、次のようにあります。
(引用はじめ)
文楽の名前は知っていても、実際に見たことのある方は案外少ないものです。できたらテレビより劇場でいちどご覧になることをおすすめします。
(引用終わり)

演劇の本といえば、シェイクスピアやチャプリン、あるいはオーソンウェルズを取り上げるのかと想像していたので意外でした。出版は叶いませんでしたが、『こどもの行事 しぜんと生活4月のまき』では壬生狂言について触れていますし、『だるまちゃん・りんごんちゃん』(2003/2013年瑞雲舎)に飯田の人形劇を登場させるあたり、演劇にこめたかこの思いをかいま見ることができます。

ところで、かこが大学時代、演劇研究会で担当していたのは舞台美術で、その精緻なデザイン案は現在、群馬県立館林美術館で開催中の「かこさとしの世界」展で展示しています。

下はその一枚、昭和22(1947)年5月18日東京大学五月祭で上演のアンドレ・ジイド作「13本目の木」の舞台案です。
是非、まじかでご覧ください。

2022年11月2日に亡くなられた松居直さんに哀悼の意を表します。

かこさとしを絵本の世界に招き入れたのは、福音館書店編集長(当時)の松居直氏でした。もし、氏との出会いがなかったら、私たちが知っているようなかこさとしは存在しなかった、と言っても過言でなく、かこ自身もそのように思い晩年もその出会いと60年にわたる交流に深謝する言葉を繰り返していました。

かこのデビュー作品『だむのおじさんたち』(1959年福音館、2007年復刊ドットコム)が復刊された際にかこは次のような言葉を残しています。
(引用はじめ)
この絵本は、工場の研究所勤務の昭和30年代、休日は工員住宅の中の子供舎の世話をしていた私が、福音館書店編集長の松居さんの依頼で初めて描いた作品。時代にふさわしいものと言う大きなテーマなので、停電が頻発する当時ゆえ、水力発電のダム建設を題材とした。半世紀を経て絶版だった本書が再刊されるに当たり、種々の感慨とともに、この安定完成された水力発電の建設技術が、再び政治とカネに乱されぬよう希求しているところである。
(引用おわり)

『リレートーク 言葉の力 人間の力』(2012年佼成出版社)は舘野泉、中村桂子、松居直、加古里子という四人が対談をし、つないでいく形式で5つの対談が収められていますが、その最後が、松居氏と加古との対談でした。

2011年の311の震災から5ヶ月ほど経た夏の暑い日、腰の悪い加古のために同い年の松居氏が加古を訪ねてくださり、それぞれの生い立ち、出会い、出版に関わる思いや決意、未来に寄せての指針を語りあいました。

「対談を終えて」で、加古は次のように書いています。一部ご紹介します。
(引用はじめ)
敗戦の混乱で人生の目標を失い、心身咆哮の折、絵本という具体的な場を与えてくださった松居さんからは、改めて言葉と絵の持つ重要さと、中国やアジアの人々の態度、ユーラシア大陸としての発想把握など、現代と未来を見透かした啓発を頂戴した。
(引用おわり)

幸いなことに、松居さんの長年の叱咤激励のおかげで途中何度も頓挫しかけた『万里の長城』(福音館書店)がついに2011年、刊行に至りました。記念に松居さんご一家、この本の編集者で、後に中国語版の翻訳をしてくださった唐亜明さんご夫妻とご一緒に加古も家族同伴で北京に出かけ、万里の長城で喜びの記念撮影をする事ができました。

その経緯などを松居さんのお嬢様で絵本作家の小風さちさんと鈴木万里が2019年に語った講演会の内容が「父の話をしましょうか〜加古さんと松居さん〜」(2020年NPOブックスタート)として出版されました。

この2冊は現在では電子書籍として購読できますし、後者は書籍としても販売しています。名編集松居直さんが残されたご功績にどんな強い思いが込められていたのかがお分かりいただける内容です。

2022年11月6日東京新聞朝刊「筆洗」は加古との出会いから松居さんの絵本出版文化への大いなる貢献を紹介しています。記事は以下でどうぞ。

東京新聞コラム 筆洗

尚、松居直氏のご功績を知る事ができる展示が福音館書店ゆかりの地、石川県で開催されます。詳しくは以下でどうぞ。

特別展示 はじめに松居直がいた

また、いかのメディアでも報じられています。

朝日新聞 デジタル 松居氏

中日新聞 松居氏

昨夜の月食、しばしの天体ショーは幻想的でした。この写真はかこの書斎前で撮影しました。

科学絵本でご紹介する月ではなく、思わずにっこりしてしまう月が描かれているのが、2022年12月号コドモエで紹介された『うさぎのパンやさんのいちにち』です。 

この物語はパンやさんを舞台に朝早くから夜遅くまで、パンの製造・販売とその準備や後片付けなどの様子が手にとるようにわかり、小さなお子さんが流通について知るきっかけにもなります。

その上、かわいいうさぎさんたちが大勢登場、世界各地のパンが驚くほどたくさん並び、見ているだけで嬉しくなって口元がゆるみます。

忙しい一日を終えたパンやさん、外には月が出ています。
よーく見るとお餅つきではなく、パンを持っています。

お店の外の夜空には、これまた愉快な美味しそうな星がまたたいているのでした。

開催中の「かこさとしの世界」展、会期半ばの2022年11月6日、秋晴れに恵まれた群馬県立館林美術館に出かけました。
美しい紅葉を見ながら館内へ。

ギャラリートークの代わりにスペースをゆったりとって対面での講演会を致しました。

展示作品を中心に、主に加古のデビューまでの作品を見ながらその背景、「かこさとしの世界」がどのように立ち上がっていったのかをお話しました。


また、川崎セツルメント活動のご紹介を兼ね、サプライズとして渋谷Bunkamuraで初公開した、かこの描いた幻灯用の下絵をもとに作成した「ぼくのかあちゃん」と「自転車にのってったお父ちゃん」をご覧いただきました。

詳しくは、『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社 )で紹介しています。また、同名の手描き紙芝居子は『かこさとしと紙芝居 創作の原点』(2021年童心社)や『かこさとしの世界』(2019年平凡社)に掲載されています。

この2作品はかこがセツルメントで直接関わった子どもたちの書いた作文をもとに、舞台となる製鉄所をかこが見聞してまとめ上げた作品です。戦争や過酷な作業の中で父親を亡くした子どもとその家族の気持ちが痛いほど伝わり、会場の皆様は大変熱心にご覧くださいました。

1時間半ほどの会でしたが、講演後ご来場の方々とお話することもでき、心に残るひとときでした。

本展示会では写真コーナー(上)以外でも、広い館内で写真撮影ができる場所がありますので是非、記念にどうぞ。

手品には、絶対何かヒミツの仕掛けがあるに違いないと目を皿のようにして見ていても、見つけられるものではありません。だから面白いとも言えるのですが、小さいお子さんにもできる簡単な手品とその種明かしがあるのが『だるまちゃんと楽しむ日本の子どものあそび読本』(2016年福音館書店)です。

筆者が幼い頃、かこが見せてくれたこの手品を見て面白い!と思った思い出があります。素人がするので種明かしの前にばれてしまいそうになるのがかえって愉快な手品で、その名は「見えない糸」。用意するのは細長い紙切れと見えない糸のみ。

見えない糸がない?
そうですか。。。では紙だけでなんとかしましょう!
やり方は、39ページです。

種明かしも。。。39ページにありますからご安心ください?!

洒落たフレンチレストランのひさしのような色合い。かこの手書き文字の題名『あかですよ あおですよ』(1995年福音館書店)のとおり、たしかに上から赤、白、青です。しかし、濁点のほかにも丸いものがあって。。。

下の方には不思議な模様がついたものが描かれています。

裏表紙を見ると。。。

タコ!
不思議なものはタコの吸盤、青いナミナミは波で、丸いのは水泡です。

本を開けると、前見返しからすでに物語が始まります。

(引用はじめ)
🎵たこたこ がっこう いいがっこ
  6ぴき せいとも いいこども
  たたこ せんせも すてきです

🎵 たこたこ がっこう いわのなか
  べんきょも ゆうぎも たいそうも
  なみの まにまに ゆうらゆら
(引用おわり)

まるで、遠くから聞こえてくる歌声で始まる映画の冒頭場面のよう。この本は、たこたこ学校の6匹のお話で表紙に並んでいるのはランドセルです。

えんどうまめ一家の1日を描いた『あさですよ よるですよ』(1986年福音館書店)に続くお話として、この本は創作されました。前者は時間を小さいお子さんに知ってもらえるよう、そして本作のテーマは色です。クレヨンにあるような基本的な8色のものが次々に登場しカラフルです。

そして最後はもちろんあの色です?!
タコですから。。。。

種明かしとして、後見返しの絵をご覧ください。