かこ作品のお話の展開には、静かな日常から始まり事件や出来事がおこって、大騒ぎのてんやわんやがようやく落ち着いて、また元の静けさが戻っておしまい、というものが多くみられます。
『おたまじゃくしの101ちゃん』や『とんぼのうんどうかい』(上・下)『さざんちゃんのおともだち』(いずれも1973年偕成社)などがその典型的なものです。
「だるまちゃん」シリーズもそういった筋が多く、小さいお子さんたちが、毎日、新しいことにであい、ちょっとびっくりしたりドキドキしながら少しづつ成長してゆくのと同様で、お子さんたちはこういったお話の結末に安心感を覚えることとなります。
最初から賑やかで、途中アクマの悪巧みで元気をなくした人々が最後にはまた、前以上に元気で明るく歌い踊る場面でおわるのが『わっしょい わっしょい ぶんぶんぶん』。
最初より発展して、大きな成果が得られる結末となるのは、『にんじんばたけのパピプペポー』(いずれも1973年偕成社)やその続きのおはなし『パペプペポーおんがくかい』(2013年)です。
その逆にどんでん返しで終わるのが『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)です。お気づきのように多くは50年前に出版されたロングセラー絵本です。
こういった筋を追うだけでなく、お子さんたちは主人公のそばに登場する小さな動物たちの様子や表情もしっかり見て絵を読んでいます。それで時々前のページの戻って確かめたいと思うことがあります。
それがどの本のどの場面なのかは、まちまちでしょう。例えば『ことばのべんきょうくまちゃんのかいもの』の最後の場面、こんなにたくさん買った?!と思いながら、ページを逆戻りして、確かに、と納得する方があるかもしれません。
『だるまちゃんとてんじんちゃん』で、てんじんちゃんたちの庭さきにいるウソドリのつがいはいつからでてくるのか、てんじんちゃんのお母さんが花入にさしている山ゆりや、だるまちゃんが持って帰ったホタルブクロはどこで取ったのかをたしかめてみたり。。。
『はれのひのおはなし』(小峰書店)をはじめ、くもり、あめ、ゆき、かぜの日にまつわる5つのお話は、大きな出来事というよりこどもたちが体験するような、遊んで面白かった一日を再現していますが、『あめのひのおはなし』の最後はこんな場面で終わります。
右奥には4本の傘が放置されています。黒い傘はつぼめられて枝にかかっていますが、茶色や黄色の傘は、藪や池のほとりに放りだされたまま、小川のわきには、緑色のかさもあります。
いったい誰が使っていた傘なのか?というわけで前のページを見て確認。小さいお子さんであっても、この色だけで、誰が使っていた傘なのかすぐに思い出せるのかもしれませんが、前のページに戻ってみと。。。
「かえるちゃんたちは、じぶんの うちへ かえって ゆきました。」
なるほど納得ですね。
傘の置いてある場所がそれぞれのお家の近くで、性格まで垣間見えてにっこりしてしまいます。
みなさんにとって、前のページに戻ってみたくなる場面は、どんなところでしょうか。行きつ戻りつ、どうぞ心ゆくまで絵本をお楽しみください。
『わっしょいわっしょいぶんぶんぶん』の最後の場面は、越前市武生中央公園の温水プールがある建物内の1階ホール壁面に大きな絵となって飾ってあります。お近くに行かれましたら是非ご覧ください