編集室より
この科学絵本は1970年「かがくのとも1月号」(第10号)として刊行されました。その時の折り込み付録にあるかこさとしの文「あなおそろしきエレキテル」を2回に分けて掲載します。
「あなおそろしきエレキテル」加古里子
電気にとりかこまれて生活している幼児のためにーー
電気というものは、もうすでに私たちの生活から切り離すことのできないものの一つとなっています。
朝起きてからーーと言うより家庭によっては起きる前から自動スイッチや電気釜が動き出し、寝るまでーーこれもテレビやラジオつけ放して寝る人もいるようですがーー四六時中電気の恩恵をこうむり、その中ではじめて生活が営まれているといっても過言ではありません。子どもたちも、そういう中で毎日を送っているわけです。
この本の目標
こうした現代生活や社会のなかでのこの本の目標を、
(1)子どもたちが興味と関心を持ち恩恵をうけている重要な、「電気」というものを、子どもたちの日常生活の形の中で提示すること
(2)子どもたちの理解の範囲内で、最も重要で基本的な電気の原理で変則共通性といった点を浮かび上がらせる事の二点に集約しました。
ですからもし、これそれ以上のことをこの本からとられたとしたならば、それはこの本を読んでくださった子どもさんの能力がすばらしかったか、ご家庭の指導のたまものであって、決して作者の功で責でもないわけです。
電気に強い子どもを育てるにはーー
さて、子ども向きの本、特に幼児のための絵本で「電気」をとりあげるのは、いささか冒険といわれる方もあろうかと思います。私の知っている範囲でも、雷とか静電現象とか、せいぜい電池でのおもちゃがとりあげられているばかりです。
しかも悪いことに「電気」というものは、一般の人にはなかなか理解しにくい苦手な部類に属しているものであるということです。ことにいけないのは、電化家庭器具の第一の使用者であるお母さん方の大部分が時とすると、電気をダカツのごとくきらっておられるということです。人参や毛虫の嫌いなおかあさんの子は、それを忌みきらう率が極めて高いことと考え合わせますと、電気ギライはやはり子に影響があることでしょう。
電気がこのようにケイエンされるには理由があります。第1に目にみえないことです。電線はみえるが電気がきているんだかどうだかわかりません。その本体が具体的な形をとっていないということは、とても認識するのに妨げとなるものです。第2は、さわるとビリビリっときたり、パチっと火がとんだり、時によるとショック死するような恐怖感がつきまとうものであること。これには何せカヨワキおかあさんがたの最もいやな所です。第3に、こんなに好ましくなく、逃げだしたいのが山々なのに、使わずにいられないという所です。
電気の本質とは
以上の三つこそは、「電気」の性質をみごとに把握していることのあらわれだと思います。私にいわせると、こんなにも「電気」の性質をはあくしているおかあさんこそは、「電気」のよき教育者にもなれる筈だと思っています。そういう自信をおかさんがたがもってくださるなら、電気がすきで、よく理解したい子がどっさりふえることになるでしょう。そうしたらすばらしい指導者が身近におられるのですから、従来のような「現象的電気の本」ではなく、「本質的な電気の本」をつくってみたくなりました。その電気の本質とは何かといえば、この本では、ひそかにはりめぐらした三つの事項、
(1) 電気はつたわる
(2)電気と磁気とは兄弟
(3)電気は光、熱、音などに変わる
ということです。このことをくみとっていただければ、わたしの「電気学校」はもう卒業というわけです。
『でんとうがつくまで』が1970年に刊行された際、折り込み付録としてついていた、かこさとしの解説文「あなおそろしきエレキテル」の後半を掲載します。
「あなおそろしきエレキテル」加古里子
蛇足を少々ーー
電気は電気
あとはもう読者のみなさんがたにおまかせするばかりなのですが、二つ三つ蛇足をつけ加えますと、水力であっても火力であっても、発電された電気そのものに全く変わりありません。もちろん、他の風力その他でつくられた電気の場合も同じです。「水の電気は青く、火力の電気は赤っぽい」などということはありません。現在水力発電は、開発、 設備費の巨大になるため、あまり期待できず、大部分火力発電となっています。火力の主体は重油ですが、石炭もつかわれるため、この本では、石炭重油の両用できる形を示してあります。火力発電で、いったん蒸気となり、蒸気車(タービン)を回すのに使われた水は冷えるとまたボイラーにもどして何回も使うようになっています。水力発電でも、いったん水車をまわして流れた水を、夜間余った電力でポンプをまわし、再びダムにくみあげるなど、合理的な方法が工夫されています。やがては、原子力による発電が、増加するといわれています、また、電気をおこす機構がちがう太陽電池、MHD発電等の方法がありますが それらについては省略してあります。
変圧器の働き
発電機でおこされた電気は、効率よく送電するため、10万、20万、ときによると50万ボルト以上の高圧に変圧器でかえられ高い電塔にはられた送電線で消費地に送られます。送電線は、銅やアルミでつくられています、消費地近くまで高圧で送られた電気は、一次変電所、二次変電所等で、6千6百ボルト、3千3百ボルトにだんだん下げられ、大きな工場やビル等へ送られます。家庭にはさらに電柱や地下ケーブルの端に、小型の変圧器があり、2百または百ボルトに下げ、そこから家庭内の引込線となっています。家庭の入口にはメートルとよんでいる積算電力計、安全器、ブレーカーなどがあって、その端が電灯やコンセントとなっています。
説明図に工夫
それから、発電の説明図で、本当はコイルの位置が、教科書などにあるように磁石の上にある方が実験室としては効率的なのですが、そのようにすると実際の発電機と図の対比が混乱することと、電気の流れの方向が、磁石動きで逆むきとなることの二つの理由から、あえて変えておきました。説明図を単に説明に止めるのではなく、外形しかわからぬ実用機器機構的説明を、一連した形であらわしたいというねがいに発しているわけです。
さて、こうしてできたこの本が「あなおそろしやエレキテル」の本となるか、「あれおどろきてアキレテル」の本となるか、一にかかっている読者のみなさんのご批判をまつことといたします。
川崎市市民ミュージアムでの「かこさとしのひみつ展-だるまちゃんと探しに行こう-」が終わって1か月が過ぎようとしています。この展示期間中に設けていただきました「いつまでも いつまでも かこさとし 」のコーナーで皆様が書いて下さったメッセージを先ごろ受け取りました。
一人では持ち上げられないほど大きくて重い箱には、8冊のファイルに綺麗にまとめられたメッセージカードが3801枚と、添えられたお手紙にありました。また、展示会に先駆け全国各地の書店に設置されたメッセージボックスに投函していただいたものをまとめた5冊のファイルも一緒に届きました。これより先に越前市ふるさと絵本館からいただいたスケッチブックのメッセージと合わせ、毎日じっくり読ませていただいております。
カードは皆様のお気持ち、思い出、励ましや感謝の言葉に溢れ、様々な表情のだるまちゃんやからす、かこの顔、キャラクターなど、どれもこれも心に響くものばかりです。ようやく鉛筆が持てるような小さい方の手によるものから、きっとプロフェッショナルと思われる筆使いで描いてくださっている方。
小さな限られたスペースにこんなに素敵な画面を、こんなに広い世界を、深い思い、長いご家族の歴史を書いてくださった皆様に頭が下がり、感謝しつつ、笑顔でそして時に涙で、お一人お一人におめにかかるようにして、その時間を過ごしております。皆様のお心の中に、かこさとしが生き続けていることがわかり、これ以上嬉しいことはありません。
遠方から来てくださったり、何回も足を運んでくださった方も多くいらして、偲んでいただいたかこさとしは、さぞかし恐縮していることでしょう。「申し訳ないねえ。お返事が書けたらなあ」という声が聞こえてくるようです。
直接御礼申し上げることができず、また感謝の気持ちを表す言葉が見つからず情けなさでいっぱいですが、衷心より厚く御礼申し上げます。
最後になりましたが、皆様のご健康とご多幸を心よりお祈りしております。誠にありがとうございました。
金木犀の香り漂う候となりました。季節ならでは自然の香りは良いものです。
秋の香りで連想するものといえば、松茸でしょうか。食さずともせめて香りだけでも、と思ってしまいます。「においはマツタケオール、イソマツタケオール、ケイヒ酸メチル」と説明があるのは、『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)9月の欄です。このページでは、9月に生まれ(1887年)亡くなった(1976年)スイスの化学者ルジカ(下)を紹介しています。
ルジカは「ジャコウの中に含まれている、かおりの化合物ムスコン、とジャコウのねこのかおりの成分、シベトン化学構造をあきらかにし」たばかりでなく、「ジャスミンの花にある、ジャスモンという化学物質をつきとめ」1939年ノーベル化学賞を受賞しました。
かこさとしふるさと絵本館がある越前市の「だるまちゃん広場」など武生中央公園では、例年より早く2018年9月28日から11月4日まで菊人形が展示されています。他では見たことのないような千輪菊、7本立ての大菊、懸崖や、動物や文字の形のトピアリーなど、1-2年かけて栽培されたものが所狭しと並べられます。
キクについて、この本の10月のページ(下)には「キク:花の色はアントシアン(赤)、カロチノイド(黄)。花のにおいは、ピネン、テルペンアルコール、しょうのう。」とあります。
10月には21日に生まれたノーベルの遺言によるノーベル賞が発表されますが、この本には、宇宙誕生から2016年までの「科学年表・科学の歴史」もあり、あとがきには制作にあたり、熱い思いでご協力いただいた多くの化学者の名前が列記されています。古今東西、研究に人生を捧げた科学者たちのおかげで私たちの現在の生活があるというわけです。
ところで、かこさとし」の遺稿「だるまちゃんとうらしまちゃん」(「母の友」10月号に掲載)をお読みいただけましたか。浦島太郎をモチーフにした読み聞かせにぴったりの作品です。『世界の科学者12か月』の「化学のちいさなお話」コーナーでは次のようにあります。
(引用はじめ)
「桃太郎、金太郎、浦島太郎をおとぎ話の三太郎、アボガドロ(Avogadro )、ベルセリウス(Berzelius)、キャベンディシュ(Cavendish)を化学の先覚ABCとよんでいます。
(引用おわり)
というわけで、この本の裏表紙(下)には、この三人の化学者が紹介されています。また、日本の化学者のすばらしい三太郎、鈴木梅太郎、長岡半太郎、本多光太郎についても本文で紹介しています。ちなみに表紙の六角形の三人はギリシャのタレス、アリストテレス、デモクリトスで紀元前の人々です。
読書の秋、文学も素敵ですが身近にある科学もお楽しみ下さい。
秋のお彼岸が終わりました。
今年の春のお彼岸には関東地方では季節外れの雪が降り、芝生や満開の梅に積もった雪を見て一句捻っていた加古でした。ちょうどその日は、小峰書店の編集者さんが『みずとはなんじゃ?』について打ち合わせに来られ、その編集者さんの担当だった『子どもの行事 しぜんと生活 3がつのまき』(2013年小峰書店)の彼岸のページを開いて雪景色を眺めながら思い出話しをしておりました。
そして2018年秋の彼岸9月23日に、加古は墓所の中に収まりました。生まれ故郷、福井県越前市の引接寺(いんじょうじ・上)です。15世紀に建てられたこのお寺は、京町という風情のある一角にあり、武生(たけふ)駅や「だるまちゃん広場」などがある武生中央公園から歩いて行ける所です。
山門を入って左側の一番奥、本の形をしているのですぐにお判りになります。(上)
山門の右側奥には、加古が通ったこのお寺の幼稚園、丈生(じょうせい)幼稚園(下)があります。
加古は特定の宗教を持っておりませんでしたが、お寺のご好意で、故郷のゆかりあるお寺で眠らせていただくこととなりましたことを謹んでご報告致します。
木々の葉に秋の気配が感じられるここは、「だるまちゃん広場」のある武生中央公園から絵本館に向かってきた所。
風もなく、親子さんが外で楽しそうに羽根つきをしている音が心地よく響き印象的でした。
絵本館入口左手前にあるだるまちゃんのモニュメント脇に植えられたヤツデもすっかり根付き茂っています。
正面入口に立つと何やら賑やかな音楽が聞こえてきました。
絵本館2階で全場面展示中(11月11日まで)の『あさですよ よるですよ』(1986年 福音館書店)にちなんだ劇のリハーサルのようです。
この絵本には、お子さんたちの日常の身近な事を通じて、目に見えない時間というものをを認識できるようにという意図もあります。
絵本に描かれている園や家は、ずいぶん恵まれていて、子どもたちが大切な事をしっかり学びながらゆったり暮らしています。著者がこの本を執筆した1986年当時では、夢のような暮らしぶりですが、著者の願いが感じられます。
後ろ姿もなんとも愛らしいまめちゃんたちを演じるのは、かこさとしが八十数年前に通っていた幼稚園のお子さんたち。ご家族も出演され、絵本館スタッフや「だるまちゃんファンクラブ」の皆さんとともに時計を読みながら絵本にそって劇は進みます。
挨拶、遊び、紙芝居を読んでもらったり、家族や自分のことを話したり。楽しそうに一生懸命、そして時々観客席のお家の方が気になる様子に、見ている人々も皆ニコニコ、手拍子や掛け声で応援。
絵本に描かれている子どもたちを大人が見守る眼差しや一家団欒の暖かな空気が伝わってくる劇に心が和みました。
まめちゃんたちと同じような遊びが武生中央公園の「まめちゃんえん」(小さいお子さん専用)で楽しめます。2018年11月11日までは、公園の「まめちゃんえん」で遊び絵本館で原画複製をご覧いただけるチャンスです。
尚、9月28日からは武生中央公園で菊人形も始まります。(入場無料・11月4日まで)
まめちゃんたちの写真は以下にもあります。
http://www.city.echizen.lg.jp/office/090/050/kakosatosi/otanjoubiibent.html
花より団子ではないのですが、お月見でどうしても飾りたいのはススキに秋の実りとお団子。月餅を飾ったこともありましたが、白いまんまるのお団子を盛り、翌日、甘辛く煮てもらって食べるのが幼い頃は楽しみでした。
そんな風物詩を描いているのが、『ことばのべんきょう くまちゃんいちねん』(1971年福音館書店)や『こどものカレンダー』(1975年偕成社)です。
お月見が表紙になっている『こどもの行事 しぜんと生活 9がつのまき』(2012年 小峰書店・上)では「中秋の名月」にちなみ〈月の形と名前〉〈月とウサギ〉、〈月の位置とみちかけの形〉〈月の形と出入りの時間〉など、大人でも正確に説明するのは難しい事柄がわかり易くイラストで示されています。
この本の表紙及び裏表紙の絵は、藤沢市役所の1階に9月いっぱい展示されていますので、近くにお住まいの方は是非ご覧下さい。(2018年12月まで毎月、その月の本の表紙絵に掛け替えています。)
『いろいろ食事 春秋うまい かこさとしの食べごと 大発見 5』(1994年農文協・下)には、〈月見だんごのつくり方〉まで載っています。
「だんごの数は、ふつう15ですが、ところによっては、12(平年)、13(うるう年)のときもあります。」と説明があって、三宝に美味しそうに飾られているお団子の絵があり、ここでクイズが出題されます。
「15のだんごのをつむには、どのようなかたちにしたらよいでしょうか。また、12や13のときはどうつみますか?」
ヒントは、一番上は1つ、その下は4つでこれは、お団子がいくつであっても同じです。
「答えは後ろの見返し」とありますが、特別に答えをお知らせします。2018年は9月24日が十五夜だそうです。きれいに積んだお団子とともに、お月見をお楽しみ下さい。
遠足シーズンといえば春か秋ですが、暑さが厳しい近年はその時期を選ぶのも難しそうです。絵本の中を覗いてみましょう。
「、、、きょうは、とても いいおてんきだから、みんなで えんそくに 行きましょう。」この声に歓声をあげて 「🎶チロ チロ パッパ」と遠足に出かけるのは『おたまじゃくしの101ちゃん』(1973年偕成社)。
途中で101ちゃんが迷子になってしまったらしく、事件が起こります。
元気いっぱい山登りするのは『あかいありのぼうけんえんそく』(2014年 偕成社・下は前扉)。題名に「えんそく」の文字がありますが、物語はこう始まります。
「あきになりました。えんそくに よい きせつです。あかありしょうがっこうでは、いちねんせいから ろくねんせいまで、ぜんぶのせいとでそろって「あきえんそく」をします。」
ところがその遠足の場所はどうやら難所もあるらしくPTAも同行しての一大イベント。秋の草花を背景に遠足の行列が進んで行くと「ぼうけんえんそく」の名にふさわしく様々なハプニングが起こります。虫好きさんには大人気ですが、ちょっぴり怖い方もいらっしゃるかもしれません。
「 どくしゃへ ごちゅうい!! きをつけて ページをひらいてください!」
こんな注意書きがあるのは加古作品の中でこの絵本のみです。しかし、実はもっとあぶない遠足もあります。
そうです。とっぷり日が暮れたこの場面。
「🎶 ぬきあし さしあし
しのびあし
どろぼうがっこうの
えんそくだ
それ!」
やっぱり遠足は、『ことばのべんきょう くまちゃんのいちねん』(1971年福音館書店)にあるように、秋晴れのもと素敵な景色をゆっくり眺めながら美味しいお弁当を食べて季節を満喫したいものです。
後ろ向きで絵を描いているのは著者でしょうか。秋は加古の好きな季節でした。
だるまちゃんシリーズは1957年刊行の「だるまちゃんとてんぐちゃん」に始まり2018年の最新三作「だるまちゃんとかまどんちゃん」「だるまちゃんとはやたちゃん」「だるまちゃんとキジムナちゃん」の全11作品(福音館書店)ですが、実はだるまちゃんを主人公にした絵本や紙芝居は他にもあります。
飯田の人形劇フェタに招かれ地元の皆様の切望にお応えして作成した「だるまちゃん・りんごんちゃん」(2013年瑞雲舎)は飯田の名産、りんごがだるまちゃんのお友だち、りんごんちゃんとして登場。人形劇もありのご当地色満載の楽しいお話です。(上が表紙、下は前扉)
社会福祉財団のジャンボ絵本になった「だるまちゃん きつねちゃん」「だるまちゃん はるのうた ふゆのうた」という作品は一般には販売せず、福祉施設に寄贈されました。
本ではありませんが、加古作品には、時折だるまちゃんやその仲間が登場しますので、探してみましょう。
『遊びの大星雲3みごとはなやかなあそび」(1992年農文協)「いろいろのはな さまざまないろ」(下)では季節による花の色の多少を示しているのですが、なんと「だるまちゃん」のみならず「かみなりちゃん」や「てんぐちゃん」も花を手に嬉しそう。見ているこちらも嬉しくなってきます。ちなみに白い花は一年を通して多いそうです。
『あそびの大事典 もりいずみ はらっぱの あそび』(2015年農文協)の「もみじのはのさきのかぞえかた」では、小さい絵ではありますが、だるまちゃん、てんぐちゃん、それに、からすもいます!
古い本ですが、この10月に限定販売の予定ですので、ご紹介しておきましょう。以下のようにだるまちゃんとてんぐちゃんが凧の絵になって登場のその名も『たこ』(1975年福音館書店)という科学絵本もあります。
だるまは、絵本の色々な場面で描かれていますが、それはまたの機会にご紹介致します。
「だるまちゃん」は、もちろん『だるまちゃんすごろく』『だるまちゃんしんぶん』や『だるまちゃんと楽しむ 日本の子どもにあそび読本(いずれも2016年福音館書店)でもたっぷり、たくさんのお友だちと登場します。すごろく、季節の話題、遊びを是非「だるまちゃん」と一緒にお楽しみ下さい。
『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』(1972年偕成社)の四十年ぶりの続編として出版された本作は、前作同様、切り紙を使った画面構成が特徴です。これは前作のユニークな制作経緯と関係しています。
1950年代、かこさとしが川崎でセツルメント活動として、日曜日ごとに子どもたちに絵の指導や紙芝居などを通じて子どもさんたちと遊んでいたのですが、その中でハサミの使い方が上手にできないことに気づきました。そこで子どもたちに色紙を円形に切り抜かせ、それを使って顔の表情を作るという遊びをしました。子どもさんたちが切り取り、貼り付けてできた様々な表情の顔を、今度は加古が配置して、線で手や足を書き加え紙芝居に仕立てました。
子どもにしてみれば自分が丸く切り抜き、さらに小さな丸を切ったり貼ったりして目や口にして出来上がった自分の分身のようなものが、紙芝居に登場するのですから嬉しくて楽しいはずです。お友達が作った顔もわかっていて、誰ちゃんのものだとか、自分のが出てきたかとかそんな声とともに紙芝居に夢中になったようです。
それが元になって刊行された『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』にはもちろん、目の色が違ってもみんなお友達という願いも込められています。子どもたちの名前は紹介されていませんが、続編ではあおいめのめりーちゃん、くろいめのたろーちゃん、ちゃいろのめのばぶちゃんという設定になっています。
さて、続編では加古自身が最初からハサミを持ったわけですが、出来栄えについては「あとがき」にありますので、ご紹介いたしましょう。
あとがき かこさとし
(引用はじめ)
この巻は、前作品『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』の続編で前作の挿画は円形の切り紙を主軸にした「はり絵」でした。それは当時指導していた子ども会の子らが、元気で野性的だったのはよかったのですが、どうも手先が不器用で、七夕の飾りを作るときなどさんざんでした。それで色紙を大小の円形にハサミで切るよう指導して、器用さの練習とした訳です。
できた大小の丸い紙をすてるに忍びず、目や顔、いろいろな表情をつくり、紙芝居にして、子らの作品(?)がこんなに変身活用できることを示したという訳でした。
その続編なので、同様の丸い切り紙を軸にしたのですが、40年の歳月は、作者にいろいろの持病、特に視野欠損をもたらしました。当時の数倍の努力と時間を傾注したのですが、その頃の子ども達よりひどい歪んだ切紙で、慙愧の至り、お許しの程。
(引用おわり)
尚、本文は縦書きで漢字には全てひらがながふってあります。
使用した紙はミューズ紙、ラシャ紙などもありますが、7-8ページの本屋さんのウグイス色や21ページのまな板など、加古が越前市の和紙の里で選んだ越前和紙を使用しています。