編集室より

かこは、20代半ばからおよそ20年間川崎でセツルメント活動をいうボランティア活動をして子どもたちと毎日曜日を過ごしました。その折、川崎セツルメントのシンボルマークを作ったったのですが、それは黄緑色の地に白い1つの星で、「自ら輝く星になれ」の意味を込めていました。自ら輝く星、恒星について書いているのが『よあけ ゆうやけ にじやオーロラ』(2005年農文協)のあとがきです。

あとがき

(引用はじめ)
地球上のすべての生物は、太陽の光や熱などのめぐみをうけて生きていますが、この太陽のように自分でひかりかがやいている天体を恒星をよんでいます。上の図に示した北斗七星など、夜空の星もほとんど恒星で、太陽もその1つです。

幸いにも地球の近くに太陽があるので、その熱が伝わってきますが、とおくにある北斗七星からは熱が伝わってこないので「つめたく光っている」などど言われます。どうぞ太陽のさまざまなようすを知ることから、夜空にたくさん恒星があること、そして宇宙という大自然の美しさを、伝えていただきたいと思っています。
(引用おわり)
なお、本文の漢字には全てふりがながあります。

「秋は夕暮れ。」夕焼けの美しさを味わって、是非本書もお楽しみください

台風シーズンです。渦巻く風とは、台風や竜巻のことで、どうしてそのようなものになるのかをわかりやすく図を駆使して伝えます。

あとがきをご紹介しましょう。

あとがき

(引用はじめ)
空気は、地球上の大部分の生きものにとってとても大切なものなのに、無色透明で、形も重さも感じられないので、その存在を気にせずくらしています。その姿のない空気を気づかせてくれるのは、風の動きです。

かぜによって空気というものの存在を知り、その空気の大事なこと、植物が長い年月かけてようやくこの空気をためてきたことなど、地球や自然をよく知り、その空気を汚したりせぬよう、大切に守るよう願って、この巻を作りました。
(引用おわり)
漢字には全てふりがながあります。

植物によって地球にもたらされた空気です。森林火災や乱開発、異常気象による砂漠化など心配なニュースが後を絶ちません。もし植物がなくなってしまったら。。。?

本書が年齢に応じて、こういったことを考えるきっかけになることを著者は願っていたに違いありません。

尚、2022年9月に新装版が出版されます。

ニュースによると2022年6月29日の午前8時は1.59ミリ秒はやくやってきたそうです。それは人類が1960年代に原子時計で地球の自転速度を測定し始めて以来、もっとも短い1日だったことを意味するとのこと。

地球の自転、公転、銀河、宇宙のことを小さなお子さんにもわかるように、やさしく、全てひらがなで説明している科学絵本のあとがきをご紹介します。

あとがき

(引用はじめ)
朝、太陽が東から出て、夕方西に沈む。星は東から西へと夜空を回る。地球から見るとこうした様子から、大昔の人たちは、宇宙の姿を思い、地球のまわりを、天にある星が回っていると考えました。「天動説」はその当時のすすんだ考え方でした。

しかし、その後科学が発達し、動いているのは地球であることがわかってきた今でも、小学生の4割が「天動説」と思っているとのことです。

自分の立場だけでなく、他の場から自分の姿を見つめることは「自立」のために、とても大切なことで、大人の方はご自身はもちろん、ぜひ小さい読者にも、このことを教え、導いていただきたく、この巻をつくりました。
(引用おわり)
漢字には全てひらがながふってあります。


ただいま渋谷Bunkamuraで公開中の生命図譜作成の意図に通じる思いがこのあとがきからも伝わってきます。人間という生き物を地球そして宇宙というスケールで見ることの大切さを、空を見上げて、あるいはこの本をよみながら思っていただけたらと思います。

尚、本書は9月28日に農文協より新装版が刊行される予定です。

2017年に武生中央公園にできた「だるまちゃん広場」「コウノトリ広場」「パピプペポー広場」は今では年間110万人以上の利用者がある福井県で最も人気のある公園となっていますが、このほど「コウノトリ広場」の一部がリニューアルされ、上の2冊にちなんだ魅力的な遊具として登場しました。

百聞は一見にしかず、以下のニュース動画をご覧ください。

コウノトリ広場 NHKニュース

2022年8月13日刊県民福井でも報じられました。

日刊 県民福井

夏の果物といえば西瓜。

筆者が子どもの頃は塩をかけて食べていました。水果と書くと思い込んでいたのもその頃です。そんな光景を思い出させるのが『こどもの行事 しぜんと生活 8月のまき』(2012年小峰書店)の裏表紙です。

渋谷Bunkamuraでの展示会で展示中です。よーく見るとスイカの種が小皿の上にあります。簾に吊りシノブ、風鈴にぶたの蚊やりと昭和のような光景です。スイカの鮮やかな色を是非会場の原画でご覧ください。

スイカが登場する作品はいくつもありますが、『からすのやおやさん』(2013年偕成社)でも売られています。野菜だけでなく果物も扱うようになってと、商売の仕組みや工夫がわかる絵本です。

この絵に続く場面では、売れ行きをよくしようとリンゴさんが名案を思いつきます。その場面の原画も Bunkamuraで展示しています。

農文教の「食べごと大発見本」シリーズの第8巻『きれい果物 あまから菓子』(上)でもツヤツヤ光る大きなスイカが並んでいます。さらにそれを上回るほど大きく描かれているのがこの場面。

『あめ ゆき あられ くものいろいろ』(2012年農文教)という科学絵本で、なぜ気象の話にスイカが登場するのかというと、本文には次のようにあります。

(引用はじめ)
くもの なかの ちいさな みずの つぶを 「すいかの たね」のおおきさに すると、
おちてくる あめの ひとつぶは「すいか」ほどの おおきさに なる。
(引用おわり)
雨粒がスイカの大きさだとすると、水蒸気はスイカの種ほどの大きさという比較。なるほどこれなら、小さいお子さんでもどれだけ水蒸気が小さいのかが想像できるでしょう。身近なものを使って説明する、かこらしい例です。

そしてスイカを話題にした算数の問題もあります!

『かこさとし あそびの大惑星7ももくりチョコレートのあそび』(1991年農文協)からの出題で、2桁の掛け算問題です。

(I引用はじめ)
おおきな すいか 3つを それぞれ はんぶんに きって、その はんぶんを 6つずつに きりました。 その きった すいかを こどもたちが ひとり ふたつずつ たべることばできました。
たげた すいかから、ひとりぶん 12この たねが できました。 さて ぜんぶで すいかの たねは
なんこ でてきたでしょうか? ゆっくり すいかを たべながら けいさいんをして ください。
(引用おわり)

【答え】
すいかは、3x2x6=36きれ、それを2切れずつ食べたのでこどもは18人
すいかの種は、12x18=216個

夏休み真っ只中。いつもとは違う遊びをしたいですね。
そんな時のヒントになる本といえば、お子さん向けの『あそびずかん なつのまき』(2014年小峰書店)が紹介されました。
以下でどうぞ。

あそびずかんなつのまき

この本のあとがきをご紹介します。

あとがき

夏は子どもにとって、窮屈な衣服から解放され、自由に行動できるときです。ちょうじかんの直射日光に注意しながら、全身の遊びができるよう配慮していただくとすばらしいせいちょうの季節となるでしょう。

また、海山や郷里などへの旅行の折、いつもの遊び仲間ではない、年齢や言葉や風習の違う出会いがあるかもしれません。こうした種々な交流や経験は、未来に生きる子どものすばらしい糧となります。そうした機会のため、夏の遊びをおおいに活用されるようおすすめいたします。

(本文の漢字には全てかながふってあります。)

コロナ禍で遠くまで出かけるのが難しいのですが、いつもの公園で、おうちキャンプで、新しい遊びに挑戦するのはいかがでしょうか。

この本の中に入って空想虫取りとか、空想バードウオッチングなんていうのは?絵描きじゃんけんも面白いですよ。存分にお楽しみください。

この4冊、かこさとしファンならお馴染みのものですが、Bunkamuraで開催中のかこさとし展にちなみ、おすすめの本として紹介されています。夏休みの読書のヒントになるかもしれません。以下でどうぞ。


『地球』(福音館書店)は 2022年8月7日讀賣新聞「本よみうり堂」でも「平常心を取り戻す」本として紹介されました。大人にもこどもにも、おすすめの本です。

この絵本の絵は、現在開催中のBunkamura「かこさとし展」のみならず、岡山県立美術館「かこさとしの世界」展でも絵や下絵をご覧いただけます。

おすすめの絵本

2022/08/07

夏山

夏山シーズンです。夏山で連想されるのは黒富士でしょうか。
町中で生まれ育った筆者にとって山は遠くにあるという認識でアルプスのような山々が最初に抱いたイメージでした。

『だむのおじさんたち』のこの場面です。正確に言えば、この場面を見て山とはこういうものなのかと知り、以来、この景色が私の中では山の原風景になりました。2歳ごろに初めてこの絵本を見てから十数年して黒部ダムを訪れ目にした景色はまさにこの絵の通りで、ようやく山の姿を見たと感動したことをはっきり覚えています。

幼いながら、山や木々、草花の色合いに魅了され、爽やかな風を絵から感じながら小動物が身近にいるこんな所に行ってみたいと想像が膨らみました。

この場面は『かわ』の冒頭。川の話なのに山から始まります。絵のような高い所で飲む石清水はどんなにか美味しいのだろうと思ったものです。『みずとはなんじゃ?』(2018年小峰書店)でかこに代わり絵を担当した鈴木まもるさんはこの場面をオマージュとして描いています。

上の左、『だむのおじさんたち』の表紙はBunkamuraの展示会で原画を初公開中です。
また右の『かわ』は複製原画を1枚ですが展示しています。

下は、日本ではなく、中国『万里の長城』(2011年福音館書店)のカバー絵です。
この本が日本でようやく出版された翌年、福音館書店の松居直さんご家族と、中国の画家さんとの通訳と編集でお世話になった唐亜明さんご夫妻とご一緒にかこが長城を訪れたのは9月初め。長城の周辺の緑は濃いものの多湿な日本の山とは異なる趣が印象的でした。

涼しい山で深呼吸、そんなことがしたい今日この頃ですが、せめて絵本の絵を見ながら想像の翼を広げるとしましょう。

好奇心くすぐるおすすめ科学絵本として『だんめんず』(1973年福音館書店)を紹介。

本作は1973年に出版され、来年で刊行50年を迎えるロングセラーです。
ふだん目にすることができない郵便ポストやエスカレーターの断面図もあり、断面図によって内部がわかる面白さを絵本を通して知ることができます。

現在Bunkamuraで開催中の「かこさとし展子どもたちに伝えたかったこと」で複製原画を展示しています。会場には他にも断面図を使いながらダムや地球の内部を伝える絵などがありますのでお楽しみください。

好奇心くすぐる絵本

子どもの理科離れの原因は大人の理科離れでは、というかこと福岡伸一氏の対談を掲載している『ちっちゃな科学』(中央ラクレ)を2022年7月30日読売新聞朝刊「編集手帳」で紹介。

夏休みの今、大人も子どもも身近にあるものを好奇心を持って見つめ、考える時間が大切のようです。

2022年9月号の雑誌「プレシャス」ArtコーナーでBunkamuraの展示会を以下の『地下鉄のできるまで』の以下の場面の写真とともに紹介。細い線で描き込まれた原画を是非会場でご覧ください。

あとがき

この作の源は、山国に伝わる鳥獣婚姻話の一つを1955年、当時流布していた「鶴女房話」にあきたらなかった私が、当時かかわっていた子ども会で話したのが始まりです。鶴は往時から上品高な鳥の代表で、裏切りで別れる女性と金に目がくらんだ男の題材は子供には不適で、庶民的な山鳥と前向きに生きようとする男女の姿の方が、子供たちにふさわしいと思ったからです。

それまでの絵画指導や紙芝居の私の活動と異なり、素話の形で終えた時、2人のおてんばから「山鳥さん返して」と泣かれたことと、後に東大教育学部教授となった仲間のエス君が「お話もやるんですネ」とめずらしくおセジをいってくれたことが、印象として残っています。

その後1978年、偕成社から語り絵本シリーズの1冊として出版、さらに1994年、上障害児福祉財団から音楽CD付紙芝居として、全国の施設に送られました。

野人門外漢である私が、今日まで子ども関係のお手伝いを続けられたのは、前述の子どもたちや同じ志の友人同僚、そして出版、福祉の専門家の方々の励ましやご援助の賜物なので、老骨米寿の期に、報恩感謝の微意をこめ、前述紙芝居を基底にこの絵本を製作致しました。印刷出版の実務に関しては関しては偕成社の御許しと御力を得て、全国公共図書館に贈らせていただき、全国の皆様への挨拶とする次第です。
(本文は縦書きです)

上記にあるようにこの本は全国の公立図書館への寄贈を目的として、かこの米寿記念に出版されたものです。図書館でお読みいただければ幸いです。この紙芝居のあらすじや解説は『かこさとしと紙芝居 創作の原点』(2021年童心社)や『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社 )にありますが、現在Bunkamuraに開催中の「かこさとし展」で原画を展示中です。1枚だけですが、「ヤ助」とばれる理由がわかる迫力のある絵を是非ご鑑賞ください。