編集室より

(引用はじめ)
「三本足のカラス」って何か知ってるかい?
「三本足のカラスのマーク」といったほうが、いいかもしれない。(中略)それは、日本しゅう球協会のマークなんだ。どうだい、あたったかい?下の図が協会のマークでテレビなどで時ときどき旗が移ることがあるから、気をつけてみるといいだろう。サッカー(しゅう球)は足でボールをけったり、ころがしたりするスポーツだから、3本も足のあるカラスが、マークとしてつかわれているというわけなんだ。
(引用おわり)
こんな書き出しで始まるこの本は、今から50年以上前に出版されたもので、いくらサッカー好きとはいえ、エネルギーの話をするのになぜカラスから始まるのでしょうか。

サッカーの試合で監督の先生に「もっとエネルギーを出せ!」と言われたことから、エネルギーとは何か、どんな形があるのか、形が変わってもエネルギーは無くならないこと、地球上のエネルギーのもとは太陽であることを、順を追って例をあげながら説明していく科学絵本で小学5年生の副教材として書かれたものなのです。

さて冒頭の答えですが、「金烏、玉兎」(きんうぎょくと)、つまり「 金色にかがやく烏ーーすなわち太陽と、玉のような兎ーーすなわち月」という表現から、太陽エネルギーについての連想だったというわけです。

それでは、あとがきをどうぞ。

あとがき

(引用はじめ)
子供たちは、もう4年生ぐらいになると、その子の好きなことにかけては、大人はもちろん、普通の専門家顔負けの水準に達します。例えて言うと、カブトムシの飼い方とか、電気機関車の制作だとか、魚の切手の収集とか、無線機通信の組み立てだとかーーです。それらはほとんど学校で教わったものではありません。親にやりなさいと勧められたものどころか、逆に、家事に隠れて調べたり、工夫をしたり、考えたりして、そんな水準に達したものが多いのが実情です。

教師や親を飛び越すこの力は、その子供が面白いと思い、興味に惹かれるままに行動し、考えてきた結果に他なりません。「おもしろい」「興味を持つ」ーーこのことがもつ、素晴らしいエネルギーを、ぜひ教育に活用していただきたいと念じております。
加古里子
(引用おわり)

左上は、1972年発行のハードカバー、右上が1970年の初版。絵はかこではありません。
尚、蹴球協会のマークについては、日本蹴球協会から提供と巻末に記されています。

2021年6月25日より、越前市ふるさと絵本館では夏のテーマ「太陽」にちなんだ展示を2021年8月30日までしています。

6月23日は沖縄・慰霊の日です。「モナ・リザ」で始まり「ゲルニカ」の紹介で終わる『美しい絵』(1974年偕成社)は、かこが自ら出版社に持ち込んで出版をお願いした経緯を持つ唯一の絵本で、2021年6月18日、ダ・ヴィンチニュースではこの本を紹介している『科学絵本の世界100』(2021年平凡社)を取り上げています。

『美しい絵』でかこはゲルニカの説明を次のように記しています。

(引用はじめ)
はげしい いかりや、
かわいそうな ひとを すくいたいという
いのるような 心を、
あらあらしい せんと、
かわった かたちと、
はいいろだけの 絵に こめたのです。
(引用おわり)
(尚、漢字にはふりがながあります。)

ピカソのように描くことはできなくても、絵に込められた思いを、絵を描いた人の心をくみとりたいと思います。

下は、『美しい絵』の裏表紙。若い頃のかこらしき人が嬉しそうにゴッホの絵を見ています。

この本の紹介があるのは、以下です。

美しい絵

かこさとしさんの原点凝縮 エッセー集文庫化

福井県越前市での野山遊びつづる

文春文庫として2021年5月に刊行された『だるまちゃんの思い出 遊びの四季』についての記事が、掲載されました。以下でご覧ください。

福井新聞 だるまちゃんの思い出

また6月19日には、愛媛新聞、秋田魁新報、沖縄タイムズでも書評が掲載されました。

教文館ナルニア国

東京・銀座にある子どもの本の専門店「教文館ナルニア国」さんによる本書の紹介は以下でお読みいただけます。

教文館 だるまちゃんの思い出 遊びの四季

私たちが知っている元素記号の周期率表はロシアの化学者メンデレーエフが作ったものが元で2019年には150周年が祝われました。

『なかよし いじわる元素の学校』(1982年偕成社)によると、メンデレーフ(1834年〜1907年・下)は「14兄弟の、勉強ぎらいの末っ子。母の死をきっかけに勉学に励み、1865年ペテルスブルク大学教授となった。当時、帝政ロシアが禁じていた女子の講義の出席をゆるすなど、進んだ考えの持ち主でした。」

このメンデレーエフとほぼ同時代、ドイツのマイヤー(1814年〜1878年)は、元素の大きさ(原子容)と重さ(原子量)を比べ表にしてみて「つぎつぎおしよせる波のように、上がり下がりしながら、そのはばが、しだいに大きくなっていること」、つまり「周期をもっていることにきづいた」と同著にあります。

マイヤーの肖像とその「山また山、大波小波のくりかえし」の様子を1869年及び1884年にマイヤーが発表した論文に基づいて加古が作成した図(下)が描かれています。

「とんがった山のところは、軽い金属の元素、谷のところは重い金属の元素、山の登るところは、液体や気体になりやすい元素があり、とけにくい元素や液体になりにくいものは、山からおりるところにある」ということがわかったのです。

そしてそれを印象づけるために、なんと、かこは北斎の富嶽三十六景と広重の東海道五十三次の浮世絵を模写で登場させています。なぜ、この二人なのかといえば、それはこの二人がマイヤーと同時代に生きていたからなのです。

日本人なら一度は目にしたことのあるこの2枚の浮世絵を周期表と組み合わせることにより、マイヤーとその功績がより身近なものに感じられ記憶に残ると言うわけです。いやはや、これは、まいった!

2021年度より季節ごとにテーマを決めて展示をしている福井県越前市のかこさとし絵本館のことが2021年6月5日の福井新聞で紹介されました。6月21日までは「山」をキーワードに、物語、科学絵本から山の場面を展示しています。お近くの皆様、お見逃しなく!

6月22日(火)から24日(木)までは展示替えのため臨時休館で、6月25日(金)から8月30日(月)までは「太陽」をテーマに展示され、『よあけゆうやけ にじやオーロラ』(2005年農文協)、『太陽と光しょくばいものがたり』(2010年偕成社)や『人間』(1995年福音館書店)などの複製原画がご覧いただけます。初公開のものが数枚ありますので、どうぞお楽しみに。



午前9:00〜9:29

『だるまちゃんとてんぐちゃん』(1967年福音館書店)の朗読が上記の予定で放送されます。お時間ありましたらどうぞお聞きください。

近年出版された本には「作者のことば」があとがきとして記されています。ご紹介いたします。

あとがき

(引用はじめ)
いわゆる無国籍の児童文化が多かった戦後の時代、そういう時だからこそ日本的な、民族性に富んだものを作りたいと思い、親しんでいた郷土玩具のキャラクターから題材を選ぶことにしました。

こうしてだるまちゃんの本は、古代南インド香至(こうじ)国の第三王子で、中国の嵩山岩窟で九年間座禅を組んだ高僧達磨ですが、日本に伝わると、その不屈黙思の精神が感動を呼び、親しみあるひげの顔と赤橙色の丸い僧衣の日本的な姿と心となって多くの玩具となりました。その幼児形で現今日本の子供たちの代表となってもらいました。

天狗はインドでは半人半鳥神人、中国では翼嘴の怪獣とされ、日本では深山の精霊と伝え、全国の高山の白髪長鼻赤顔の僧服の大天狗と従者の烏天狗として伝承されてきましたまた。この日本の天狗の幼児型を、いばりん坊でかわいいてんぐちゃんにして、だるまちゃんの友達になってもらった訳です。
(引用おわり)

「あいことば」午前9:30〜9:58

2021年1月に出版された、小さなお話7話からなる本作品。その第一話「ポンちゃんのポンポ」の朗読が放送されます。
心あたたまる、いのしし先生とポンちゃんのやりとり、思わずクスッと笑ってしまう結末。お子さんも大人もお楽しみいただけます。

本書については2021年6月9日東京新聞 こども面でも紹介されました。

藤沢市役所本庁舎1階では、1枚ではありますが、季節ごとに絵本の絵を展示しています。
2021年6月7日からは『サザンちゃんのおともだち』(1973年偕成社)の場面で、アフリカにすむ動物たちが、おまつりで元気いっぱい、素敵な踊りを披露します。おや?! 見慣れた様子とは少し違うようです。いったいどんな姿なのでしょうか。どうぞお楽しみください。

さまざまな視点から取り上げていただくことが多い『からすのパンやさん』(1973年偕成社)ですが、2021年5月28日山梨日日新聞では、[絵本の「深読み」大人も楽しんで]という見出しで、たくさんのパンが並ぶ場面、そしてからすたちの「生き生きした描写」について触れています。

また、2021年5月17日発行の『絵本のお菓子』(マイルスタッフ)では、パンが並ぶ場面から、きつねやかたつむりパンなどかわいいパンの作り方が写真で紹介されています。皆さんのお気に入りのパンはどれですか?

新聞記事は以下で。

山梨日日新聞

写真のような◯を見て記号ですと言われたら、なんの記号と思われますか。

気象記号なら、快晴、晴、雨ですが、地図記号なら最初の◯は町村役場です。ちなみに◎は市役所で(気象記号なら曇)、黒い小丸、というか点3つで茶畑です。『かわ』(1962年福音館書店)の裏表紙(下)には地図同様、記号もかこの手書きで書かれています。

さて、冒頭の記号ですが、 ドルトン(1766.9.6〜1844.7.27)考案の記号によると、酸素、窒素、炭素となります。◯の中に縦線1本は窒素、2本になるとナトリウム、3本はカリウム。また、◯の中に+は硫黄、◯の中央にもう一つ小さな黒い丸⚫︎は水素だそうです。

『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)の前扉(上)にドルトンの横顔とその原子記号が描かれています。丸い物、りんごにメロン、かこが好んだサッカーのボール、そして地球まで出てきてそちらに目が行きますが是非ドルトンとその記号にご注目ください。

しかしながら、◯の中に多様に書き込んでも原子全てを表すことができず、ドルトンは頭文字(英語)を入れたそうです。

その◯を取り、原子のラテン語名の頭文字を使うことを考案したのがスウェーデンの化学者ベリセーリウスで、現在の原子記号の元になったと『原子の探検 楽しい実験』(1981年偕成社)にあります。

「頭文字がおなじときは。2番目か3番目の字をもうひとつつけて、区別するようにしました。」

上下の図はそういった経緯を説明するもので、3段目に錬金術師の記号、続いてドルトンの記号、最後の段がベルセーリウスの記号です。原子記号は「科学を勉強するための、世界共通のことばとなっているのです。」

ドルトンは化学、物理学、のみならず植物学、昆虫学、数学なども研究し15歳から78歳で生涯と閉じた前日まで気象観測を行い記録をとりました。その興味深い生涯については『科学者の目』(2017年童心社)で取り上げています。是非、ご一読ください。