編集室より

2021年度より季節ごとにテーマを決めて展示をしている福井県越前市のかこさとし絵本館のことが2021年6月5日の福井新聞で紹介されました。6月21日までは「山」をキーワードに、物語、科学絵本から山の場面を展示しています。お近くの皆様、お見逃しなく!

6月22日(火)から24日(木)までは展示替えのため臨時休館で、6月25日(金)から8月30日(月)までは「太陽」をテーマに展示され、『よあけゆうやけ にじやオーロラ』(2005年農文協)、『太陽と光しょくばいものがたり』(2010年偕成社)や『人間』(1995年福音館書店)などの複製原画がご覧いただけます。初公開のものが数枚ありますので、どうぞお楽しみに。



午前9:00〜9:29

『だるまちゃんとてんぐちゃん』(1967年福音館書店)の朗読が上記の予定で放送されます。お時間ありましたらどうぞお聞きください。

近年出版された本には「作者のことば」があとがきとして記されています。ご紹介いたします。

あとがき

(引用はじめ)
いわゆる無国籍の児童文化が多かった戦後の時代、そういう時だからこそ日本的な、民族性に富んだものを作りたいと思い、親しんでいた郷土玩具のキャラクターから題材を選ぶことにしました。

こうしてだるまちゃんの本は、古代南インド香至(こうじ)国の第三王子で、中国の嵩山岩窟で九年間座禅を組んだ高僧達磨ですが、日本に伝わると、その不屈黙思の精神が感動を呼び、親しみあるひげの顔と赤橙色の丸い僧衣の日本的な姿と心となって多くの玩具となりました。その幼児形で現今日本の子供たちの代表となってもらいました。

天狗はインドでは半人半鳥神人、中国では翼嘴の怪獣とされ、日本では深山の精霊と伝え、全国の高山の白髪長鼻赤顔の僧服の大天狗と従者の烏天狗として伝承されてきましたまた。この日本の天狗の幼児型を、いばりん坊でかわいいてんぐちゃんにして、だるまちゃんの友達になってもらった訳です。
(引用おわり)

「あいことば」午前9:30〜9:58

2021年1月に出版された、小さなお話7話からなる本作品。その第一話「ポンちゃんのポンポ」の朗読が放送されます。
心あたたまる、いのしし先生とポンちゃんのやりとり、思わずクスッと笑ってしまう結末。お子さんも大人もお楽しみいただけます。

本書については2021年6月9日東京新聞 こども面でも紹介されました。

藤沢市役所本庁舎1階では、1枚ではありますが、季節ごとに絵本の絵を展示しています。
2021年6月7日からは『サザンちゃんのおともだち』(1973年偕成社)の場面で、アフリカにすむ動物たちが、おまつりで元気いっぱい、素敵な踊りを披露します。おや?! 見慣れた様子とは少し違うようです。いったいどんな姿なのでしょうか。どうぞお楽しみください。

さまざまな視点から取り上げていただくことが多い『からすのパンやさん』(1973年偕成社)ですが、2021年5月28日山梨日日新聞では、[絵本の「深読み」大人も楽しんで]という見出しで、たくさんのパンが並ぶ場面、そしてからすたちの「生き生きした描写」について触れています。

また、2021年5月17日発行の『絵本のお菓子』(マイルスタッフ)では、パンが並ぶ場面から、きつねやかたつむりパンなどかわいいパンの作り方が写真で紹介されています。皆さんのお気に入りのパンはどれですか?

新聞記事は以下で。

山梨日日新聞

写真のような◯を見て記号ですと言われたら、なんの記号と思われますか。

気象記号なら、快晴、晴、雨ですが、地図記号なら最初の◯は町村役場です。ちなみに◎は市役所で(気象記号なら曇)、黒い小丸、というか点3つで茶畑です。『かわ』(1962年福音館書店)の裏表紙(下)には地図同様、記号もかこの手書きで書かれています。

さて、冒頭の記号ですが、 ドルトン(1766.9.6〜1844.7.27)考案の記号によると、酸素、窒素、炭素となります。◯の中に縦線1本は窒素、2本になるとナトリウム、3本はカリウム。また、◯の中に+は硫黄、◯の中央にもう一つ小さな黒い丸⚫︎は水素だそうです。

『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)の前扉(上)にドルトンの横顔とその原子記号が描かれています。丸い物、りんごにメロン、かこが好んだサッカーのボール、そして地球まで出てきてそちらに目が行きますが是非ドルトンとその記号にご注目ください。

しかしながら、◯の中に多様に書き込んでも原子全てを表すことができず、ドルトンは頭文字(英語)を入れたそうです。

その◯を取り、原子のラテン語名の頭文字を使うことを考案したのがスウェーデンの化学者ベリセーリウスで、現在の原子記号の元になったと『原子の探検 楽しい実験』(1981年偕成社)にあります。

「頭文字がおなじときは。2番目か3番目の字をもうひとつつけて、区別するようにしました。」

上下の図はそういった経緯を説明するもので、3段目に錬金術師の記号、続いてドルトンの記号、最後の段がベルセーリウスの記号です。原子記号は「科学を勉強するための、世界共通のことばとなっているのです。」

ドルトンは化学、物理学、のみならず植物学、昆虫学、数学なども研究し15歳から78歳で生涯と閉じた前日まで気象観測を行い記録をとりました。その興味深い生涯については『科学者の目』(2017年童心社)で取り上げています。是非、ご一読ください。

『万里の長城』がようやく完成した2011年、中国の絵本賞のプレゼンターとして、また北京にある、日本で言えば芸大にあたる大学での講演依頼もあって、長年にわたりこの本の出版を支えてくださった福音館書店の松居直、編集の唐亜明両氏とそのご家族とご一緒に、北京旅行出かけました。

筆者にとっては初めての中国大陸、興味津々でホテルの部屋をチェックして見つけたのが「牙刷」。なるほど、たしかに牙、と思ったその瞬間が記憶に残っています。加古は、1991年、1995年にも中国で講演をしていますのでその時に、もう牙刷を目にしていたことでしょう。牙刷とは歯ブラシです。なーんだ、そうか、ですね

『ぼくのハは もう おとな 6さいきゅうしが はえてきた』(1980年フレーベル館)の「けんすけ」くんがキバヤマ先生に診てもらう理由は、ハの奥の歯がないところが白くなってきて変な感じがしたから。それは6歳臼歯が生える合図です。

6歳臼歯は大人の歯で一番力が強い、ということで、横綱牙の山まで登場。しかも磨きにくいこと、どうやったらきちんと磨くことができるかを教えてもらいます。

あとがきをどうぞ。
(引用はじめ)
だれひとり ムシバになりたいひとはいないのに 5さいごろまでにほとんどのこどもが たくさんのムシバをもつように なってしまいます。ちいさいので いうことをきかなかったり まわりのひとの きのつけかたが よくなかったこともあるのでしょう。
ムシバになったハを きちんと なおしてもらっておくと まもなく あたらしく おとなのハがでてきます。 このほんは そのとき もう まえのしっぱいを くりかえさないようにと おもってかきました。 こどもも まわりのおとなも がんばってくださいね。
(引用おわり)

この本が出版された1980年頃は、日本の子どもの多くがムシバを持っていました。現在ではずいぶん減っていますが、一方でひどいムシバの子どもがいるのも事実です。また、6歳臼歯といわれ、最初に生えてくる永久歯は大人にとっても磨きにくくムシバになりやすいようです。どうか大切になさってください。

2021/05/22

いちにち

陽がのぼり、陽が沈んで、いちにち。

それを描いている絵本といえば、『あさですよ よるですよ』(1986年福音館書店)があります。豆の子どもたちが朝起きてから夜、寝るまでの生活を通して時間という目に見えないものを知ることができるよう、各場面にはさりげなく時計があるのもそのためです。

歯磨き、洗顔、トイレに朝ホウキ、園に出かけ、たくさんいろいろなことをして、帰り道でお買い物のお手伝い、お風呂でっさっぱりしたら、お行儀よく夕食をして、ピアノの演奏で一家団欒、いちにちが終わります。ぐっすり眠る窓の外には星が瞬きます。う〜ん、ゆとりのある理想の生活。

働く大人の一日をお子さんが、楽しみながら知ることができるのが『うさぎのぱんやさんのいちにち』(2021年復刊ドットコム)です。

朝早く暗いうちからパンやさんのいちにちが始まります。パン作りの工程がすすみパンが焼き上がると店先にはいい香りが漂う中、お客さんがやってきます。次々に焼き上がる沢山の種類のパンの中には、可愛い動物パン、美味しそうなおかずパン、世界中のパンが集まってきたようで見ているだけで幸せになります。園のお昼もみんなニコニコでパンをいただきます。

陽が傾くと賑やかなお店も閉まり、パンを作る場所はすっかり掃除も終わり明日の朝までおやすみです。見上げれば外には月が出ています。おや? 月のうさぎさんはお餅つきではなく。。。

きっと美味しいパンが食べたくなります。だからお家で作れるパン焼き方法のページもあって、愛らしいうさぎさんたちにも会えるし、パンやさんの仕事もわかるいちにちの物語。

小さいお子さんと一緒に楽しむのに、そして忙しい大人が一日の終わりにリラックスするにも、ぴったりの2冊です。

この本は小学2年生の理科の副教材として半世紀以上前に出版されたものです。

表紙の丸メガネはかこではなく一回り年上の物知りだった兄。右側の少年が、子ども時代のかこです。小学生時代の虫取りの思い出を語りつつ、昆虫とは、動物とは、と知らず知らずに生き物に興味が深まるような内容です。『だるまちゃんの思い出 遊びの四季』(2021年文春文庫)に綴られている、生まれ故郷、福井県越前市での幼き日のかこの姿と重なります。

あとがきをご紹介します。

(引用はじめ)
私は小さい時、この作品に出てくるような川や野原で、虫や風や水を友達とし、自然を相手に毎日を送りました。その自然の中での遊びは、どんなに後の勉強や仕事や考えや生活のかてになったか分かりません。今から思えば、本当に貴重な毎日だったと思っています。

この頃は、都会と言わず農村と言わず、近代化の波に乗って、どんどん自然が失われています。単なる昔なつかしさからではなく、子どもたちが成長し、発育する上に、自然が失われていくことは、やがて大きな影響を与えることだろうと心配しています。

けれども、まだまだくふうすれば、子どもたちにとって自然は残っています。自然の中の遊びを大事にし、互いに励まし、刺激しあって、この偉大な教師に接する機会を与えてくださることが、私の希望です。加古里子
(引用おわり)

2021/05/12

愛鳥週間

愛鳥週間にちなんで、2021年5月11日の福井新聞「越山若水」では、先入観にとらわれず、からすが主人公の『からすのパンやさん』を子どもたちが楽しんでいるとありますが、カラスに限らず、かこの作品には本当に多くの鳥が描かれています。およそ野外での場面には、科学絵本であれ、童話であれ読み物であれ、鳥が出てこないものを探すのが難しいほどです。

今年出版された『くもとりやまのイノシシびょういん』(2021年福音館書店)では、印象に残るカワセミのお話があります。最新刊『だるまちゃんの思い出 遊びの四季』(2021年文春文庫)の表紙には、だるまちゃんたちが歩く、はるか上には鳥たちが見えます。

『こどものあそびずかん』(2015年小峰書店・上)は季節ごとの4巻それぞれに、鳥の紹介ページ。『だるまちゃんしんぶん』(2016年福音館書店・下)も同様に四季それぞれの鳥のコーナーがあるといった具合です。

愛鳥週間として紹介をしているのは『こどもの行事 しぜんと生活 5月のまき』(2012年小峰書店・下)で、鳥の鳴き声と「ききなし」(鳥の鳴き声を人間の言葉におきかえたもの)を合わせて多数掲載しています。
例えば、メジロは♪ピーチュル、チューイ、チューイと鳴き、それを「ききなし」では、
〽︎ちょうべえ、ちゅうべえ、ちょうちゅうべえ

ホオジロは、
♪ツツピー、ツツピー、チッチッチッ、チッピー 
♪ピーチュー、ピリチュリチュー

それが「ききなし」になると
〽︎いっぴつけいじょう、つかまつりそうろう
〽︎げんぺい、つつじ、しろつつじ
〽︎でっち びんつけいつつけた

いずれも時代が感じられますが、面白いものがまだあります。ひなたちが巣立つ頃、無事に大きくなあれと願っています。

冒頭でご紹介した福井新聞の愛鳥週間に関わる記事は以下でどうぞ。

福井新聞 愛鳥週間