編集室より

本サイトのスライド画像は『それゆけ がんばれ われらの楽団』(1995年 全国心身障害児福祉財団)からです。このジャンボ絵本は一般販売を目的としたものではなく、福祉施設への寄贈用として1995年に作成されました。

楽器を持つこどもたちに次々と動物が加わり、時空を超えて楽団が演奏を続けます。大きな絵本型の紙による芝居という形式で、CDによるセリフ、音楽もあり大変盛り上がる作品です。絵のみですが、色合いの変化、登場人物が増えてゆく過程、壮大な結末をお楽しみください。

2023/01/28

手袋人形

小学校時代の冬、手袋は雪遊びの必需品でしたが、室内では「手袋の反対なーんだ?」「ろくぶて!?」と言い合いながら、手袋で人形を作って遊んだものです。

絵本の中にも手袋人形が登場します。うさぎ年の今年、読み聞かせに引っ張りだこの『だるまちゃんとうさぎちゃん』(1972年福音館書店)では、だるまちゃんと妹のだるまこちゃんが、手袋うさぎを作ってうさぎちゃんたちを喜ばせています。

手袋人形に加え、雪兎、新聞紙の兜の作り方や子どもたちが大好きなリンゴで作るうさぎやだるまも出てきます。

手袋人形は遊びの本でも、必ず紹介されていて『とってもかわいいあそび』(2013年復刊ドットコム)の表紙には、両手に手袋人形をつけた子。本文には丁寧な作り方が書いてあります。

『てづくり おもしろ おもちゃ』と英語版『Chock Full o’Fun』(2021年小学館)にも表紙の子どもが持っているニワトリ人形の作り方などが掲載されています。

『こどものあそびずかん ふゆのまき』(2014年小峰書店)も同様で、モヘア手袋のやわらかい感触と色をいかした手袋赤ちゃんもあります。

いずれの手袋人形も加古が作ったものです。

福井県越前市ふるさと絵本館では、3月27日(月)まで「遊び」をテーマにした展示が行われていて、上の写真にある3点を陳列中です。どうぞご覧ください。

「技術と経済」(1969年12月科学技術と経済の会)より

新聞や雑誌に掲載されたインタビュー、対談や鼎談から加古の言葉を「アーカイブより」としてご紹介します。
今回は1969年10月3日に霞山会館(旧)で開催された鼎談を掲載した雑誌「科学と経済」から、40代の加古のメッセージをお伝えします。

(引用はじめ)
子どもたちの遊びの一例として、グー・チョキ・パーというあそびがあります。このあそびをその昔、グリコ・パイナップル・チョコレートといっておりました。これは今も使われておりますが、グリコは1粒300メートルという有名な菓子の名、パイナップルというのは、台湾の新高山にちなんだ新高ドロップと言う一番うまいドロップの中で、そのまた一番おいしいのはパイナップルであったので、それからとったパイナップルです。チョコレートというのは、当時は私なんぞの記憶では、1年に2〜3べん食べられるかどうかというほどの貴重品だった。すなわち、子どもとってお菓子の三種の神器の名であったわけです。

それが黒兵衛、ベティー、ちょび助となった時代がございます。黒兵衛というのは凸凹黒兵衛であり、田川水泡先生の作品です。ベティはややエロチズムのある漫画映画のヒロイン、それからちょび助は、JOBKから「ちょびすけ漫遊記」という一世を風靡した放送劇がありまして、これも子どものアイドルであったわけです。

それがだんだんと戦雲が激しくなってきたときにどうなったかというと、軍艦・ハワイ・沈没と、こうなったわけです。戦後は、ハロー・ジープ・グッドバイと、いとも鮮やかな転換であるわけです。

今は朝鮮とか、ハワイ、チョコレートとかグリコも復活しています。しかしそのハワイは、軍艦・ハワイのハワイではなくて、フラダンスのハワイだということを子どもは知っているわけです。

ここで私がいいたいのは、子どもたちの遊びというのは強制されたものではない。だれだれ先生ご創案の遊びですといっても、そういう権威であそびが成立しているのではないということです。あそびはおもしろくなければだめです。そのおもしろさがただ一つの標準、基準であって、あとは何ものにも束縛されぬ自由によって貫かれている。そして彼らはこのグー・チョキ・パーの三つにすばらしい時代感覚を示し、同時にクリエイティブな力、創造性を見事に開花させている。軍艦・ハワイ・沈没、これはいけるぞという1人の子どもがたまたま発見したのを、次の子ども大衆が支持し、それが遊びとして成り立っているということ、それから子どもあそびは、なにものよりも子どもたちの生活に密着しているということです。ここに遊びの純粋な真髄みたいなものがあると思うわけです。
(引用おわり)

上の絵は『いろいろおにあそび』(1999年福音館書店)より。
冒頭の絵は、じゃんけんのあいこの時の愉快な言葉がでてくる『はれのひのおはなし』(1997年小峰書店)。
『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)には、小学生だった加古が描いた黒いうさぎの黒兵衛の絵が掲載されています。

今回ご紹介部分は以下の記事で触れていただいています。

1969年 技術と経済 「あそび」

じゃんけんに関しては当サイト2022年6月「こぼれ話」にも記載があります。以下でどうぞ。

じゃんけん

2023年1月、精神科医で作家の加賀乙彦氏が93歳で逝去されました。

加古と氏との出会いは、1950年代、川崎セツルメント診療所の医師として加賀氏が奉仕尽力してくださった時以来で加古の自宅にもいらして下さるなど終生交流が続きました。

2008年の『伝承遊び考』上梓の記念会では、多くのセツラーのみなさんもご参加下さったのですが、氏のお姿もありました。加古との出会いについてユーモアたっぷりにお話しされ、会場をなごませてくださったお姿が懐かしく思い出されます。

その時の記念写真が『伝記を読もう かこさとし 遊びと絵本で子どもの未来を』(2021年、あかね書房)にあります。掲載のお許しをいただこうとお尋ねしたところ、快諾のお手紙をいただいたのですが、加古を「兄さん」と記していただき、感激したものでした。

『別冊太陽 かこさとし』(2017年平凡社 )にも「加古里子さんとセツルメント」をご寄稿下さり、出会いの様子をみずみずしい筆致で再現していただきました。その時には「使い古したチューブから絵の具をひねり出すように書いてみます」とユーモアたっぷりに編集の方におっしゃっておられたそうです。

東日本大震災の折には、電話でお互いの安否を確認し、氏の蔵書が本棚から落ちて大変だったそうだと加古から聞きました。新刊が出ると送ってくださった氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

氏に関しての記事は以下でどうぞ。

加賀乙彦氏 東京新聞

Kodomoe 「キャラクター大図鑑」

2023年1月7日発売のKodomoe 「キャラクター大図鑑」特集で、出版50周年を迎えた『からすのパンやさん』と刊行10周年の続きのお話、「だるまちゃん」シリーズに登場するお友だちの面々が紹介されています。
賑やかな誌面をお楽しみください。

2023/01/13

ピアノ

小学校の音楽の時間にハーモニカを習ったのは筆者の世代で、今ではハーモニカではなく鍵盤ハーモニカをするのだとか。息を吹き込みながら、鍵盤を弾くとハーモニカと同じ原理で音が出るのだそうです。

鍵盤といえば昭和30年代、40年代は子どもにピアノを習わせることが流行というか、憧れの生活スタイルと考えられていたようなところがありました。書道やそろばんを習い事にする子どもも多く、スイミングスクールが広まる前の時代のことです。

『でんとうがつくまで』(福音館書店) の裏表紙のこの絵はまさにその昭和時代の憧れの暮らしの一コマのようです。ピアノではなくその脇で輝いているスタンドの電灯やシャンデリアがこの科学絵本のテーマ、電気と関係するのですが、猫がいて魚の骨マークにかこのサインでもある[さ]のマークがついたピアノに目が行ってしまいます。(オルガンにも見えますが、本文の絵ではアップライトピアノとして描かれています)

科学絵本『だんめんず』(1973年福音館書店)は、ほぼ同時代の作品で、ご覧のように表紙には、グランドピアノの断面図がドーンと描かれています。

木を切り出してから、ピアノが出来上がるまでが物語になっているのは『まさかりどんがさあたいへん』(1984年・1996年小峰書店)です。多種類の工具で木が切り倒され製材されて、椅子やグランドピアノが出来上がり、ロボットちゃんの演奏で終わります。

グランドピアノが表紙を飾る絵本『しらかば スズランおんがくかい』(1986年偕成社)は、あとがきにあるのですが「カナダやシベリアの動物や植物」が登場し、雪解けで現れた不思議な箱から出てきたものがいったい何なのか考えをめぐらせます。

イスなのか、机なのか?
怖さ、恐ろしさ、びっくりが色々あって、これが「おとをだすおもちゃ」だと判明。

厳しくも美しい自然の移り変わりを背景に動物たちがピアノを囲み、素敵なメロディーが聞こえてくるような心温まるファンタジーです♬

2022年逝去された福音館書店相談役、名編集長であった松居直氏の言葉をかつての紙面から再録紹介する記事が掲載されました。

その中で加古の『万里の長城』(2011年福音館書店)を例に、出版を通じてアジア、中国との交流を大切にしてきたのは「戦争責任からです。過去を学ぶことなしに未来は見えてきません。」「十年、二十年、さらには百年先を考えて」本書を出版した意図について語る言葉には大変重いものがあります。

上は中国で出版されている版。

『万里の長城』出版までの長い道のりについては松居氏の長女、小風さちさんとの対談をまとめた『父の話をしましょうか〜加古さんと松居さん〜』(NPOブックスタート・下)に詳しい記述があります。

うさぎはお子さんたちも大好きなので、脇役として登場する絵本は沢山あります。

デビュー作品『だむのおじさんたち』(1959年福音館/復刊ドットコム)では、山奥で測量をする人を遠巻きに見るウサギがいることで画面が生き生きしています。

『ゆきのひ』(福音館書店)のこの場面はまさに「〽︎ウサギ追いし かの山」の様子で、「うさぎとりのわなをしかけ」るのを見ているうさぎ、逃げるものもいて、雪の降りやんだ青空が眩しく感じられます。

一方、下は『地球』(福音館書店)の一場面。きつねの様子を伺うウサギが木の根元にいます。
むしろここでは「うさぎのよこっとび」をご紹介したいと思われます。

『ことばのべんきょう』(福音館書店)は動物たちが人間と同じように暮らす様子を描き、小さいお子さんが言葉を覚えるための4冊シリーズの本ですが、ここでもうさぎちゃんたちが活躍します。

実際のウサギではないのですが題名にうさぎが出てくるのが『うさぎぐみとこぐまぐみ』(1980年ポプラ社)です。
「しんまちほいくえん」の「うさぎぐみ」は「こぐまぐみ」より小さい子たちの組で、そこにダウン症のショウタちゃんが入園してきました。ある日のこと、ショウタちゃんは「こぐまぐみ」の子たちが作っている砂場の山にジョウロで水をかけてしまいケンカが始まります。

止めにはいった「こぐまぐみ」のせいちゃんは一番力の強い子ですが、実はせいちゃんのお兄さんもダウン症で水をかけたショウタちゃんのことをかばったのです。このことをきっかけに、せいちゃんがお兄さん思いの優しい子だとみんなにわかりました。

保育園では色々なことがあって少しづつ大きくなってゆく子らの姿が描かれる「かこさとし こころのほんシリーズ」の第一巻です。SDGsという言葉が使われるはるか前に執筆されたものですが、まさにそれがテーマとなっています。

『からすのそばやさん』(2013年偕成社)

「おそばがご馳走?」と思った方もいらしゃるかもしれませんが、もりそばやかけそばだけでなく、次々にアイデアあふれる「そば」が誕生。「うさぎそば」はこのお正月にピッタリですね。

そばだけでなく、うどん、ラーメン、スパゲッティにパスタとお客さんのリクエストに応えるうちにそのメニューは無限に広がって、もはやそばやさんとは思えない品揃えで、これをご馳走と呼ばないわけにはいきません。

ちなみに『からすのそばやさん』は今年で開店10周年です。
紹介記事は以下でどうぞ。

お正月何食べる? 『からすのそばやさん』

あけましておめでとうございます。

新年恒例の干支探し。
卯年は『だるまちゃんとうさぎちゃん』(1972年福音館書店)の笑顔から始めましょう。

南天の赤い実を雪ウサギの目にしたり、松や竹を使ったウサギ雪だるまは縁起が良さそうでお正月にピッタリですね。

登場するのがうさぎと美味しそうなパンのみという絵本は『うさぎのパンやさんのいちにち』(2021年復刊ドットコム)です。
お店の制服や白衣姿のうさぎさんの可愛らしさと、パンの種類の多さが人気です。

白衣姿といえば、『くもとりやまののイノシシびょういん』の看護師のうさぎさんを忘れてはなりません。

不調やけがの患者さんに問診するイノシシ先生の温かみあふれる様子が魅力的で、看護師のうさぎさんも思いやりあふれています。心に効くお薬のような7つの小さなお話です。

2021年に刊行された本書はその年度のベスト新刊部門の第3位でした。(以下でどうぞ)

くもとりやまのイノシシびょういん

『パピプペポーおんがくかい』では、かわるがわるさまざまな動物が舞台で歌や踊りを披露しますが、うさぎちゃんたちは、その名も「パピプペポンマーチ」を」元気よく熱演。

このうさぎちゃんたちのように、笑顔で元気よく過ごせる一年となりますようご祈念申し上げます。