編集室より
武生中央公園は今回のリニューアル前は市民の公園として長い間愛されてきました。そういった越前市のセントラル公園として欠かせないものが園内にはいろいろあります。
越前市は1500年前に国府が設けられていた歴史ある町です。古くは6世紀初めに即位した継体天皇の出身の地とされ、紫式部や前田利家といった歴史上の人物、天皇昭和の料理を担当した秋山徳蔵やいわさきちひろさんなど越前市にゆかりのある14人を紹介するモニュメントが園内に設置されています。
下は、幕末に、地元の教育、文化、産業の発展に尽くした松井耕雪を紹介するもの。モニュメントの銀鼠色のタイルは越前瓦の色あいで、鉄結晶によるものだそうです。寒冷地でも凍らず割れにくく滑らない特徴があり、園内の案内板もこの色調に合わせています。
越前市の地形・地質を示すものも「地球生命の歴史」(下の写真)紹介の最後にご覧いただけます。こういった地勢・自然と歴史によって培われた伝統文化である越前和紙に欠かせない植物ミツマタやコウゾも植えてあります。
これは、おなじみコシヒカリ。イチベエ沼の脇に少しですが植えられています。本当の田んぼではないので実り具合は良くないのですが、福井県は美味しいお米として有名なコシヒカリ発祥の地なのです。
「武生中央公園ご紹介その8:こだわりあれこれ」でお伝えしたヒントはお役に立ったでしょうか。
ヒントのヒントはこの場所です。
だるまちゃんとかみなりちゃんの足あとをたどって脇の少し高い場所から街灯の上を見ると。。。
なぜ、そこにまな板?
いえ、これは下駄のつもり。。。
昔やりませんでしたか。明日の天気はなーんだ、と言って履物を空に向かって飛ばすこと。。。
近頃話題のマンホール蓋は公園限定で、あえて色のないこの2種類です。
だるまちゃんとかみなりちゃんの周囲の図柄は越前市の花、菊。秋には菊人形がこの公園を美しく彩ります。
2017年9月9日午後2時より1時間ほど、加古総合研究所の鈴木万里が約50名の皆様にお話をいたしました。かこさとしがセツルメント活動をする中でどのようにして子どもたちと過ごし、子どものことを知り得るようになったのかを焦点に手描きの紙芝居作品(下の写真は1953年作)をご覧頂きながら探る内容でした。
ご覧いただいた約100枚の写真には、未公開の紙芝居作品もありその内容、目的、描き方などそれぞれに込められた意図をご紹介しました。
山形、東京など遠方からご参加の方々もあり聴衆の皆さんは大変熱心に耳を傾けてくださり質問コーナーでは、思い出を紐解きご質問くださる方、研究会での感想を伝えてくださったり卒論のテーマに関連してのお尋ねなど30分程の時間内で十分なご説明がしきれず申し訳なく思いました。
若干の補足をここで付け加えさせていただきます。
1953年、かこさとしが第一回平和展に出展した「平和のおどり」(わっしょいわっしょいのおどり)の審査員であった内田巌画伯からその絵葉書を受け取った内田路子(のち堀内誠一氏夫人)さんは、かこさとしが活動していたセツルメントに参加、当時アルバイト先であった福音館書店松居直編集長にかこを紹介することとなりました。これがきっかけでかこさとしは、1959年デビュー作『ダムのおじさんたち』を出版することになりました。
上の写真はふるさと文学館「医と文学 -杉田玄白からかこさとし・山崎光夫まで-」の撮影コーナー。会場では本展開催にあたり最新のかこさとしインタビュー映像もご覧いただけます。会期は18日(月・祝)まで。
日本では話題になることがなかったヒアリがニュースになったのは、絵本館でゴールデンウイークに4周年イベント『あかいありとくろいあり』(1973年偕成社)のストーリーオリエンテーリングをした直後でした。
子どもにとって身近なアリにも注意を払わなければならなくなってしまい自然環境の変化を痛感しています。
2014年に出版されたその続編『あかいありのぼうけんえんそく』(偕成社)」のあとがきをご紹介します。
(引用はじめ)
前作で『あかいありとくろいあり』でなっちゃんぺっちゃん姉妹の春のあかあり小学校の様子をお知らせしましたが、その続編のこの作は、秋の遠足のお話です。実はかつて私は『あかりちゃんのやまのぼり』という絵本を作ったことがあります。それらはみな、当時の私が世話をしていた子ども会の中で、原型が生まれたものです。実際の子ども会では登山はしませんでしたが、時々、子供たちをやや遠い丘陵や林間に連れ出し、その間の出来事や親御さんとの接触が私のとても良い刺激になりました。
戦前の小学校の父兄会が戦後PTAに変わり、形式化したその様子のことが時折新聞種なんかになっていたので、この作にはあえて、あかあり小学校のPTAの活動の一端を添加したわけです。以来六十年、日本のあかいありたちはいまだに健在で、私の庭にも楽しい行列を作ってくれています。
(引用おわり)
だるまちゃん広場のだるまちゃんルートは、てんぐちゃんの持っているようなものがほしくて、いろいろ探すだるまちゃんを想像しながら歩いていただけたらという願いを込めて作られました。
途中にあるモザイク画は、お子さんたちが組み合わせて作成したもので上手にできています。
これは、ご飯茶碗やお椀の位置を覚えましょうという意図があるのですが、お茶碗の柄に注目していただくと。。。「見たことがある!」という方は、素晴らしい記憶の持ち主です。
上のように絵本ではお茶碗は白いのですが、ご飯茶碗には何かしら柄が入っているのが普通ですので、そう!ここから柄を取っています。『だるまちゃんとてんぐちゃん』の」見返しのデザインです。武生中央公園にいらしたら是非「だるまちゃん広場」のお茶碗の柄もご覧ください。
ところで、だるまちゃんがてんぐちゃんの下駄に見立てたものが、だるまちゃんルートにあります。ヒントはズバリ、上。上を向いて歩こうです。是非探してみてください。
パンやさんと言えば『からすのパンやさん』(偕成社1983年)ですが、加古作品には、他にもパンやパンやさんを描いた絵本があります。
1987年に農文協から『かこさとし たべものえほん10巻』(文のみ・かこさとし)が出版され、その第2巻が「せかいのパン ちきゅうのパン」です。この本のねらいについて、かこさとしのことばが巻頭にありますのでご紹介します。
この本のねらい かこさとし
(引用はじめ)
食物のシリーズのなかで、このパンの絵本をかいたのは、パンが数千年の昔から、今も世界各地で毎日作られ、多くの子どもたちが食べている重要な食物だからです。
子どもにとって食物は、健康や成長の糧であるとともに、文化・生活・教育などに関わり、精神や心に大きく作用していることを、このパンが最も雄弁に物語っています。
パンのながい歴史と、背景となった風土や文化を、香ばしさやふくらみをこめてえがいたのがこの絵本です。
(引用おわり)
『食べごと大発見 第6巻 たまごサラダこんがりパン』(1994年農文協)は主に西洋の食事や料理を紹介する巻で、[リーンなパン こんがりパン](下の写真)[リッチなふわふわパン]と[三度サンドサンドイッチ]」という3項目3見開きでパンの作り方や調理法と美味しそうなパン、サンドイッチ、バーガー、ホットドッグなどが並びます。
美味しそうに描かれている絵を見るだけでも幸せに気持ちになりますが、実際の食事をともにすることにより「国や言葉や文化の壁がいっぺんに取れ、互いに親愛を深められる」食べごとの意義を実感していただけたら幸いです、というのが著者のこの本に込めた願いです。
絵本館から定期的に届けられるご来館者の方からのお手紙の中に『うさぎのパンやさんのいちにち』(2004年 ベネッセコーポレーション)が大好きですというお子さんのお便りがありました。
この本は題名からわかるように、うさぎのパンやさんが早朝から粉をこねる場面からはじまり、時間の経過とともに成形、発酵、焼き上げ、調理を経て店頭に並んだり給食になったりと多種類のパンを彩りに、片づけ掃除で1日が終わる様子が手にとるように描かれ、小さなお子さんにもパン作りの様々が理解できるお話です。
かこは給食用のパンを含む多くのパンを長年製造している熟練の方をパン工場に訪ね、その製造過程やコツ、注意点などを取材した上でこの本を描きました。『からすのパンやさん』同様、楽しんでいただけたら幸いです。
作者のことば
ガイコツを見ると怖くて仕方がなかった子どもの頃を思い出します。この作品は絵本ではなく紙芝居で、あとがきにかえ「作者のことば」がありますのでご紹介します。
(引用はじめ)
私たちのまわりには、いろいろな生物がいますが、大きく分けると背骨のない無脊椎動物と、背骨のある脊椎動物となります。それは生物の進化の、38億年だの跡を示し、その時代の環境下で生きるための、それぞれの祖先の名残だそうです。人間もそうした背骨のある生き物の1種ですから、その背骨がどんな役割をしていて、内臓や筋力を守り、それらと共に体をつくり、複雑な動きや運動を支えていることをこの紙芝居で教えてあげてください。
そしてそれぞれに子の発達や体質に合った練習や遊びよって「背骨のある体」を正しい姿勢に保ち、巧みに使えるよう、せっかく食物や住まいがよい時代になったのですから、ぜひはげまし導いていただくよう、期待をしています。
かこさとし
(引用おわり)
骨に興味を持っていただける絵本としては、低年齢のかた向け『ほねはおれます くだけます』(1977年童心社・下の写真)があります。
また、展示会情報にありますように福井県ふるさと文学館では2017年7月15日から9月18日まで「医と文学 -杉田玄白から かこさとし、山崎光夫まで-」を開催。『ほねはおれますくだけます』の複製原画や『人間』(1995年福音館書店)の人体血管図などを「解体新書」と合わせてご覧いただけます。一番身近な自然である自分の身体に目を向けてみてはいかがでしょうか。
コウノトリ広場の観覧車(写真)の中央部には、かこさとしの最新作『コウノトリのコウちゃん』(2017年小峰書店)のコウちゃんが越前市白山地区「コウノトリが舞う里」に向けて羽ばたいている画が描かれいます。その裏面には、巣の中にいる親子が見られます。高い所なので実感できませんが、この絵は直径3、7メートルです。
コウちゃんの観覧車の下には、コウノトリに関しての豆知識や1970年に白山地区に飛来した、くちばしの折れたコウノトリから現在にいたるまでの家系図のパネルもあります。下はパネルにもなっている『コウノトリのコウちゃん』の前見返し(部分)
かこさとしがいつも口にすることば「子どもには外遊びが大切」。越前市武生中央公園は、それを実現できる十二分な広さとな自然があり、木々や草花を通じても四季を味わい遊びができるよう工夫されています。
もともとこの地にあった大木もあり、新たに植えられた苗木は二十四節気に関連するもの、落ち葉遊びを楽しめるもの、あるいは越前市の伝統産業和紙の材料となるコウゾやミツマタなどを選んでいます。
樹名板(下の写真)はクイズ形式になっていて、『こどもの行事しぜんと生活』(2012年小峰書店)から季節の草木を使った遊びや虫などの紹介を掲示しています。(上の写真)
来春には摘んで良い草花の植栽も整い、シロツメクサの冠つくりや四つ葉さがしも存分に楽しめるようになる予定です。
下の写真の時計のように見えるものは方位盤で、見えにくいのですが、中央の突起の先にあるのが地球、それを中心とする外枠の円部分が太陽の大きさとなっています。
「だるまちゃん広場」が、加古作品の世界を投影しキャラターを感じられる自然いっぱいの広場であるのに対し「パピプペポー広場」は絵本の物語が再現された遊具で小さなおこさんたちも遊べる場所です。
『にんじんばたけのパピプペポ』(1973年偕成社)のぶたちゃんたちが迎え案内してくれるのは続編『パピプペポーおんがくかい』(2014年偕成社)で発表される歌の数々。歌詞は絵本にある通りで教育、音楽に精通している神原いずみ先生の作曲をもとにしたチャイムが下の写真右後方に見える時計から10:00・12:00・15:00・17:00に園内に響きます。
この時計、見覚えのある方はアッと思われますね。『あさですよ よるですよ』(1986年福音館)の世界を小さなおこさんたちに遊んでいただけるようにした「まめちゃんえん」です。絵本館の工作やイベントでお馴染の早未恵理先生に遊具デザインの協力を得て絵本のまめちゃんたちの1日を体験できるようになっています。さやベッドに入ってまめちゃんと一緒の写真を是非撮って下さい。
もう一つの絵本の世界は『あかいありとくろいあリ』(1973年 偕成社)です。ありになったつもりで大きなツクシやタンポポを通り、ギャングアリにさらわれたぺっちゃん(下の写真)探しをするアスレチックの要素が入った遊具が並びます。ビスケット渡り、頑張って!