編集室より

作品によせて

寅年によせて【更新中】

投稿日時 2022/01/02

寅年といえば『だるまちゃんととらのこちゃん』。
だるまちゃんがとらのこちゃんと土絵具でペンキぬり遊びをしていたところ、これが思わぬ評判になって、街をカラフルにしたり、クルマも色鮮やかに変身。おまけに、とらのこちゃんのお父さんから本物のペンキをお土産にもらって、だるまちゃんはニコニコ大満足です。とらのこちゃんとシマシマ模様のだるまちゃんが大変印象に残る絵は「干支にちなんでトラの絵本」として絵本ナビでも紹介されています。

かこは寅年生まれで、12歳になるお正月に母親に次のように言われたと『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)にあります。
(引用はじめ)
「今年は寅年で哲(さとし)も兄ちゃんも当たり年だよ、当り年というとよいことがあればとびきりよいことがあって、悪いことがあれば大変わるいことがある。だから哲も兄ちゃんも一生懸命やってよいことがあるようにしなさい。」
(引用終わり)

今から84年前の新年の一コマです。この年、かこは中学校の入学試験に見事合格を果たし、入学にあたって父親が語った言葉を書き留め、小学校生活六年間の記録である、この画文集を次のように結んでいます。

(引用はじめ)
そうだ。今年は僕の当り年だ。化学博士という目的をめざし、友と約束したこと、父母の教えを胸にとめ勢よく進んでいこう。
(引用おわり)

かこのその後の人生は是非、伝記『かこさとし 遊びと絵本で子どもの未来を』(2021年あかね書房)をお読みください。

トラが主人公の作品には『とらのことらちゃん』という紙芝居(2003年全国障害児福祉財団)があり2021年刊行の『かこさとしと紙芝居ー創作の原点ー』(童心社)でも紹介しています。
寅年、皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

絵本ナビ「干支にちなんでトラの絵本」の紹介は以下でどうぞ。

だるまちゃんととらのこちゃん

広報小山

1年、100年、1000年そして2022年

投稿日時 2021/12/24

想定外のことが色々とあった2021年も残りわずか。一年を振り返ることが多いこの時期ですが、この100年を絵本と通して見る機会となったのが『日本の絵本100年100人100冊』(2021年玉川大学出版部・広松由希子著)です。

1912年から2014年(年譜では1870年から2020年)までに出版された絵本に関して、各年1冊を表紙と3見開きほどの写真とともに解説する223ページにわたる大部の大型本で、最初の1912年に紹介されているのは、かこが亡くなる前年(2017年)にいただいた巌谷小波賞創設の由来でもある巌谷小波著の『日本一ノ画噺』(杉浦非水・画)。小箱に詰められた6冊の絵本で、横書きの文章は右から左に読みます。

かこが生まれた1926年出版の絵本は月刊の『子供之友』(婦人之友社)ですが、当時のかこはこういった絵本には縁がなく自然の中で遊びまわっていました。

2021年は1941年の真珠湾攻撃から80年ですが、その1941年には『マメノコブタイ』(帝國教育出版部)が出されました。この絵本は、解説よると「戦争もの」で「児童書によって子どもたちを洗脳するなど、あってはならないことが実際にあった」とあり、戦争を経て1946年には『トケイノハナシ』(妙義出版社)という科学絵本が出されたそうです。

1967年の絵本として、だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)がとりあげられています。

だるまちゃんシリーズは2018年3作まとめて同時出版となった『だるまちゃんとかまどんちゃん』『だるまちゃんとはやたちゃん』『だるまちゃんとキジムナちゃん』を合わせて全11冊で、最後の3作品には東日本大震災と原発事故、戦後の影が今なお残る沖縄に思いを寄せていた著者についてもふれています。

まもなく2022年。新年を迎える日本の行事には、100年どころか1000年以上の「ふるくからつたえられたもののほか、海外、とくに中国からつたわったものがたくさんあ」るとしている『こどもの行事 しぜんと生活 1月のまき』(2011年小峰書店)は、2021年12月5日の福井新聞「文学の森から」でお正月の風習を調べるのに参考になる絵本として紹介されました。

あとがきには次のようにあり、再度ここで記します。
(引用はじめ)
日本にすんでいたむかしの人たちにとって、1月は一年間の農耕のはじまりのときで、田畑をまもってくださる歳神さまをむかえたり、そなえものをするなどのだいじな行事があるので「正月」といったことを、はじめにのべました。

このように、日本の行事のならわしのうち、この本では、その理由と行事に込められた人びとの思いやかんがえもあきらかにして、つぎの時代につたえるようにえらびました。むかしの人たちがもっていた力や知恵や心を総動員して、生活をささえようとしたことを、この1月 の巻でしっていただきたいおもいます。
(引用おわり)

2022年を迎えるにあたり、100年、1000年を超え、長い間人びとが心から願い思ってきたことをどう伝えどう活かしていくのか、そんなことを想うこの頃です。

本の表紙とカバー

投稿日時 2021/12/11

多くの絵本にはカバーがかけられています。本の保護のためでもありますが、お子さんには扱いにくいこともあり、「ことばのべんきょう」や「だるまちゃん」シリーズ(いずれも福音館書店)にはカバーがありません。

文春文庫『未来のだるまちゃんへ』のカバーはシンプルでありながら、「だるまちゃん」が目立ちます。『だるちゃんの思い出 遊びの四季』(2021年)は「未来への行進」という題名の絵画を使っています。これは、合併で誕生した越前市10周年を記念して2006年にかこが描いたもので、だるまちゃんシリーズの仲間たちが越前市民には馴染みの村国山(むらくにやま)を背景に楽しげに歩いています。

この本の内容は生まれ故郷、越前市で過ごした7年間の日々からかこが得た貴重な経験をもとに、子どもが人として成長するのに何が大切かということを語っています。

昔の文庫本はカラー印刷のあるカバーではなく、薄いパラフィン(グラシン)紙で、絵本を卒業しよういう年頃だった筆者には、大人に近づいた気持ちで嬉しく手にとった覚えがあります。

2021年11月20日の朝日新聞「天声人語」では、このカバー(ジャケット)と本の表紙について、その違いを楽しむことが書かれていましたが、かこの本の中にもカバーと本自体の表紙が異なり二度楽しむことができるものがあります。

『万里の長城』(2011年福音館書店)のカバーは緑の連山に龍のごとく作られた長城。本の表紙には、長年にわたり多くの人々が積み重ね作りあげた長城とそれを守る人々。裏表紙(下)にはその歴史の一コマが再現されています。

壮大な自然と悠久の歴史。どちらも「万里の長城」を語るには大切なもので、カバーと表紙で伝えています。

これは『だるちゃんと楽しむ 日本の子どもの遊び読本』(2016年福音館書店)のカバー(右)と表紙です。


『日本伝承の遊び読本』(1967年福音館書店・下左)という脚光を集めた絵本の現代版として平成に出版されたもので、それを引き継ぐようにして表紙の色を同じにしています。新しい版であることがわかるようにご覧のようなカバーの柄になりました。

たかがカバー、されどカバー。そこには著者や本作りに関わった人たちの思いが込められています。

クリスマスの前に読みたい本

投稿日時 2021/11/18

クリスマスプレゼントとしてではなく、プレゼントをもらう前にお子さんたちに読んでいただきたいのが、『サン・サン・サンタ ひみつきち』(2019年白泉社)。とびきりのファンタジーで、大人も嬉しい「夢あふれる傑作」と帯にあります。

かこさとし作ですから、物尽くしの頂点とも言えるほど、たくさんのおもちゃが並びます。しかも、そのおもちゃ工場があるのは秘密基地! こっそり潜入して見てみると、あのおもちゃ、このおもちゃが、実はその工場から届けられたのだとわかります。

「サンタはいるの?」というお子さんたちの疑問にも答えています。ですから是非、クリスマスの前に読みたいですね。

クリスマスは多くの国では冬の寒い季節ですが、そんな中でもあたかさあふれる『マトリョーシカちゃん』(1984年福音館書店)はクリスマスのイメージにぴったりです。

クリスマスプレゼントを手作りしようと思いたったら、『てづくり おもしろ おもちゃ』(2021年小学館がピッタリです。赤い表紙でプレゼントとしても素敵ですし、一緒におもちゃを作って遊ぶ時間は、最高に嬉しい贈り物かもしれません。英語版『Chock Full
o’ Fun』もおすすめです。

赤い本、ということでしたら思い切って赤い表紙の科学絵本『地下鉄ができるまで』(1987年福音館書店)はいかがでしょうか。11月18日の土木の日にちなんで、この本を紹介してくださった書店さんもあり、大人にも小さいお子さんにも、特に乗り物好きには絶対に喜ばれること間違いなしです。Xマスセールの垂れ幕も場面の中に描かれています。

そしてさらに赤い色が印象的な表紙の『富士山大ばくはつ』(1999年小峰書店)もあります。この本の最後の部分はこう結ばれています。
(引用はじめ)
高い大きい美しいすがたで、富士山が、長いあいだわたしたちをなぐさめ、はげましてくれたように、富士山のことをよくしらべ大自然のふしぎをしっかり勉強する番です。
ではみなさん、がんばりましょう。
(引用おわり)
火山の多い日本に住んでいる私たちに大切なことを伝えている科学絵本です。

クリスマスにちなんださまざまな分野の赤い本、お楽しみください。

絵本の絵は紙芝居の絵と異なり、文字が入る部分を考慮して絵を描かずにあえて余白を残すことがあります。例えば『だるまちゃんとてんぐちゃん』(1967年福井の館書店・上)や『からすのパンやさん』(1973年偕成社・下)がその例です。


もちろん全ての絵本がそうであるわけではなく、絵の上、あるいは絵の背景に文字を入れることもあります。『かわ』(1962年福音館書店)は川を中心にその流域の様子をページいっぱいに描きますので余白はありません。

そこで『絵巻仕立てひろがるえほん かわ』(2016年福音館書店)では、全場面を一枚の絵巻のようにつなげ両面に印刷してあります。表面には言葉を入れず絵のみ、7メートルに及ぶ文字のない画面は、まさに絵巻物のようです。

上の2枚の絵で、上側にあるのが『かわ』、下側が『絵巻仕立てひろがるえほん かわ』の同じ場面です。この裏面では、川だけを着色したモノクロ画面に文字を入れるというユニークな仕立てになっています。

『かわ』よりさらに小さなお子さん向けの『かわは ながれる かわははこぶ』(2005年農文教)も同様で、現在越前市絵本館のテーマ展示【水】(2021年11月23日まで)で飾っていますので、お近くにおでかけの際は是非ご覧下さい。

同じく展示中の『あわびとりのおさとちゃん』(2014年復刊ドットコム)にあるこの場面は、ご覧のように文字と絵を仕切っています。絵としても引き立ち、文字も読みやすい画面構成は緊張感があり日本画風の雲霧の雰囲気も感じられ、昔話にぴったり合っています。

かこは、絵本をつくるとき絵と文字が一緒にあって完成した形になるようにしている、と常々申しておりました。お手元にあるかこ作品をそんな視点でご覧いただくのも一興かもしれません。

四季折々を背景に

投稿日時 2021/10/12

『秋』(2021年講談社)のように一つの季節の出来事を一冊の本にしたものもありますが、かこは四季折々の風景を描き込むことで時の流れを表現することが多々あります。

そのわかりやすい例が『出発進行!トロッコ列車』(2016年偕成社)の表紙裏表紙です。この絵本は千葉県を走る小湊鐵道トロッコ列車を題材にしてその沿線の歴史や文化、人々の暮らしや自然を描いています。

春の里見駅から出発するトロッコ列車の旅は菜の花、桜に彩られ紫陽花の咲く田園風景が広がる3つ目駅月崎は、蛍のとびかうところです。光と風を受けて走り、やがて彼岸花が線路脇に見えてトンネルを過ぎると黄色く色づくイチョウの大木がある上総大久保駅、そして終点養老渓谷駅へ向かいます。四季折々の美味しい食べ物も登場します。

意外に思われるかもしれませんが、科学絵本であってもそうなのです。『地球』(1975年福音館書店)の解説で、かこは次のように述べています。
(引用はじめ)
。。。その内容の大きな流れを、一つは時間の推移とともに見られる四季の色どりと、一つは地上、地表、地下へとのびてゆく垂直の変化の両者を、交錯させながら進めるように設計しました。
その上、欲張りにも、植物、昆虫、動物、人間等の地球にすむいきものたちを、仲間としてえがきたかったため、どうしても四季を一回めぐるだけではもりこめなくて、本の中ではニ回、すなわちこの本を読むと二年としをとるというか利口になる(?)というほうほうをとってあります。
(引用おわり)

そして50ページにわたる場面の季節と描く範囲(地上、地下の深さ)を表にして掲載する徹底ぶりです。このような季節感あふれる場面がオマージュとして『みずとはなんじゃ?』(2018年小峰書店)に季節を変えて登場するのは、鈴木まもるさんがこの『地球』の場面の中で季節の風や光を感じながら遊んでいたからに違いありません。

下の画面、右側が『地球』の春の野原でツバナ(チガヤ)を手にする子。左側は『みずとはなんじゃ?』で、桜の木は花から新緑に変わっていますが、チガヤを摘む子どもが描かれています。

『地下鉄のできるまで』(1987年福音館書店)でも地下鉄工事の進む様子を地中、そして地表の人々の暮らしと季節をさりげなく盛り込んでいるのがかこさとしらしいところです。

起工式の紅白の幕の側には満開の桜、いよいよ工事が始まり土留めをする作業は新録の頃、緑が色濃くなると地中にはコンクリートのトンネルが出来上がり、木々が色づくとトンネルの中にはレールが敷かれます。

歳末大売出しの垂れ幕がデパートにかかり、それからまた季節は巡って梅雨の大雨、入道雲の夏、やがて雪も降り三たび巡ってきた春にようやく開通となります。工事関係者だけでなく、虫取りや凧揚げ、野球をする子どもも描かれています。

『ねんねしたおばあちゃん』(2005年ポプラ社)は「おばあちゃん」が「タミエちゃん」というお孫ちゃんを赤ちゃんの時から、働くお母さんの代わりに世話をする物語で、身近な植物を添えて季節のうつろいを表現しています。

タミちゃんが生まれたのは床の間に梅が飾られている早春のこと。桜、そしてチューリップが咲く頃お母さんは仕事に復帰、おばあちゃんの孫守りが本格的に始まります。けれど、紫陽花の頃には、おばあちゃんが疲れてうたたねをしてしまったりします。パンジー、シクラメン、ばら、コスモス、ケイトウが季節をしらせ、タミエちゃんが3歳になった菊の頃、おばあちゃんは二度と目を覚ますことはありませんでした。

育児と老人問題という重いテーマですがこういった小さな花々がその重々しさを和らげ人の心の優しさを伝えているようです。

遠足

投稿日時 2021/10/03

コロナ禍で普段の授業もままならない中、運動会や遠足が中止されてお子さんたちの学校生活が制限されていることが気がかりです。

かこさとしが幼稚園に入ってすぐのことですから今から90年も前のこと、遠足で歩いてむかったのは隣町の鯖江の練兵場でした。空砲とはいえ、射撃の訓練を目の前で見てその音の大きさに驚いたと『だるまちゃんの思い出 遊びの四季』(2021年文春文庫)にあります。

遠足が題名に入っている『あかいありのぼうけんえんそく』(2014年偕成社)は、『あかいありとくろいあり』(1973年偕成社)の続編。といっても40年ぶりの続きのお話で、あかあり小学校の1年生から6年生までみんな一緒に「ぼたもちやま」に遠足に出かけます。PTAも参加して道具や荷物を準備、万一に備えます。途中、あかありを狙う危険な生き物に遭遇しますが万端の準備が功をそうして、無事に楽しい遠足が終わります。

無事に終わらなかった遠足といえば、そう! あの遠足、『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)です。とっぷり日が暮れて、どろぼうがっこうの生徒たちは「たのしい えんそくに でかけました。」そんな場面が夜になって実際に現れる場所があるのです。

2021年9月25日にお披露目された越前市武生中央公園に新たにできた「まさかりどんの館」。館というのですから、それはそれは大きな建物で、その壁面に夜になると出現する怪しい人影。是非、闇にまぎれて忍び足で現場をご確認ください。

以下は現場の状況です。。。

まさかりどんの館に現れるのは

こども達が大好きななぞなぞ。そしてダジャレは、色々あるけれどこんなクイズが『遊びの大星雲1 ひみつのなぞときあそび』(1992年農文協)の冒頭にあります。


【さるくんが かぎを もっています。 いったい どこの かぎでしょうか。】

次のページに以下のように答えがあります。

【かぎの ことを えいごで キー、さるの ことはモンキーと いいます。それで さるの もっているのは、 モン(門)のかぎ(キー)となります。】


この本の副題は「生活機器の内部の秘密」で、かぎの秘密をどろぼう学校のかわいい生徒たちがクマサカ先生に習っている絵が添えられているではありませんか。

しかも先生は『どろぼうがっこう』(1973年 偕成社)の表紙に描かれている、かきがね錠の鍵と錠前を手に黒板には英語も教える充実した授業風景!? さすが、クマサカ先生の授業は、実践的でためになります。そして、かこによるかきがね錠の秘密の図解も必見です。

それにしても、このダジャレxなぞなぞxクマサカ先生のコラボ、まいりました!

実は、この絵を原画でご覧いただけます。場所は福井県ふるさと文学館、9月20日まで開催の全国巡回展の会場です。(入場無料) 是非、忍び足で、お出かけください。

おしゃれの定義は千差万別ですが、おしゃれが物語の要素になっているお話があります。

『からたちばやしのてんとうむし』(1974年偕成社)では、「からたちごてん」に、すんでいる「てんとだいじん」の所に、祭りの日、虫たちが揃いのはっぴでご挨拶にやってきます。といっても皆が着ているのは、紙で作ったワッペンを貼った急こしらえのはっぴです。

一方、きれいな着物や服が大好きな「だいじん」は、「あっちのふくを きたり こっちのきものにかえたり おおさわぎ」で、スタイルブックを眺めて服選びをしています。

個性的なおしゃれと言えば、かこ作品のキャラクターのなかでは、この人にまさる人はいないかもしれません。『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)の「よにも なだかい くまさかんとらえもん せんせい。」です。世にも名高いというのは、謡曲や歌舞伎で出てくる想像上の大泥棒、熊坂長範をモデルにしているからです。

この髪型、歌舞伎役者さながらの出立ちで、教壇に立っています。

さて、その翌日はといえば、これまたド派手な羽織、金時計に合わせたかのような着物の色合いに茶系を基調にした小物使い。注目はその羽織が五つ紋で、なんとその紋がクマ! いやはや、これには、びっくり。参りました!

このクマサカ先生に会えるのが、現在藤沢市民ギャラリー開催中の「夏!かこさとし絵本展」と同じフロアの別室(常設展示室)で同時開催の「ドロボー浮世絵大集合」。これをご覧になるとクマサカ先生のおしゃれのセンスに納得いただけることでしょう。いずれも無料です。お楽しみください。

パラリンピックが始まりますが、その中にある競技、シッティングバレーボールは、1956年に戦争で負傷した人によって考案された歴史があり、日本でチームができたのは1992年だそうです。

かこは「おすわりバレー」という名前でこれを「バレーボールごっこ」遊びとして1990年出版の『こどもの大宇宙1おにごっこ じんとりのあそび』(農文協・下)で紹介しています。家の中のような広さが限られた室内でこどもたちが遊ぶためのもので、ボールではなく「かみふうせんやビニールぶくろに くうきを いれ、ふくらまして」ボールとすると解説があります。

この本の表紙を飾るピクトグラムのような紙粘土の立体人形はかこの手作りです。
この本を執筆した時には、まだまだパラリンピックやその競技は今のように知られていませんでした。

1988年のパラリンピックから、正式種目に採用されたボッチャは、ヨーロッパが発祥とされているそうですが、『あそびの大惑星8 あんただれさ どこさのあそび』(1992年農文協)では、世界のボールあそびの一つとして、ボッチャー(ドイツ)を紹介しています。かこさとし、先見の明があったのでしょうか。うーん、まいりました!